Urban Architecture Planning Partnership
           
















  『岩出山の町割り住戸』

はじめに

城下の雰囲気が色濃く残る宮城県大崎市岩出山町に建つ住宅です。

岩出山町はかつて伊達政宗が本拠を置き、その後も明治維新に至るまで居館が置かれていました。そのため、町割りに当時の痕跡が大きく残っています。100m四方程度の街区がひとつの共同体単位となっており、道沿いは間口が狭くそれぞれが占有しているものの、街区中心部は境界が曖昧な共用地であったことが読み取れました。


敷地は建主家族の人数に対し十分に大きく、細長く、隣家との関係を意識せざるを得ないものでありました。そのような敷地に対し、通り沿いの隣家は古くから何度も増築を繰り返し、1軒の住宅でありながらも建築群としての様相を呈しています。単体型の建築ではこの地域の風景と断絶してしまうように感じたため、建築群としての構成を模索して検討を始めました。


上:増築を繰り返し増殖しているような周辺建物の建ち方
配置計画
棟によって用途を振り分け、それらの棟と棟が連結されて全体が構成され、隣家とのプライバシーも緩やかに確保されてます。棟と棟との間の外部空間は性格の異なる外部空間となり、地域に開かれた前庭、セミパブリックな中庭、街区全体の共有地へと徐々に空間の質が変化しきます。

中庭:将来設置予定の塾でも活用できるセミパブリックな位置づけの庭。床の仕上げは、この地方で取れる鳴子石の乱貼り。
敷地中心部の空地。かつて街区の共有地であったろうこの空地は、同居する母が畑仕事を始めることを心待ちにしており、かつて何百年もの間ここにあった共同作業の萌芽が再び芽生えるかもしれません。
リビング

敷地中心部の境界があいまいであることを利用したオープンなつくりとしました。床高さの設定をバリアフリーを考慮して低くしたことにより、地面との距離が近くなり、外との地続き感があります。


リビング棟は平側方向を間口とした切妻の大屋根が特徴で、将来、塾を設置予定の多目的室とプライベート空間であるリビングを、水周りと子供室で分節した空間です。それらすべてを木梁あらわしの大屋根で包んでいます。障子越しに見えるのが子供室です。
2階の子供室は最低限の個室(3畳)に共用の本棚、机をリビングの吹抜けに面して設置しています。天井の仕上は、音の反響に配慮して、木毛セメント板としました。
多目的室(塾を設置予定)
お施主様は、将来塾を開き地域の子どもたちに勉強を教えることを望んでいます。塾となるスペースを道路から見える玄関土間に面して設けました。


玄関土間沿いに続く8mの本棚は、施主の蔵書だけではなく、将来塾でも使うことを想定して玄関前まで延長して設けました。
寝室
寝室棟へは、リビング棟から渡り廊下で向かいます。



寝室棟は単純な切妻屋根のボリュームに、2室の寝室と共用のウォークインクローゼットが入ります。
通気を兼ねたハイサイドライトから朝日が差し込みます。