研究員物語
プロローグ
序章
そのマンマは鍋に「うそ!」
という位オリーブオイルを注いだ。ゆうに鍋底から1cmはあろうか。
それから籠に盛ってあるにんにくを剥いて2,3片鍋に放り込み、とろ火にかけた。
フライパンを焦がさない程度のわずかな量のオイルで炒め物をする私にとっては、思わず胸焼けをもよおさせる程の量であった。
やがて、にんにく片はプツプツと小さな泡を吹き始め、オリーブオイルと融合したにんにくは、香ばしい香りを放ちはじめた。
湯水の如く惜しげもなくオリーブオイルを使うのはイタリアのどこの家庭でもごく一般的な事でありまた、私が勝手に思い描いていたオリーブオイルの使い方がその美味しさの数パーセントも生かしきれていなかった事に気付くのに、そう時間はかからなかった。
イタリア中部の小さな街での体験である。
イタリア中のどこにでもある家庭のパスタソースには、どれにもびっくりする位たくさんのオリーブオイルを使っていた。平均的な日本人には考えられない量を。
使うのは必ず深緑色の"エクストラヴェルジネ"(イタリア語でエクストラバージンオイルの事)。
私がオッリオディオリーバ(=オリーブオイル)と言うとイタリアの主婦達は声をそろえてこう言った。「オッリオディオリーバなんて使っちゃ駄目よ。エクストラヴェルジネでないとね」
オリーブオイルとエクストラバージンがオイルの等級を示す言葉であると知ったのは、この時が初めてである事は言うまでも無い。(^^;
それから半年の間にあちこちで、数々のイタリア家庭料理を頂いた。どれも珍しくないメニューなのに、日本で食べるそれとは味の深さ(うまさ)が全然違った。
基本はオイルなのだと、私はいつもの思い込み確信して帰国した。
「決め手は"エクストラヴェルジネ"よ」を合言葉に、
「これを惜しげも無く使い切るのが美味なる秘訣よ!!」と
自分の料理の腕前を棚の上に置き、今日もオリーブオイルの研究に励むのであった・・・。
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