行殺(はぁと)新選組 りふれっしゅ
マジカル沙乃ちゃん大作戦☆ 番外編 『新選組胸当始末記』
ある うららかな春の日の午後。
「そーじの胸、急におっきくなったんじゃない?」
縁側でひなたぼっこをしていた新選組局長、近藤勇子が、庭で掃除をしている沖田鈴音に声をかけた。
「えっ、そんなことないです」
少し頬を赤らめながらも、静かにそう答える沖田。
「そうかなあ?」
「ゆーさんの気のせいですよ」 そう言って掃除を続ける。
「ふふふ、そーじちゃん、他人の目はごまかせても、このアタシの目はごまかせないわよ」
突然、声が響き渡る。2人がキョロキョロ見渡すと、声の主は屋根の上でポーズを取っていた。
「とうっ!」
ヒーローのように掛け声をかけると、屋根から飛び降り中庭にシュタッと着地する。ウェーブした金髪に、新選組随一のグラマラスな肢体。もう一人の局長、カモミール・芹沢だ。
「カーモさん、屋根の上で何してたの?」
「ゆーこちゃん、分かってないなあ。ヒーローは高いところから現われるのがお約束なのよ」
「ヒロインです」 沖田が静かにツッコミを入れる。
「そんなことより、そーじちゃんの胸は、こないだ触った時よりも確実に2cmは大きくなってるわね」
「そんなことないです」
「ちょっと待て! こないだとは、いつだ!」
「あ、トシちゃん。どうしてここに?」
「これだけ大騒ぎをして気付かぬはずがないだろう。それよりも芹沢さんだ」
「先週そーじちゃんとHした時」 さらりと答える芹沢。
「なにーーーー!!!」
「トシさん、芹沢さんデタラメ言ってるんですよ」
くすっと笑いながら土方の絶叫に沖田が答える。
「歳江ちゃんってばカワイイなあ」
「ふん」 芹沢にからかわれていたことに気付き、照れ隠しに膨れて見せる土方。
「あー、そっかあ。歳江ちゃんも触って欲しいんだー」
「な、何を馬鹿な事を・・・そ、そのあやしい手つきはなんだ」
「んふふふ〜」
「よ、寄るな! 寄らば、」 チャキーン。「斬る!」 兼定を抜いて構える土方。
「まーったく、歳江ちゃんてば堅いんだから」
「あんたが軽すぎるだけだ!」
「でも、そーじちゃん、本当に突然胸が大きくなったよ」
「うむ。それは同感だ」
「ほらー」 最初に気付いた近藤が、“やっぱり”という声を上げる。
「そ、そんなこと、ないです」
「嘘つきは、シドー不覚悟で切腹ぅ☆」
「うむ」 土方も頷く。「嘘は士道不覚悟で切腹」
この2人仲が良いのか悪いのか。
「・・・・実は天使のブラをしてるんです」
芹沢と土方に左右から詰め寄られ、あきらめて本当の事を告白する沖田。
「天使のブラって、あの寄せて上げる?」
「はい」
「そっかー、ない子は大変だよね〜。アタシは・・・・」
言い終わらぬ内に菊一文字の刃が芹沢の首筋に押し当てられていた。沖田の眼鏡が光っている危険だ。
「えーと、女の子らしくて微笑ましくていいと思うよ」
「ふむ、そーじも恋する乙女なのだな・・・・相手は誰だ! 相手は!」
「えっ、そーじが恋してるの!?」
「ち、違いますよ。なんでそうなるんですかぁ!」
「おー、みんなで何を騒いでるんだ?」
ハンマーを担いだボーイッシュな女の子が中庭に入って来た。永倉アラタだ。
「ぶ、ブラジャーの話です」 と沖田。この際、話が逸れれば何でもいい。
「そーじが天使のブラをしてるんだよ」 近藤が話を補足する。
「天使のブラだとお! そんなもんは邪道! アタイは動きやすいスポーツブラが一番だ!」
揺れが少なくなるので動きが良くなるのである。でも大きいとやはり揺れるので、その場合、日本古来のさらしを巻くのである。
「スポーツブラなんて味気無いよ。女の子はもっとかわいらしくしなくちゃ。
あたしのは清楚な感じの白で、お花の刺繍があるの☆」
「大人の女は、やっぱ黒じゃなきゃ。アタシはセクシーな黒の総レースね。これで男どもを悩殺ぅ☆」
「あ、私は、シンプルに無地のピンク」 いつもどこからかひょっこり現れる藤堂平が会話に混ざる。
「トシちゃんは?」
「ふっ、動きやすさの究極。新型のヌーブラだ」
「あー、あの胸に貼り付けるやつ?」
「うむ。紐がないので身体を無理なくひねることができる。片手平突きには最適だ。身体が軽くなるぞ」
「胸も2割増し〜」 近藤が茶化す。
「し、失礼な。2割も増えてない」
「何をみんなで話してるのよ?」
今度は沙乃だ。新選組一小柄な原田沙乃がやって来た。永倉・藤堂・沙乃は市中巡回から帰って来た所だったのだ。
「沙乃はヌーブラならぬノーブラだな」
「な、何よ、アラタ、突然」
「いや、何だかぶらじゃあの話らしいんだ」
「原田の胸ではブラは必要なかろう。動きやすくて結構な事だ」
「そうだよー。揺れるから結構邪魔になるんだー」
近藤が身体を揺すると、それに合わせて胸も揺れる。
「肩も凝るし」
こう言って肩を回すのは藤堂だ。同じく胸が揺れる。
「それは腕が未熟だからよ」
ちなみに芹沢は神道無念流の免許皆伝である。同じく胸は揺れる。
「あんたの武器は大砲だから胸は関係ないだろう」
「ひどーい」
「そういうわけで、原田には関係のない話だ」
「・・・・あるもん」
「何?」
「沙乃だって、ブラぐらい」
「沙乃ちゃん。無理しなくていいんだよ」
「ほう、ちなみに嘘は士道不覚悟で切腹だからな」
土方が意地悪く沙乃を追い詰める。
「島田の手ブラよ!」 沙乃がきっぱりと言い切った。
解説しよう! 手ブラとは、素手で直接胸を覆う行為である(とある所に書いてあった)
皆の頭に言葉の意味が染み渡るまでちょっと間があり、
ちゅどーん!!!
沙乃の爆弾発言が炸裂した。それはつまり島田に直接触らせていて、2人はそういう仲であるという事なのだ。
逆転勝利。皆が庭で爆死する中、沙乃はスタスタと自室に引き上げて行く。
そして・・・
「島田くんの馬鹿ぁ〜!」
「し、士道不覚悟ー!」
「カモちゃん砲、発射ぁ!」
「永倉ハンマー!!!」
「おーか、ほーしーん」
「お兄ちゃん、黒猫が・・・・」
「がとつー」
約1名関係ないのが混ざっているが、運悪くこの直後に帰って来た島田は、全員の必殺技を食らう羽目になったのである。
「お、俺は何もしてない。何も悪くない・・・・」
(おしまい)
(あとがき)
広告メールが色々と舞い込みますが、ほとんどが出会い系サイトとか、必ず儲かる系統のくだらない物で、即座にゴミ箱行きです。しかし、稀に面白いのがあって、ヌーブラの広告メールもそれに相当するものでした。
以下、メールよりコピペ。
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ボリュームUPもOK。
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むう! これを私にどうしろと?
面白かったので保存しておいたのですが、最近、こういう面白い広告メールが来ないなあ。
それから、しばらくして緋村こころちゃんの作品を書くために、ブラジャーの事を調べまくった(幕末にブラジャーが存在するかどうかを調べたかった)のですが、その際に、様々なブラジャーの情報が頭に入りました。その知識の粋を結集して書いたのがこの作品です。元々は神悠士様がヌーブラをつけた沙乃のイラストを描かれたのですが、それが発想の元です。
この作品は元々神悠士様の『こねこのひろば』への投稿作品だったのですが、様々な事情により若竹書庫掲載となりました。