Urban Architecture Planning Partnership
             

















 好評連載 「もうすぐ生れる!」 模型の残骸で綴る思考の軌跡 ODH-住宅」編
ファーストコンタクト
 去年年末のオープンハウスに来ていただいたお客さんから連絡を貰い、そのまま事務所に来ていただけることになった。お話を聞かせて頂くと、家族構成はご夫婦と息子さん、娘さんの4人。将来両親との同居も視野に入れ、住宅を新築したいとのこと。
 現場が近いということもあり、現地調査も兼ねて敷地をみせて頂くことになった。
敷地
 敷地は仙台駅から程近く、細い道を進んだ奥。南側に面していて、隣地に神社周りは適度な庭を持つ住宅に囲まれ道幅の狭い前面道路をもつ古い住宅地である。周辺は長い時間をかけて徐々に徐々に再開発や建築が進み南側前面道路をはさんで古いアパートがあり更に、30mほど先に7階建てほどのマンションもある。
敷地図
スタディ+第1回プレゼンテーション
2005-03-26
 先ずは周りを住宅に囲まれているため、安定した外部空間を軸にすえてスタディを開始する。
 全ての諸室、テラスが庭に面しているように配置したスタディ模型。
 これから進むであろう、隣地の建替を考慮に入れ隣地に面する部分は全てルーバーで覆うことを考えた。また、屋根にルーバーをいれることでマンションからの視線を考慮している




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(このあたりの模型はいくつも作ったが現存しているのはこれのみ)

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プレゼンテーション
 プレゼン後、クライアントの評価は概ね良好。
 この時点では、将来の両親との同居を視野には入れているがクライアントの方でも具体的なビジョンはいまだ固まっていないようで、我々も通い同居程度の認識だった。
スタディ+第2回プレゼンテーション
2005-04-23
 基本的には今までの考え方で再びスタディを開始
 ランダムに配置された外部と内部にこだわったため、空間相互の正面製、中心性が曖昧になりすぎではと感じたため、それを反省。
 ランダムで均等で平等で自由だけれども、弱い感じが、なぜだか急に気に入らなくなる
 スロープ状にした立体的なアプローチ兼庭で、外部と内部の間にワンクッションいれる。これを空間こうせいじょうの大きな鍵にしようと考えていた。
 半階上がった部分にリビングを配置したスタディ模型。


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プレゼンテーション
 予備室が2つ欲しいとの要望この予備室は将来、両親が使うということがはっきりした。
 この要望を取り込み再びスタディに取り掛かる
スタディ
 諸室が多くなって中庭と諸室をランダムに配置するのが不合理となったためこの路線案は断念することとなる。
 次は、考え方を変え建物を集約して南と東西との距離をキチンととって採光・通風を確保しようと考えた。
 将来ご両親と住むことがはっきりしたのでゾーニングも『両親の場所』『共用の場所』『家族の場所』にわけてプランニングにとりかかる。
第3回プレゼンテーション
2005-06-17
 正面性を全面に出してリビングを南側に配置する。北側隣地の住宅に対する採光の配慮から最下階を半地下にすることで高さを抑えた。マンションの視線に関しては庇とデッキを持ち出し建物自体の懐を深く取ることで解消しようと考えた。
 半地下階はエントランスと両親のスペース、1.5Fはリビングダイニングキッチンなどの玄関のスペース、2Fは、寝室と子室とに分けて明確にゾーニングを行った。

 この案でプレゼンに臨む。



 一度持ち帰っていただいて返事を待つこととなる

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2005-07-10
 ご夫婦とご両親とで話し合った結果、半地下というので総反対だったらしい・・・。こちらとしては自信もあっただけに悲しい結末
第4回プレゼンテーション
2005-07-21
 後ろ髪惹かれる思いで、再度スタディを開始する
 東側に庭を確保した形で始めることにする。ゾーニングは『両親の空間』『共用水回り』『リビング』『家族の空間』の4つに分けてたスタディ模型。半階上がったところにリビングを配置し2.5階案で提案する。
 
 半階上がったリビングと吹き抜けが気に入っていただき方向性が絞れてきたかのように見えた・・・・。


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第5回プレゼンテーション
2005-09-10
 前回提案した2.5階案を基本にスタディを再開する。

 動線上南側に共用部を持ってくるのが一番合理的であると考えて配置したスタディ模型

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2005-09-16
 大まかなプランの方向性は固まってきた。打合せも徐々に細かい要望に入っていく
第6回プレゼンテーション
2005-10-21
 前回の要望を受けて、より練った案で模型を作成しプレゼンを行う
 
 方向性の確認。細かい要望を頂き事務所に帰ってさらにプランを練ることに

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スタディ
2005-11-15
 基本的にゾーニングは変えずにその各々の空間を配置するバリエーションでどれが一番合理的か評価しはじめる。
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2005-11-16

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2005-11-24

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2005-11-25
 己の脳と手をフル稼働させひたすら図面と模型に向き合うがこれといったものが出来上がらない。

     

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第7回プレゼンテーション
2005-11-27
 前案を受けて1/50の模型を作成
 
 さらに細かく要望を聞き出していく




 コスト面を考えて一度2階建てを検討する必要があるとして、2階建て案のスタディに入る

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スタディ
2005-11-28
 半階上がりのリビングはいじらずに他の諸室の配置をいじってみる
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2005-11-30

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第8回プレゼンテーション
2005-12-02
 2階建て案のプレゼン
 寝室を1階に配置して子供室を2階に配置、リビングは今まで同様半階上がりに配置したプランと模型






 1階寝室の採光面に問題があるとして却下

 再び2.5階建て案のスタディイに取り掛かる

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スタディ
2005-12-10
         
          
         
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2005-12-20
  迷走中   
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2006-01-06
         
         
          
         
         
         
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 とにかく、クライアントと我々の考えが一致できるのが、このパターンしかないと考え、ひたすらに模型のバリエーションを増やし続けた。堂々巡り繰り返し「いいアイディアがあった」と思いつき、やってみると、すでに前にやったぷらんであり、同じ問題にぶつかっているという感じを繰り返す。
第9回プレゼンテーション
2006-01-15
 寝室を2階にして子供室を1階に配置した案


 しかし、クライアントは子供室は日当りのいい場所というのが大きな要望の一つであったため。この2階建て案も却下

 ここで、各諸室の優先順位の確認を明確にした。

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第10回プレゼンテーション
2006-01-15
 各諸室の採光、通風を考えると2.5階、2階建てでは不合理であると考え始める。 そこで、新たに3階建て案の検討に入りスタディを繰り返しプレゼンを試みる

 1Fに共用水回り・両親の空間を配置、2Fにリビング・ダイニングを配置、3Fに家族の空間を配置した案



 長細い外観に問題があるために却下


 やはり、クライアントは2.5階案がいいということに・・。

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第11回プレゼンテーション
2006-02-04
 前回の打ち合わせでリビングの広さをもう少しということで練り直したスタディ模型
 コスト面に不安があることだけが気になる。これに加えて駐車場に屋根が欲しいとのこと

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第12回プレゼンテーション
2006-02-11
 前案に駐車場屋根をつけた案。しかし、この案ではリビングから駐車場の屋根が大きく見え、あまり良い建築とは言えないと説明する。クライアントもこの模型を見て確かにそうだと納得。

 そこで、事務所内で要望を良く満たしているのではないだろうかと浮上していたのが、過去、クライアントが半地下ということで総反対の案。なんだかんだといっても、この案がベストだったのなあと事務所内では古い模型をチラチラ横目に見ながらため息混じりに話をしていたのだった。
 古い模型を打合せに持参しちらりと見せると、クライアントも直感的に「これがいいのでは」と思ったらしい。プランを再確認すると・・・クライアントも納得の案であることが判明。半地下をやめて、3階建ての案とすればいいのではないかということで現要望を全て盛り込んで再度プレゼンをすることになった

クライアントも半地下だけが気になりプランを詳しくは見ていなっかたのだという。




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第13回プレゼンテーション
2006-02-19
 これまでの要望を盛り込んで模型1/50を作成してプレゼンに臨む。
 クライアントにも気に入っていただき、この方向で行こうと方針は決定した。




 このプレゼンの前日に降った雪の雪下ろしが夫婦ゲンカのタネになったらしく、駐車場屋根の必要性をしみじみ感じたらしく今まで曖昧だったが、完全に設計に組み込むことになる。


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第14回プレゼンテーション
2006-02-25
駐車場屋根を組み込んだスタディ模型

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そこからさらに試行錯誤の結果、完成しました。
実際の建物はこちら
担当:千葉