2004年 11月25日付
11月10日付
2004(平成16)年11月10日付 で、厚生労働省にお送りしたお手紙を掲載します。
お手紙のあて先は、同省で在外被爆者援護を担当されるお2人です。
この職員の方々は、在外被爆者援護担当者として初めて今年2月にブラジルを訪問、現地の事情を視察されておられます。
厚生労働省健康局総務課
〇 〇 室 長 様
〇 〇 係 長 様
在ブラジル被爆者協会へのご配慮大変感謝いたしております。
又この度の医療支援制度につきましては特別措置まで設けられました旨 恐縮です。
10月から実行予定と聞いておりましたこの制度、残念なことに 協会としましては当省より2月御来伯されました時点から 具体的に意見を交換できる機会が あまりにも少なかったことを知っていただきたい気持ちです。
立場としましても 協会から説明など請求できるわけも無く 又 ブラジルサイドの保険制度に起きた変化なども まったく 予期できなかったことでした。
そして あの時点に起きましても 加入可能と 返事をいただけたのは 問い合わせた5社のうち 1社にとどまりましたし、それも団体加入ではなく、あくまで個人加入、すなわち2年間は色々制限される保険制度でした。
しかも全員60歳以上、前例の無い放射線を浴びた被爆者 という 当協会員の特殊性を考えましても 又 日本の22倍という面積に点在する被爆者全員加入可能 とする保険会社は 今のところ見つかっていません。
2月の時点で 日伯援護協会が 独自の方法で 南米全土の被爆者への医療支援が可能と話されたことは 我々 協会役員全員が喜びながらも疑問を持ったのが事実です。
しかし当協会としましても 期待を持って援護協会からの連絡を待ちましたが 今までのところ具体的な連絡、相談はありません。マスコミよりの情報では”厚生省と援協との話し合いでは金額について折り合いがつかない“とあり、双方にて話し合いがあったことが伝わりました。
出来ましたら話し合いの内容、結論など聞かせてもらえれば幸いです。
この事業のもうひとつの問題は予算額についてです。
この国では医療費が高額で、先ほども書きましたように 個人加入には年齢制限をすることは法律で禁止されていますが その場合、掛け金が莫大なものになり、個人負担額はとうてい ほとんどの被爆者が払えないものと思えます。
又、全国規模一社ではなく 地方各地にて複数の会社との交渉、取引は当協会の手には負えないことをご了承ください。
ご承知のように 協会の運営は 複数の役員個人負担で成り立っておりますので 遠方住在会員の当地での保険会社選択、交渉、契約分析など とても出来ることではありません。
その上 この国では いろいろな面で地方差がありますし、老齢化した会員では本人自身の意見すら聞くことが困難です。
今まで書きましたことで多少でもこちらの状況をご理解いただけたらと思います。
また駄目押ししているわけではありません。
協会会員自身の直接問題ですので解決について最大の努力を惜しみませんし、何らかの解決法をみだせると信じています。
特に2月の時点では絶対不可能といわれた健康保険加入を 特例として 可能にしていただいた事実には心より感謝いたしております。
この処置が生きるためにも 可能な限りの手を尽くし、後に問題の残らない方法を検討いたしております。
2004年度の医師団巡回事業も無事終わりました。
来伯されましたメンバーの皆様にも現地の事情が ずいぶんご理解いただけたのではと期待しております。
二年前より 在外被爆者支援事業は国家予算によって行われるようになり、その時から協会は 公式な場所 領事館での原爆手帳交付と健康管理手当て申請受付を要望し続けております。
それは老齢、病弱で訪日できない被爆者を見捨てておけない現実があり、その上、我々としては 日本政府に 人道的視点からもこの事実を無視せず、早急なる解決を要請し続けているのです。
この方々は 長年放置された在外被爆者として 日本政府に援護を訴える権利があるのです。
このたび 厚生労働省で 特例を持って在外被爆者問題が考慮されたことを知り、何をおいても 遠いブラジルに住む30名あまりの渡日不可能な被爆者に 今でこそ 特例にて救いの手を差し伸べてほしい、助けてあげてほしいと切に願います。
幸いなことに各自の現状は 今回の巡回事業で日本の医師によって確認できるはずです。
また 申請を受け付ける県庁の職員代表の面々も同行されております。
現地数箇所にある領事館においても館内は日本国内とみなされ、その敷地内ではブラジル国家でさえも干渉は許されないのです。
では 何故 在ブラジル被爆者は 渡日を強いられるのでしょうか。
何故 多額な国家費用を使って30時間にも及ぶ渡航を要求されるのでしょうか。
今回 巡回医師団事業関係者にもこの点について 数々の批判や意見が出されましたし、当被爆者 並びにご家族からは切実な訴えが届きました。
しかし 残念なことに 団員の方々、善処すべく権限をお持ちでは無かったのです。
この処置を実現出来るのは当省のみ、厚生労働省の英断のみなのです。
外務省関係者さえも 厚生労働省からの依頼無しでは単独の措置は取れない、まことに残念だ との声もありました。
足掛け2日ではありましたが 今年二月 現地視察された 〇〇室長、〇〇氏には 渡日することが老齢被爆者にとってどれほど大変なことか 実感されていることと存じます。
然らば 至急 在外被爆者援護対策において“渡日前提制度”を削除していただきたい。
また それによって倹約できる膨大な費用を念頭に置けば より充実した医療支援制度が現地で実現出来ることを 我々在ブラジル被爆者協会役員一同信じております。
この事情を踏まえた上で 是非 当省関係者の再度来伯により 有意義なる検討、解決があることを願って止みません。
平成16年11月10日
在ブラジル原爆被爆者協会
会長 森 田 隆