スノーホワイト |
はじめに… 都会の片隅のホストクラブ「スノーホワイト」 その名前は、言わずと知れた「白雪姫」から取られた店の名前である。 オーナーの趣味で、店内にアンティークの姿見が置いてある。 そして、この店の人気メニューは、りんごを使ったカクテルと言うこだわり。 そんな中で、競合店の注目の範疇から外れながらも 店に出ているメンバーには、足蹴く通う常連が増えつつあった。 そんな、彼等と彼等を取り巻く人々の日々を見守る、店の鏡の独り言として、 お話しは進んでいく。 まず、私鏡の紹介から、 店に来るお客の中には、古ぼけた汚い鏡と言うが、れっきとしたヨーロッパ生まれの、 一級品では無いが…。充分この店の中心として役に立っていると自負している。 そして、白雪姫の継母のように、毎日誰かが話しかけて来る。 自分の姿を写しながら。その毎日のお話しを皆さんに、お聞かせしましょう。 |
五人目・一帆とかおり クールな外見に似合わず、熱血な一帆が珍しく話しかけてきた。 一帆「鏡よ、鏡、俺の話聞いてくれるか…!?」 はい、それが私の仕事だからね。 一帆 「貴城さんが、戻って落ち着いたと思ったら、夏希さんの入店が正式に決まった、 この、『スノーホワイト』も、まだまだ先が読めないと言うか、 俺は、これからどうしたら良いんだろう…。決まった贔屓も思うように出来ないし…。」 クールに構えてても、悩みはあるよな。一帆も自分の立ち位置に迷いが有る訳か…。 一帆 「俺だって、特定の贔屓を増やして、いつかはNO,1になる。 いや、絶対なってみせる自信はある、けど…。」 みどり 「何、泣き言、言ってるのよ。情けないわね。」 (かおり) おや!?お客さんかな!? 一帆 「なんだ、みどりか…。」 みどり「やめてよ、ここへ来てまで、店の名前で呼ぶのは。私はかおり。りっぱなお客様よ。」 (かおり) 一帆 「はいはい。いらっしゃいませ。でもまだ開店には時間があるぜ。」 かおり「よいじゃない。時間前って言っても、1時間も2時間も待つわけじゃないし、 こっちは、店が終わって癒されに来たのに…。良いわよ、意地悪言うなら、 今夜は指名しないから…。」 一帆 「あぁ、かおりの相手は疲れるから、指名して貰わなくて結構だよ。」 おいおい、一帆。お客と喧嘩してどうする(苦笑) かおり「まぁ、早すぎたのは、確かのようだから、出直してくる。」 おや、あっさり引き下がってくれたか。彼女は、一帆とは店の外でも付き合いがある気配何だよね。 一帆 「みどり…、いや、かおりか…。お客には違いないんだが…。」 か、一帆も奥へ行ったよ。悩みは解決してない筈何だが…。 そして今夜も『スノーホワイト』は、開店した。 ホスト一同「いらっしゃいませ!!」 はい、今夜も良い夢を作って行きましょうねって。 ひかるは、りらさんと奥の角の席に落ち着いたな、続けて指名受ける事は分かって居るから、 ゆっくり出来ないからか、せめて開店直後は一緒に居たい訳ね。 貴城は、まだ店になんとか来れる、白羽のお嬢さんと、店の真ん中の一番広い場所を占領ね。 お嬢さんも、もう指折り数える間だしか来れないから、出来るだけ楽しもうとしているのが、 痛々しいと言うか、いじらしいと言うか…。 おや!?貴城達を、睨んでいるのは、かおりさん!? かおり「もう!!今夜は特等席貸し切るつもりだったのに、一帆が追い出すから、 また、取られちゃったじゃない!!」 ももこ「みどりさん。(睨まれて)か、かおりさん。こっちに席が空いてるから、座りましょうよ。」 あの子は!?彼女の同僚か、下の子かな!?面倒見は良いと言うことかな!? 一帆 「いらっしゃいませ。」 かおり「指名しないって、言ったでしょ。」 一帆 「仕方ないだろ、今NO,1も、NO,2も自分のお客さんが来店しているんだ、 指名してもすぐに来れないよ。」 かおり「だからって、何故一帆な訳…!!そうだ、ほらあそこに居る子、一帆より上が駄目なら 下の子なら指名出来るわよね。あの子呼んでよ。」 一帆 「あの子!?あぁ、桂ね…。分かった…。」 桂ねって、おや!?珍しく桂も他のお客さんと二人きっりみたいだよ。 一帆 「桂。指名だ…。」 桂 「えっ!?」 一帆 「あそこ、ある意味同業者だから、食われないように気を付けろよ。」 桂 「あっ!!でも、彼女は、一帆さんのお客さんじゃ!?」 一帆 「今夜は、俺じゃ嫌なんだと…。こっちのお嬢さんは、引き受けるから行ってこい。」 桂 「はい…。じゃ、リサ。」 リサ 「うん、お仕事だもんね、頑張ってね。」 一帆 「リサって言うの、桂とは個人的に知り合い!?」 リサ 「は、はい。学生の頃の…。」 一帆 「彼女って事無いよね(笑)あの奥手の桂に限って…。」 一帆…言い過ぎ…って、彼女赤くなって俯いたよ。 一帆 「嘘…。彼女なの!?」 リサ 「学生の頃。付き合ってました。でも、やりたいことが違ってしまって、今日たまたま見かけて、 雰囲気とか変わってて、声かけたら店に来ないかって言ってくれて…。」 一帆 「へぇ〜!!意外だね、桂に恋愛経験あったんだ…。」 私も、驚いたが…酷い言い方だよ、一帆。(苦笑) 一帆 「こういう店は、初めてって感じだよね。楽しんで帰ってもらうから、そのつもりでね。」 リサ 「はい。」 戸惑っているようだが、素直そうな良い子じゃないか…。 桂の方は、無事かな!? かおり「やっと、来た。」 桂 「遅くなりました。本当に僕で良かったんですか!?」 かおり「僕だって、可愛いぃ〜!!良いの、一帆だとまた喧嘩になって癒されないもの…。」 ももこ「喧嘩するほど仲が良い。とも言いますけどね。」 かおり「あんたは、黙ってて。何なら帰ってくれても良いのよ。」 ももこ「そんなぁ〜!!静かに飲んでますから、私も癒されたいです。」 桂 「ゆっくりして行ってください。まだまだ未熟な僕でお役に立てるなら、 出来る限り頑張りますから。」 かおり「頑張って貰わなくても…。」 かおり「あなたって、一生懸命なのね…。疲れない!?」 桂 「桂で良いですよ。疲れないと言えば嘘になります。でも、好きで選んだ仕事です。 自信と誇りは持ちたいと思ってます。」 かおり「誇りね…。ホストなんて、所詮水商売じゃない。」 桂 「そうですね。でも、お客さんにありがとう。また来ますと言われたら、嬉しいじゃないですか、 決まった贔屓のお客さんが付いて、指名が増えるのも、やっぱり励みになるし…。」 と、…桂の奴まだ白羽のお嬢さんの事忘れられないと見える…。 かおり「ホステスなんてね、お客と店の道具よ。そりゃ私はこう見えても、一流のクラブのホステス。 バーや、スナック何て安っぽい店の子達と一緒にされるのは、ごめんこうむりたいけど…。」 桂 「充分、自信も誇りも持っているじゃないですか。大丈夫、あなたは…。」 かおり「かおり…。」 桂 「失礼しました。かおりさんは、確かに少し疲れているように見える。 でも自分を見失っては居ないし、自分にとって何が、誰が大切か探しているから、 求めているから、きっと見つけられますよ。」 かおり「桂。優しいのね。そう、私は探してる。求めてる。それが何か分からないけど…。」 桂 「僕も一帆さんも、同じです。自分がどうあるべきか、何処へ向かって行くのか、 不安を抱えても、見つけたいと、見つけられると信じてます。」 かおり「一帆も!?」 桂 「はい、同じですよ、きっと。お互い見つかるまで探しましょう。」 桂の奴…。いつの間に…。 かおり「ありがとう…。よし、今夜は飲むわよ、一帆も一緒に居る素人さんも呼んできて、 シャンパンも、食べ物もどんどん持ってきてくれて良いわよ。とことん楽しんじゃう!!」 桂 「かおりさん…。」 ももこ「きゃ〜!!流石です、ホストが遠慮しててどうするのよ。かおりさんの機嫌が変わらない内に、 じゃんじゃん、運んできてね。」 おぉ〜お…。太っ腹と言うか何というか…。まぁ店としてはありがたいお客さんだけどね…。 一帆 「かおりが…。もとい、かおりさんが呼んでる!?こちらのお客さんも一緒に!? はぁ…、やっぱり桂じゃ押さえきれないか…。仕方ない、リサちゃん(一番良い顔で) 私がしっかりガードしますから、お供して頂けますか!?」 リサ 「はい(はにかみながらも、良い笑顔)よろしくお願いします。」 流石、お客のハートを掴むのは、素早いんだが…。 かおり「いらっしゃ〜いぃ〜!!今夜は飲みましょ〜!!」 一帆 「飲みましょうって、既に出来上がってるじゃ無いか、大丈夫か…!?」 かおり「大丈夫。店でも飲んでるのよ、少しは残ってても当然じゃない…。」 一帆 「そりゃ、そうなんだが…。」 桂 「心配、何ですよね…。」 一帆 「馬鹿、誰が心配なんかするか…。」 かおり「そうよね、一帆が心配何てしてくれる筈無いもん…。 良いの、私は今夜は桂くんが居てくれるから…(少し淋しい笑)。」 一帆 「それなら、俺までいちいち呼ぶなよ、こちらのお客さんにも、迷惑だろ。」 リサ 「別に構わないです。私こういった店に入ったこと無いし、こういうお仕事している人って、 初めてだから、テレビや雑誌のイメージと少し違ってて新鮮です。」 桂 「普通に、OLしてる、リサから見てどう!?」 リサ 「なんて言うか、思ったより、キラキラしてて、でも温かい。」 かおり「温かい!?」 リサ 「はい、温もりって言うか、人と人が向き合って、一緒の空間で一時を過ごすからなのか、 人の体温って言うのかな!?あぁ、自分以外の人にも温もりがあったんだな、って…。」 ももこ「わかる…。温かいのよ、ここって特に…。」 一帆 「温もりか…。俺もそれを感じて貰えてるなら、嬉しいかもな…。」 かおり「感じてるわよ…(呟く)」 一帆 「えっ!?」 かおり「さぁ、飲んで飲んで、もっと食べましょうよ!!貴女って、桂くんの、元カノ!?」 リサ 「リサです。はい(笑顔)元彼女!!(笑)」 桂 「リサ!!」(真っ赤!!) かおり「聞かせて、聞かせて。」 あぁ、男二人は、すっかり女性達に遊ばれてるよ。これじゃまだまだ一人前には、2人とも程遠いね。 まぁ、このまま良い状態で、成長して行くだろうし、一人一人、 それぞれなりの考えも持っているようだから、このまま素直に、自分達を信じて。 それだけだね、今私に言えるのは…。 |
六人目・桂と… 桂 「鏡よ、鏡。僕の話聞いてくれるかい!?」 桂が、また私にそう話しかけてきたのは、白羽のお嬢さんが正式にお嫁入りが決まって 最後の来店の翌日だった。 桂 「鏡よ、鏡。昨日は、ゆりさんが最後の来店で、貴城さんも珍しく飲み過ぎるぐらい、飲んで、 僕も、一帆さんに取り上げられたぐらい、飲んだ夜だった…。」 あぁ、2人とも潰れるまで、飲むなんてこの仕事してる者としては、情けなかったよ。 桂 「あの後、閉店してから、店を出て。貴城さんは、ゆりさんを送って帰ったけど…。 僕は始発の地下鉄に乗ろうと、駅に向かった。間の悪いことに、雨も降りだして、 ついて無い時はどこまでも、ついて無いなと、階段を駆け下りたんだ。」 雨の中走ると危ないよ。 桂 「その時階段を駆け上がってくる、あの子とぶつかった。」 ほら、いわんこっちゃない。って、あの子!? 桂 「見たことのない、まだ学生っぽい子だった。で、聞いて欲しいんだけど…。」 はいはい、ここから本題な訳ね(苦笑) 桂 「ぶつかった子とは、名前や仕事、学校も聞かない約束で、そのまま出かける事になったんだ。」 おい!!何でいきなり話が、そこへ行くんだよ!! 桂 「彼女は、学生だと言ってた。遅くまで遊んでいて帰るまでの乗り換えだったか、 乗り過ごしたかで、終電が無くなって、外へ出られなくなって、駅で一晩過ごしたんだって。 で、朝になって、まず外へ出ようとして、僕とぶつかった。」 2人して慌てていたって事だね、しかし怪我が無かったなら良かったんだが…。 桂 「最初は、かなり怒っていたよな…。上がろうとしてたんだから、落ちて尻餅ついた訳だし。 でも、何て言うか、少し口論になりかけたけど、話しているうちに、 何処か行きたいって意見が一致したんだよね…。彼女も何か悩み抱えてるみたいだったし、 僕も1人だと、やっぱり、ゆりさんの事考えてしまっただろうし…。」 はぁ、本当に素直なんだから。 ここからは、桂のその子との一日を振り返っての話をしていきたいと思う。 桂 「ごめん。」 美桜 「いったっ〜い!!危ないわよ!!階段走らないでよ!!」 桂 「だから、ごめんって…。外雨降ってるし、いろいろ考えたく無いこと考えてたし…。」 美桜 「考えたくないなら、考えなきゃ良いじゃない!!」 桂 「そうなんだけど…。」 美桜 「男の癖に、ぐだぐだと…。うん!?あなた、何の仕事してるの!?こんな時間に出社にしては、 見た目悪く無いんだけど!?」 桂 「出社じゃないよ…。」 美桜 「えっ!?」 桂 「今帰る所…。仕事は言いたくない。今は…。」 美桜 「言いたくないなら、聞かない。」 桂 「君は!?学生に見えるけど、女の子が1人で出歩く時間じゃないと思うんだけど…。」 美桜 「帰りそびれたの…。」 桂 「えっ!?」 美桜 「昨夜は、終電に乗り損なったの!!」 桂 「それで、駅に一晩居た訳!?」 美桜 「そうよ…。」 桂 「よく、駅員さんに見つからなかったね。」 美桜 「終電の、乗り換えぎりぎりだったんだもん。 まだ、電車あるかとウロウロしてたら、シャッター閉まるし、電気は非常灯だけになるし、 凄く心細かった。」 桂 「でも、下手に外で一晩明かすより安全だったと思うよ。」 美桜 「うん…。所で仕事が終わったなら、これからどうするの!?」 桂 「帰る、帰って寝る…しかない。寝れるか分からないけど…。」 美桜 「私は…今から帰ってもだしな…。」 桂 「学生だろ!?学校は!?」 美桜 「行きたくない、かも(笑)」 桂 「行きたくないって…!!」 美桜 「海が見たいな…。ねぇ、今から行かない!?今からなら少し遠い所まで行けると思うよ。」 桂 「遠くの、海か…最近行ってないな…。行けば少しは…。」 美桜 「行こう!!海…。」 おやおや、桂はどうしてこう、元気で強い女性に縁があるかな!?(笑) 桂 「そのまま、2人で地下鉄から電車を乗り継いで、海岸線が見える少し遠くの海へ出かけたんだ。」 美桜 「名前、名乗るべき!?」 桂 「不便と言えば、不便だけど、一日だけ今日だけだよね。」 美桜 「うん…。そう…。」 桂 「それなら、お互いのことは、あまり知らない方が良いと思う。」 美桜 「わかった…。」 おいおい、名乗らない提案は、桂からか…彼女は知りたかったのかも知れないのに…。 桂 「夜の仕事するようになったから、こうして昼間の電車は久し振り何だよね。 ラッシュも新鮮かも。」 美桜 「私は、嫌い。おやじ臭いし、変な奴多いし…。きゃ!!」 桂 「大丈夫!?少し揺れただけだよ…。」 美桜 「うん…、大丈夫。」 桂 「揺れて、僕に寄りかかった彼女の温もりと、髪の匂いが何て言うか、店のお客さんと違っていて、 少しドキドキした。」 ほほう…、桂にしては、上出来な反応だって事だな。 美桜 「もう少しの間、変な奴から守ってよ。男何だから…。」 桂 「分かってる。」 桂 「電車が、進むうちに、乗客も少なくなって来て、途中乗り込んでくる人も、 地元の人っぽい雰囲気になってきたんだ。」 美桜 「雨上がったね。」 桂 「あぁ、良かった。折角海へ来ても、雨じゃ台無しだもんな…。」 乗客 「海へ行くの!?」 桂 「突然話しかけられて、2人とも驚いた、前の座席に座っていた、おばあちゃんだった。」 桂 「はい、今からなら、お昼前には着けますよね。」 乗客 「大丈夫。春の海はまだ冷たいけど、きっと良い顔(表情)で、向かえてくれるわよ。 2人は恋人どうしかしら!?(微笑)」 美桜 「えっ!!ちっ、ちが…。」 桂 「そんな感じに、見えますか!?」 乗客 「えぇ、とても仲良く見えるわ。若いって良い事よ、今を沢山楽しんでね。」 桂 「はい。」 桂 「そのまま、色々話ながら僕たちは終点まで行った。おばあちゃんは、途中で降りたけどね。 やっぱり、温もりのある一時だった。」 美桜 「見えてきた!!海よ!!」 桂 「車窓が一気に開けて海岸線が、目の前に広がった時は、2人とも、ワクワクしてたと思う。 電車を降りて、海へ向かって歩き出した。」 美桜 「潮の香りがする。」 桂 「うん、海へ来たんだね。」 桂 「2人で、本当にありきたりの時間を、過ごした。裸足で海へ入ったり、砂に落書きしたり。 貝殻を拾い集めたり。他の人から見たら、何てつまらない事やってると思われたかもしれない。」 美桜 「楽しい!!けど、帰らなきゃいけないのよね!?」 桂 「そっ、そうだね…休む訳にはいかないから。」 美桜 「帰る!?」 桂 「うん…。」 美桜 「それなら、あなたの拾った貝殻頂戴。」 桂 「えっ!?」 美桜 「替わりに、私のあげる。」 桂 「彼女は、そう言って背中越しに、自分が集めた中で、一番大きくて綺麗な貝殻を差し出したんだ。 僕は、それを受け取って替わりに、僕の一番を彼女の手に乗せた。」 桂 「帰ろう…。」 桂 「そう言って、彼女の手を引いて駅に向かって歩き出した。 その後は何故か2人とも何も話さなかった。電車は元来た方向へ進んで行く、 出逢った駅へ向かって行った。」 それは、さよならの為の、帰り道だと分かって居たって事だよね。そして、それを望んで居なかった。 桂 「さよならの為の、地下鉄は嫌だった。帰宅するラッシュから彼女を守りながらも、 話す言葉が見つからなくて、ただ倒れないように、変な奴が近づかないように、抱きしめていた。」 桂…お前…。 桂 「人混みに押されるように、ホームへ出てそのまま別れた。彼女は乗り換える駅何だし、 僕は店に行かなきゃならない。それに…。」 それに…!? 桂 「さよなら。と、言うと二度と会えなくなりそうだった。きっと彼女もそう思っていたと思う。 何も言わずに、ただ交換した貝殻を確認して、別れたんだ。」 桂、素人に本気になったら、お互い辛いぞ…。 桂 「鏡よ、鏡。僕は本当に人を好きになるって事が、まだ分からない。好きっ事は分かるけど、 その本当って感情の何て言うか…。」 桂、お前さんは何時でも本当何だよ、だから分からなくなるんだよ。 桂 「いつか、本当の意味が僕でも理解出来るかな!?今日出逢ったあの子とも、もう一度会えるかな!? その時は、ちゃんと名乗って次ぎに会う約束も出来たら良いなって…。」 会いたいと、想い続ける事だね。そうすれば叶うよ。 一帆 「誰か居るのか!?って、桂!!お前昨日と同じ洋服じゃないか!!しかも何か臭うぞ。」 桂 「一帆さん…。海へ行ってたから…。」 一帆 「着替えないで!?馬鹿か!!ったく…。ロッカーに俺の予備のスーツが入ってるから着替えてこい。 タオル絞って汗も拭いて来るんだぞ。」 桂 「はい!!」 桂は、奥へ行ったか、しかし一帆の奴本当に、口は悪いが放って置けないんだな。 桂も、普段どおり叱られて、吹っ切れたみたいだから、心配いらないな。 一帆 「鏡よ、鏡。さっきの桂の話。あいつにしたら上出来だと思った。そのうち俺も追いつかれるよな。 気は抜けないよ。」 か、一帆聞いてたのか!!(苦笑) そうだな、皆いろいろ経験して行くから、良いんだ。 今夜も、良い夢を作ってくれよ。 |
七人目・夏希 夏希が、正式に「スノーホワイト」に、入店した。 初日は、意外と緊張してたのが可笑しかったのだが…。 数日後…。 夏希「鏡よ、鏡。」 おや、さっそく私に話しかけてくれるのかい!? 夏希「鏡よ、俺はここに来て良かったんだろうか…。」 「正直正式に、入店の辞令もらって驚いたけど、嬉しかった。 以前話したけど、ここは居心地が良いんだよ。不思議と落ち着くって言うか…。 初日に挨拶した時も、ひかるさんは『おかえり』と、向かえてくれた。でも…。」 おやおや、何が引っかかっているのかな!? 夏希「貴城さんが…。」 貴城「僕が、どうしたの!?」 おっと、いつの間に…。 貴城「夏希。僕の事など気にしても仕方ないと思うよ。 お互い、NO,2として店を盛り立てようと頑張って来たんだ、 これからこの「スノーホワイト」で、やって行く限り、 手加減無しに頑張るしかないと思うんだけど!?」 相変わらずというか、言ってる事に裏がないと言うか(苦笑) 貴城の言うことが、正解だと思うな。 夏希「貴城さん。はい、手加減する気はありません。でも、こうあっちこっち行かされると、 本当に、ここに居て良いのか、不安になるんですよ。」 貴城「う〜ん…。僕は出向と各店選抜の研修の経験はあるけど、店は替わった事が無いからな。 その事に関しては、何も言えない。」 夏希「貴城さん。」 貴城「でも、今の「スノーホワイト」に、今の夏希が必要だっから、やって来たんだと思う。 それじゃ駄目かな!?」 本音としては、自分が不利になる可能性すらあるのに、素直に受け入れるか。 本当に、お坊ちゃんと言うか、何と言うか…。 貴城「それに、夏希とは以前の研修でも一緒だったし、いろいろ取り巻く環境も似てる気がする。 これから、一緒にやっていく仲間としては、頼もしいと思って居るんだけど…。」 夏希「取り巻く環境…!?」 「あっ…!!かな…。」 貴城「しっ!!もう他の男の物になったんだ、名前は心の中で呼ぶものだよ。」 夏希「はい…。新しい店で、新しい恋を…ですね。」 貴城「そう、僕も夏希が来てくれたからこそ、吹っ切って新しい恋を見つける気力が湧いて来た。 負けられないからね、しっかりお客様に夢を見てもらわなきゃ。」 貴城、お前さんまだ忘れられないか…。しかし、良い顔してるよ。 夏希「負けられないか…。そこまではっきり意識されてるなら、遠慮無く俺も頑張ります。 どれだけ良い夢を、お客様に見てもらえるか…。」 貴城「あぁ、お互い遠慮無し、手加減無しだ!!」 男どうし、お互いを認め合ったからこその、ライバル宣言か。 2人の頑張りは、店を活気づかせると思うから、楽しみに見させてもらうよ(笑) |
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