Urban Architecture Planning Partnership
       

















 好評連載 「もうすぐ生れる!」 模型の残骸で綴る思考の軌跡 TMH−町に露出する中庭」編
ファーストコンタクト
 「町に露出する中庭」(今のところ、勝手に)名前をつけさせていただいた、住宅の検討過程は、クライアントとのメールでのやりとりのなかに、その時点での問題点がうまく記述されていると考え、何通かのメールをそのまま引用しております。

※真上から見下ろした全ての模型の方位は、
 「上が南側」「下が北側」「左が西」「右が西」です。
2010-03-07
 2回目の「山神の住宅」のオープンハウスに御出でいただき、それがイメージにぴったりと合ったそうで、その場で「自宅案を提案して欲しい」との話をいただいた。
2010-03-13 現地調査
 クライアントと現地にて待ち合わせをし、敷地を見せていただいた。
 そのあと、近くにあるご自宅にお伺いし、ご要望などをお伺いします。
 新居に持って行く予定の家具や、買い替え計画、収納量、どのように生活をしているかなどを、お宅を拝見しながらお伺いする。

 具体的な「敷地条件」や、「ご要望」は、以下にまとめました。
敷地
1/100 敷地模型
敷地は、仙台市近郊の古い住宅地にあります。現在は更地ですが、その前は古いアパートが建っていたそうです。そのため土地は広く、80坪超の広さがあります。クライアントは少し前にこの土地を購入し、それから建築家探しを始めたそうです。
模型写真では、左斜め上方向が「南」です。
北側で仙台市道に接道しており、東・南・西側が隣家と接しています。
敷地写真
上の写真は、道路から、南方向を見た写真です。
写真を見ていただくと分かりますが、南側には二階建てのアパート、西側には古い会社の倉庫、が間近に迫っています。
要望
 要望をすべて羅列すると……、
■家族三人と猫一匹。ご夫婦共に働いている。
■駐車場は2台分確保したい。
■必要諸室は、LDK、水廻りと、寝室、こども室、書斎。書斎はコーナーでいいと思うが、ここで仕事をすることもある。簡単な打合せができると良いと思う……。
■対面キッチンが希望。油跳ねが気になるので、コンロは隠したい。料理は、友達を呼んで何人かで作ったりすることがよくある。
■フリースペースで皆で勉強したり、というスタイルがいい。子供部屋は寝るだけで「こども部屋に篭らせない」感じにしたい。
■洗濯物を干すスペースが欲しい。
■クローゼットは大きいものがひとつ、そこに皆の衣類を収納したい。現在は2間分の長さの押入れに入れているが、既にパンク状態とのこと。
■玄関には、玄関収納が欲しい。(「山神の住宅」のように)家族はそこで靴の履き替えをするようにしたい。
■オール電化にしたい。
■趣味は、家族キャンプ、パソコン、料理。キャンプ用品を収納するスペースがほしい。
■猫が上から見下ろす場所が好きなので、猫に居心地の良い場所を一箇所作って欲しい。
■ローコスト住宅

■「囲い庭に埋もれる平屋」や、「連続し寄り添うハコ/ニワ」のように、囲われている感じにして欲しい。
■取得した土地は、思っていたよりも広いものを取得してしまったので、そのぶん、予算オーバーしてしまった。一部を貸し駐車場にでも出来るといいなぁ。

スタディ
2010-03-15〜
先ずは、1/100敷地模型を作ってもらい、それを元に、スタッフと打ち合わせをしました。
「どんなイメージにしようか?」とのフリーディスカッションでは、最近フラットルーフが多いので、「勾配屋根をやってみたいなぁ」とう話が出ました。ただ、クライアントからの要望からも、周辺環境からも、「中庭タイプ」は外せないだろう、との話もありました。勾配屋根は広い敷地で無いとうまくまとまるかどうか不安なところですが、イメージとしては、
「中庭に向かって、篠原一男の作品のような大きな勾配屋根が(かなり軒を低くして)落ちてゆくような内部空間」
はどうだろう、というところに落ち着きました。

しかし、それよりも差し迫った問題として、全体配置計画をどうするか、が話題になりました。
「一部を貸し駐車場に…」という要望に則り、「貸し出し台数を優先して配置計画を行うか」「居住性優先で配置計画を行うか」で、今後の展開が大きく変わってきそうでした。
2010-03-15
study-model-01
2010-03-15
study-model-02
2010-03-15
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上のことを念頭において少しスタディをすすめましたが、ラフに検討してみると、「貸し出し台数を優先して配置計画を行う案」と「居住性優先で配置計画を行う案」では、かなり隔たりがあることが分かりました。

「貸し出し台数を優先して配置計画を行う案」では、住宅を敷地南側ぴったりと寄せ、道路に面してずらりと駐車場を並べる方法がもっとも有効でした。
その方法だと、駐車総数が7,8台確保でき、5〜6台分を貸し駐車場とすることが出来ます。

一方、「居住性優先で配置計画を行う」ためには、貸し駐車場を設けない方法がもっとも居住性を優先できるだろう、との見解でまとまりました。

問題は「このことをどのようにクライアントに説明すると良いか?」でした。
ひとくちに「貸し出し台数を優先して…」と言っても、「どの程度、居住性が犠牲になるのか」その按配がクライアントにきちんと伝わらなければ、クライアントはその判断をすることができません。

我々の立場として「どっちの方がやりやすいか?」或いは「どちらの方が良い計画になるか」と逆に訊かれたとしても「どちらの方向でもよくなると思います」としか、答えられません。もっと言うと、「良い案になるまで何度でも検討します」ということなのですが……。

「ある程度、ラフにでもプランを想定した案を作らなければ、クライアントに説明のしようが無い」ということになり、手の空いていたスタッフに作ってもらうことにしました。
左の模型らは、「貸し出し台数を優先して配置計画を行う案」のものです。北側道路に面して駐車場を並べているので、東西方向に細長い形になります。

下のものは、「居住性優先で配置計画を行う」案の模型です。
中庭と居室部分の取り方のみが示された模型ですが、敷地模型に当てはめてみると、概ね「この方式はうまくいきそうだ」という見当がつくのではないかと考えていました。

「とにかく、深く考えすぎずに」と指示をして作ってもらったこれらの模型を元に、スタッフと打合せをましたが、「もう少し精密にプランを入れないと、良いか悪いかクライアントには分からないだろう」という結論になり、これらの模型はあまり検討されずにこのまま段ボール箱に詰められることになってしまいました。(そのためにこれらの模型には通し番号を振っていません)

910mmグリッド(半間)の升目に、大まかにプランを手書きして、その模型を作ってもらうことにしました。
2010-03-25
study-model-04
先ずは、居住性を優先した場合の案。
東西方向に庭をもうけ、真中に居室(LDK,寝室,子室)を設けています。
建物全体を敷地東側に寄せていますが、これは、ギリギリまで迫っている西側隣家から距離をとるためです。囲い庭の塀越しに隣家が見えるのを避けようという意図です。
2010-03-25
study-model-05
これは、全体配置は上と同じですが、諸室の配置を変えてあります。
東(写真左)から、中庭、LDK、中庭と水廻りクローゼット、寝室と子室という配置です。南側道路に面しては、エントランスと玄関収納を設けています。

これらの案で、「東西方向からの採光」を想定していた理由は、ひとつは、クライアントご夫婦共に働いていらっしゃるため、昼間よりも朝の光を優先した方が良いと考えたこと。もうひとつは、敷地南隣のアパートの高さが高く、より採光の必要な冬季間の採光条件があまり良くないであろうこと、です。

次に駐車台数を優先したケースです。
2010-03-25
study-model-06
この配置になるのであれば、長さを活かした住宅にしたほうが良いのではないか、と考えていました。
しかし、日照を考えると、この案では、北側(写真下側)にLDKとエントランスを持ってこなければならず、そうすると、南側の大きなスペースとのバランスが悪く、うまくまとまりそうにありません。
2010-03-25
study-model-07
建物東側と、西側それぞれにスペースを設け、それぞれを必要なスペースにを割り振ろうという案です。模型には4つの居室スペースと中庭がありますが、それを「LDK」、「寝室,子室」、「エントランス」、「水廻り+クローゼット」に割り振れば、全体がうまくまとまるのではないか、と考えていました。
2010-03-27 第1回打合せ
上のような資料を元に、とにかく、ざっくばらんにクライアントの意見を聞いてみよう、ということになり、急遽打合せをお願いしました。
もし、「駐車台数も優先したいけど、どの程度居住性が犠牲になるのか、判断がつかない」と言われたら、しばらくは駐車台数優先で検討して打合せを繰り返し、どうしても居住性に納得できないとなったときに、もう一度引き返して検討しなおせばよい、と考えていました。

事務所に御出でいただき、上の模型をもとに今考えていることをご説明すると、
「基本的に、居住性優先で行きたい」との即答をいただきました。

2010-03-28〜
配置計画における大きな方針が決まったので、スタッフと手分けをして、「とにかく叩き台を作ろう」ということになりました。

そしてもうひとつ、内部打合せの際につぎのような大方針を目標にしようという話が出ました。
それは、「プライバシーは確実に守られているが、通りに向かって大胆に開いた住宅にしよう」というものでした。
2010-03-30
study-model-08
上の模型は担当スタッフがつくった案。
先ずはオーソドックスにプランを入れています。
「大胆に開く」ことを文字通りやろうとすると、こんな感じになります。

上の模型でミーティングを行い、
「道路真正面に開くと、どうも、直接的に開けっぴろげすぎてしまう」ことに気付きました。
2010-03-30
study-model-09
個人的には、この時点では、中庭はふたつ以上の方が良いのではないかと思っていました。あまり明快な根拠があるわけではなかったのですが、全ての部屋の採光条件を満たそうとすると、そうなってしまうのではないか、と思っていました。
2010-03-30
study-model-10
この案では、エントランスは建物西側(写真右側)から、一つ目の中庭を正面に見てアプローチします。その右手に入ると、玄関から玄関収納、食品庫までひと連なりになった空間です。アプローチから左に入ると、旦那さんの仕事部屋です。旦那さんは基本的には個人事業主であり、ここで打合せをすることもあることや、次第に旦那さんのお仕事のイメージもつきはじめたのでこういう形を提案しました。
「たてものに口を開けたふたつのスリットから中庭の様子が見える」という構成です。

上の2つの案を作ってみて、リビングが二面で中庭に接することができるのは素晴らしいものの、どうしても中庭が細長くなってしまうことが分かってきました。巾は一間(1.8m)が精一杯の広さです。
2010-03-30
study-model-11
では、中庭をひとつに絞った場合はどうなるか、と考え、ラフなプランを作ったものを模型にしてもらいました。

今までは、敷地東側に建物を配置していましたが、この模型から、敷地西側に配置した方が良いと思うようになりました。東隣の隣家が設けている空地と、こちら側が駐車場とすることによって出来上がる空地を一緒にしたほうが、より豊かな空間になると、考えたからです。この豊かな空間に向かって、「中庭が開いている」方が、中庭の開き方としては魅力的です。
2010-03-30
study-model-12
駐車場側(建物東側)から、中庭に向かってアプローチし、右手が「玄関と玄関収納」。そこから、中庭の一辺ごとに、「LDK」、「風呂、洗面、水周りとクローゼット」、次いで、「子室と寝室」。
また、アプローチの左手が旦那さんの書斎です。全体はぐるっと回遊できるようになっています。
内部のプランの見通しはおおよそつきそうだ、と感じていましたが、デザインとしては一体どうなるのだろうか、全く見当がついていませんでした。

ひとつ、方針があるといえば、「篠原一男さんのような大きな勾配屋根」というイメージがあるくらいでした。
そこで、全くアプローチを変えて、そこから近づいてみようと考え、下のような模型を作ってみました。
2010-04-02
study-model-13
大きな勾配屋根(勾配天井)が中庭に向かってスッと落ちている、というイメージです。屋根の勾配を45度にしたために、建物の背が高くなってしまっています。これでは周囲に対しての威圧感がありすぎる、と思いました。
しかし、外に向かっての口の開き方には示唆に富んでいるような気がして、すぐに下の模型に取り掛かりました。
2010-04-02
study-model-14
これは、「建物周囲の町並みと」、「たてもの」、「その中の中庭」の関係だけを示した模型です。
構成上、「たてもの」には、中庭を縁取る「額縁」としての役割しかさせていません。しかし中に入ってゆくと、街並みと中庭のあいだに(隙間に)、きちんと住宅が存在する、という構成です。
「植木鉢のような住宅」だと考えていました。
この模型つくった際には、アルバァ・アアルトの「セイナッツァロの役場」の外と中庭の関係を、少し意識していました。

次の打合せで、クライアントに、この「ラフすぎるスタディ模型」をみせ、こんな感じのデザインにしたいと話をすると、すごく気に入っていただきました。この時点で外観デザインの大きな方針は決まりました。
その後のスタディ
2010-04-03 第2回打合せ
 この時点でクライアントの素朴な意見が聞きたいと思い、打合せをお願いしました。
 ひとつ確認したかったのは、書斎の考え方だったと思います。
 設計を開始した当初、書斎は書斎コーナーのようなものだと捉えていました。しかし何回かやりとりするうちに。幾つかのことがはっきりと見えてきました。
 旦那さんは基本的には個人事業者であり、この書斎が仕事の拠点になること。簡単にでもお客さんと打合せが出来るといい、という話があること。そうなると、お客さんはどのトイレをどう使うのかが問題になってきます。クローゼットやキッチンを横断してトイレに行く、というのも変な話です。
 しかし、そうして旦那さんの書斎を「SOHO」として充実させてゆくと、どうしても住宅としての機能は多少でも圧迫されてしまいます。予算のこともありますし、私たちが、勝手にどちらが良い、と結論付ける問題ではないのです。

 打合せの結果、「SOHOとして充実するとうれしい」との話をいただきました。今後しばらくはその路線で進んでゆくことになります。

 また、もうひとつ、「中庭に関してはひとつ、真ん中にあるほうがイメージに合う」とのことでした。
2010-04-05〜
いただいた話を元に、再度スタディに取り掛かりました。
2010-04-05
study-model-15
2010-04-05
study-model-16
下の模型は、わたしがラフに図面を描き、ざっくりと模型を作ってみたものです。
 こうしてつくってみると、町に対しての中庭の開き方で何が重要か、良く分かります。
この模型では、開口部の横幅が狭く、プロポーションが良くありません。
しかし、外観デザインでもうひとつ重要なエレメントである「基壇と上屋の構成」と、「駐車場の奥まで少し歩かせて、スロープを登ってエントランスに入る構成」は、このときに出たアイデアです。

中庭を、街に対して大きく開かせる代わりに、こうした措置によって、町と中庭の適正な距離感を確保しているつもりです。
2010-04-06
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その部分を修正して、つくってもらった模型が、下の模型です。外観のプロポーションはかなりサマになってきました。この模型は今回のスタディではじめての1/50模型です。
全体構成に関してはかなり確信が持てるようになってきたので、もう少し詳細に内部空間を見たいと思いました。
2010-04-07
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この時点では、SOHOはエントランス左手(写真ではエントランス上側)の空間です。かなり広いSOHOですが、そのぶん、寝室と、子供室が追いやられてしまっています。
2010-04-08
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これは担当スタッフが(竣工間際のプロジェクトを抱え、忙しいのにもかかわらず)図面と模型を作ってくれたものです。

これらの模型と図面を元に再度、打合せをお願いすることになりました。
2010-04-09 第3回打合せ
 打合せの結果、大まかな点では気に入っていただき、「設計契約をして正式にスタートしたい」とのお話をいただきました。
 その時の内容は、今ここで記述するよりも、この5日後にいただいたメールを見ていただいた方が分かりやすいと思います。
 我々の方では、「正式なスタートを切ってくださる」ということで、できるだけ早めに良くない点を修正しておきたいという気持ちになっていました。
2010-04-12〜
先ず一番気になっていたのが「アプローチから玄関への入り方」でした。

大きな開口部に見える中庭に導かれて、ポーチに入り、中庭にたどり着くのですが、そこから玄関に到達する場面展開がどうしても自然ではない気がしていました。

このあたりの展開が自然でなければ、住宅に入る時の感触がゴツゴツとした不自然なものになってしまい、心地よくないと思うのです。
素直な、良い建築は、必ずこうしたことが自然に成立しています。
2010-04-12
study-model-20
上の模型では、模型をいじりながら考えていたのですが、中庭と一体化したベンチを設け、そこでワンクッションおけばよいのではないかと考え始めました。

下の模型は、すぐにそれを1/50に拡大し、つくってみたものです。外から見た感じと、中庭の造り方など、検討に必要な部分だけを作って、感触を確認しています。
2010-04-12
study-model-21
ベンチを赤く作っているのは、これも「アアルトのような赤いレンガを使おう」というイメージがあったからです。
「あっけらかんとして、ざっくりと無機的に口を開けた中に、自然と親密な有機的な世界が広がっている」というイメージです。
2010-04-13
study-model-22
これも、1/50模型として、上の模型の内容を作り直してもらったものです。細かい部分は変更してありますが、この時点ではこのまま詰めて行けばまとまるのではないか、と思っていました。

かなり集中して作業を進めていましたが……、
2010-04-14
クライアントよりのメール
先日はどうもありがとうございました。私たちのわがままにも近い要望を
いろいろと考慮していただき、ほんとうにありがとうございます。
また、千葉様には早速、契約書類を送付していただき、どうもありがとうございます。

家に帰ってからも、ご提示いただいたプランを何度か見直しておりました。
そこで、何点か気がついた点がありましたので、忘れないうちにと思い、
ご連絡いたしました。下記に私たちの感想や気がついた点を記載いたします。

・SOHOを充実させること(面積を広く取るや玄関を2つ作らなければならない等)で 間取りにムリが生じているような気がしました。
 →一度、SOHO無しもしくは当初言っていた書斎程度のプランでも検討していただけますでしょうか。
・お風呂場と物干しテラスは日が当たったり風が通ったりする、通気性のよい場所がよいと思いました。
・玄関横の三角形の部屋の使い方が迷うところです。寝室や予備室ではなく
 玄関収納とクローゼットなどの収納スペースのほうがよいのかなぁ、などと思いました。
・リビング、ダイニング、キッチンの間取りはとてもよいと思いました。
・玄関の雰囲気(スロープを上っていく、内部へ行くについてれ狭くなっていき、一気に広がる感じ)もとてもよいと思いました。
・玄関のスロープの勾配はどの程度になるのか気になります。冬に凍結したときなどを考えると、階段にしたり、手すりが必要なのかなぁ、と思いました。
・屋根に勾配があった場合、部屋の天井の勾配がありますでしょうか。
(天井が斜めだったときのイメージがなかなかつかめずにいるためです。)

こうして改めて見てみると、結構ありました。。。
必ずこうしてほしいという要望ではありませんが、上記のことを考慮するとどのような感じになるのかも気になりましたので、ご検討のほどよろしくお願いします。

お忙しいとは思いますが、よろしくお願いします。
 いただいたメールに沿って、いろいろな点をもう一度点検し直すことになりました。しかし、じかにお会いしてニュアンスを確認しながら進めたほうが良い、ということになり、既に日取りの決まっている、設計監理契約の際にそれをお願いしようということになりました。
2010-04-22 第4回打合せ+設計監理契約
 お会いして改めてお話をお伺いすると、次のようなことが見えてきました。

■SOHOはあるとうれしいが、生活空間を圧迫するようであれば、狭い書斎でよい。
■(SOHOの分だけ)お風呂場と物干しテラスが、日が当たったり風が通ったりする、通気性のよい場所から、追いやられているのではないか?
■玄関横の三角形の部屋の使い勝手が良くない。寝室や予備室ではなく玄関収納とクローゼットなどの収納スペースのほうがよいのではないか。
■玄関の雰囲気(スロープを上っていく、内部へ行くについてれ狭くなっていき、一気に広がる感じ)もとてもよい。
■「屋根と部屋の天井の勾配」については、わたしたちとしても、いまや、アプローチ部分で空間が絞れていればそれで良く、内部空間には必要がないと思えるようになっていました。今の案で、「篠原一男的な勾配天井」を狙ったところで、うまくいきそうにありません。
2010-04-23〜
「フラットルーフで行きましょう」ということになったものの、ただ、室内から、中庭越しに見える、向い側の軒のライン、プロポーションはすごく気になりました。
「了解いたしました」とお答えしたものの、それを確認するまでは「どうなのかなぁ」という気持ちも、半分ありました。
その他の要望をまとめつつ、ゴールデンウィークに突入してしまい、連休明けに図面を元に、模型を作ってもらいました。
2010-05-06
study-model-23
上の模型は、要望にしたがって、平面計画を変更したものです。
GW前に図面を変更したものを、GW明けに作ってもらったのですが、その休暇が良いクッションになったようで、このプランが、どうしようもなく気に入らなくなっていました。今になってみると、どう見ても、無理やりプランを入れている感じがしてしまいます。
 一体、この案の「何が良くないのか?」について、掘り下げて考えることは、すごく大事なことだと考えます。わたしたちにとってもそうですし、クラアントにとっても、そして、このHPに目を通してくださっている方にとっても、です。
 そして何よりも、「良くない平面計画」を掘り下げることは、「良い平面計画とは何か?」についての認識が、影絵のように浮かび上がってきます。 
 上の模型の平面計画をざっとご説明すると、模型左下の三角形の部分がエントランスポーチです。そこを経由して中庭(真ん中の部分)に出、そこから下の部分に「玄関や玄関収納SOHO、子供室、食品庫」をまとめて取ってあります。中庭の右側がダイニングキッチン、中庭の上がリビング、その左側に、「風呂、洗面室、クローゼット」があり、そして中庭の左側、エントランスポーチの上に寝室を取っています。
 上のプランでは「リビングとダイニングキッチン、中庭」は一体的な空間として認識でき、それなりに広く感じるでしょうが、寝室や、収納、玄関、子室などはその与えられた広さでしか認識できません。収納や玄関ホールなどは、寝室などと違い、基本的にプライバシーの確保が必要のない空間であり、うまく平面計画が練られていれば、上の平面計画のように、壁で囲って狭く閉じてしまう必要はありません。

 最終案を見ていただければ分かりますが、玄関やクローゼット、スタディコーナー、収納などはオープンにつくってあります。オープンに創られていながら、それぞれは、他の空間殻は直接覗けないようになっています。それぞれが最大限の見通し長さを確保しながら、です。
 玄関やクローゼット、スタディコーナー、収納がオープンに創られているということは、基本的に収納がしやすい、使いやすい、ということです。扉をあけたり閉めたりすること無く、最も手早く「収納という機能」を使うことができます。

 こう考えると、「良い住宅計画」とは、
 住宅の中に必要なそれぞれの機能が、それぞれ最大限の自由な振る舞いをして、尚且つ、他の空間を一切邪魔していないこと。
 また、こう言い直すこともできると思います。
 住宅の中の必要に応じて区切られた各空間が、他と区画されつつも、最大限の広さを享受し、感じることができること。
 
 住宅に限定せずに言うと、
 「良い計画」とは、その建築を使用するAさんとBさん、そして、建築の廻りを偶然通りがかるCさん、それぞれがなにひとつ制限されること無く自由に振舞って、しかし、誰の邪魔もしていない、ことだと考えます。

 もちろん、上のことが全てではなく、数多くある「良い計画一例」だというところですが……。
 少しわかりづらいですかね。
 もしご興味があれば、是非お尋ね下さい。
見るからにうまく行っていない「収納と水廻り」の部分を入れ替えて、作ってもらったのが下の模型です。

ここからはしばらく、1/100スケールに戻ってスタディをやり直しました。
2010-05-08
study-model-24
事務所内部で打合せを行い、やはり「今の案では良くない」という結論に至りました。自分たちでも気に入っている部分だけを残し、その他の部分は全て入れ替えてみようということになりました。

やり直した結果が良くなければ、(迷走状態は)クライアントには黙ったまま、元の案に戻ればよい、と考えていました。
2010-05-08
study-model-25
モヤモヤとして、言葉にはならなかったのですが、うまく行っていない理由は明らかでした。
「外からは、ダイレクトに中庭が見える。中庭は大きく街に開いている」ことと、「内部空間の美しい空間構成」が両立していないのです。


「外からは、ダイレクトに中庭が見える、触れる」ことは、町と中庭が直接繋がっていることなので、逆に言うと、この住宅は、その部分で、回遊性が途切れてしまう、ということです。そうすると、中庭の周りをぐるりと一周するプランになってしまい、どうしても余計な廊下が発生してしまう。それがどうも美しくないと思えるのです。
2010-05-08
study-model-26
これは、たてものの北側に囲い庭をつくろうとした案です。南側にまとめて内部空間をつくってやれば、無駄な廊下も発生せず、エントランスの開口からふれることのできる庭も確保できるのではないかと考えていました。
2010-05-10
study-model-27
上の模型は、それを更に具体化したものです。
真ん中のコアの部分が収納や水廻りになっています。


下の模型は、上のプランでうまくいかない点を更に修正して作ったものです。真ん中にコアを持ってくれば動線がコンパクトにまとまることは、事実なのですが、ここではエントランスのイメージが固まっているために、エントランスから真ん中コアに至るまでの動線が発生してしまい、不恰好です。
2010-05-10
study-model-28
それに、ふと振り返ってみると、この案は「連続し、寄り添うハコ/ニワ」にそっくりなのではないかと気付きました。しかも、あの案よりかなり不恰好です。

かなり煮詰まっていましたが、もう一度最初から考え直して、次の案にたどり着きました。
2010-05-10
study-model-29
模型を作ったあとに、すぐに思い直して、お風呂場の場所を変更した図面を作りました。

プランには確信があったので、それよりも内部空間の構成としてうまく行きそうかどうかが、一番に気になりました。そう思って、すぐに内部空間の様子が分かる模型を1/50で作りました。
プランと内壁と屋根だけの模型です。この模型を確認して内部空間もうまくまとまりそうな感触を得ました。
2010-05-11
study-model-30
下の模型は、もう少しプランを修正したあとに、つくってもらった1/50模型です。
2010-05-13
study-model-31
2010-05-15 第5回打合せ
 打合せをお願いし、上の模型と平面図をご説明しました。
2010-05-19
クライアントよりのメール
お世話になっております。
こちらこそお忙しいところ、進行中現場の見学まで
させていただきどうもありがとうございました。

先週いただきましたプランについていろいろと考えておりました。
間取りや動線が要望どおりとなっており、ベースとしてよいと思っています。

ただ何度か見直しているうちに結構考えもでてきましたので、
簡単ですがお伝えいたします。

・玄関収納は玄関に近いところがよいかと思いました。
 (雑誌で、こんな感じ!というイメージを見つけたので、次回うかがった
  際にもって行きます。)
・玄関の幅がが少し広い気がしました。
 (一つ前のプランではもう少しぐっと入っていくような感じでしたので
 なんとなくそっちのほうがよいような気がしています)
・廊下の段差(リビングにつながるところです)に少し違和感を感じました。
・書斎は、できれば動線があまりかぶらない場所が良いです
・冷蔵庫の位置ですが、キッチンの後ろ辺りが使い勝手がよさそうです。
・キッチンに料理したものを一時的に置けるカウンターがほしいです。
 (エクステンションテーブル的な使わないときはしまっておける
 ような感じです。)
・子供をできるだけみんなと接するようにしたいと思っていましたので、
 いただいたプランで書斎に割り当てられている箇所を子供の勉強スペース
 もかねた子供部屋にしたいと思いました。
 その際、リビング側のほうの壁が開いていたほうがよいと思いました。
・リビングと書斎、パントリー側に通じる箇所があるとよいかと思いました。
 (ダイニングの後ろあたりでしょうか。)
・予備室をもう少し削って、書斎になどと考えてみましたが、少しスペース的に
 厳しですね。

というような感じで、いろいろと書いてしまいましたが、うまくお伝えできている
自信がありません。。。お会いしてお話したほうがいろいろと伝わるかと思います。

そこで、当方、平日でも19:00からであれば時間がとれるのですが、
手島様はじめ皆様のご都合がよろしければ明日(もう今日ですね…)以降に、
お話きいていただける時間作っていただけると幸いです。

急な申し出でお手数おかけしますが、打合せについてご検討お願いします。
メールの中で、クライアントから『「エントランスの絞り方」は、前の案の方が良かったような気がするが……』、と言われ、その部分について事前に模型で検討を、と考えてつくってみたのが、下の模型です。
2010-05-19
study-model-32
これはこれでよいような気もするのですが、シンプルさが失われてしまうのが気になるところです。
2010-05-19 第6回打合せ
 打合せした内容は以下の通りです。

■キャンプ用品などは、靴の履き替えをせずに収納できることが望ましい。そのため玄関収納は玄関に近いところがよい。
■玄関の幅について、新たに作った模型(study-model-32)を示して打合せをしたところ、前回までの案の方が良いということに落ち着きました。
■書斎の位置は再度検討を行うことになった。
■冷蔵庫の位置は、キッチンの後ろ辺りに、来客時には隠せるように、設置することになりました。
■子供をできるだけみんなと接するようにしたいので、子供の勉強スペースは、クローゼットのリビング側に、使用していないときには隠せるような形で、設けることになりました。
■「リビングと書斎、パントリー側に通じる箇所があるとよい(ダイニングの後ろあたり)」との話がクライアントよりあったが、動線上、煩雑になって使い勝手が悪いのでは、との話をして、結局、設けないことになりました。
■予備室をもう少し削って、書斎に充てることになった。こども部屋は、天井が高めのロフトとすることになった。また、上り下りの利便性を考慮して、ハシゴではなく「ギリギリに狭い階段」を設置することにしました。
2010-05-20
クライアントよりのメール
手島 様

先日はお忙しい中、打合せにお時間割いていただき、どうもありがとうございました。

さて、私どももあの後も図面を見てはいろいろと話し合ってみました。

その中で、ふと玄関の間口がかなり広いように思われてきました。
広い玄関が外部に向かって開かれた部分である反面、防犯的にリスクがあるように
思い、日中に家に誰もいないときや夜などは門扉をつけたほうがいいのかな、など
考えたりしました。
いろいろと考えたなかで、いっそ玄関の空間を室内と捉えて、スロープを上がって
すぐのところを玄関にして、階段のところから室内としたほうがいろいろ良いのでは
ないかと思い始めてきました。
イメージとしては、雪国の家に良く見かける「風除室」のような感じです。

また、中庭の様子を外からも感じることができるようにと、玄関の間口を広くとって
いただいたと思うのですが、階段の幅を狭くして玄関収納をおくと、使い勝手の良い
玄関収納になるように思いました。
ここに玄関収納があれば、廊下のまったくのフリースペース(ギャラリーのような
イメージ)でもよいかと思います。
さらに、その玄関収納に主寝室からも出入りできるようなれば、家の中をぐるっと
回ることができて、猫が逃げる心配もなく、また何かと便利なような気がしました。

玄関は外から中庭が見えて、かつ内部に入ってくような感じで、とのことで、この
ようなアプローチにしていただきましたが、もう少し狭くしてガラスの戸のようなものでちょっと中が見える程度でもよいのかな、と思っています。

上記の説明ではうまくお伝えできないと思いましたので、イメージを添付させて
いただきます。

お手数おかけしますが、ご検討のほどよろしくお願いします。
2010-05-27 第7回打合せ
 上のメールをいただき、やはりじかにお会いして打合せをしましょうということになったが、クライアントと私たちの日程が会わず、一週間空けての打ち合わせとなってしまいました。

 今までの打合せで、内部空間、間取りについての調整はほぼ終わり、残る一番の焦点は、玄関周りの作り方だけ、という感じでした。

 開口部自体の大きさは、必要かつ適切な大きさについてご説明し、納得していただいた。
 現在のクライアントの一番の不安は、「町に向かって開く大きな開口部」がセキュリティ上、問題が無いか、ということでした。

 わたしたちとしては、「ポーチから中庭に入れない構造をつくれば、ポーチ自体が街に対してオープンなことはあまり問題にならないのではないか」と考えましたが、話をお伺いすると、「ポーチ自体に人が入れないようにしたい」と考えている様子でした。
 この問題については、わたしたちの方で、クライアントの意を汲んだ提案をすることになりました。
2010-05-28〜
 クライアントから解決を求められている「門扉の問題」と同時に、わたしたちの中で、もうひとつ乗り越えたいと考えている課題がありました。
 この計画には、何本かの「端から端まで見通しの利くライン」があり、それぞれが「玄関ホール」「LDK」「収納スペース」「クローゼット」の機能が割り振られていますが、その空間の展開を単調なものにしたくないと考えていました。「わざとらしくなく、自然な感じでそれぞれの空間が、何かによって特徴付けられている」というふうにしたいと考えていました。
 今までわたしたちの手掛けた住宅では、素材や色、空間のプロポーションを使って、それらの空間の切り替えを行っていましたが、(何故か)今回の計画では、もっと緩やかな変化の方がシックリくると感じていました。
 担当スタッフと、結構な時間を掛けて打合せを繰り返し、資料を集め、案を固めました。
2010-06-15
study-model-33
2010-06-15 第8回打合せ
 「study-model-33」と図面を元に打合せを行いました。

 「空間のメリハリ」については、必要なところにきちんと光を確保し、窓が邪魔になるところには、邪魔にならないように工夫した位置に設置しました。
 そのことによって、空間の用途や空間の特徴に沿ったそれぞれの光の確保の仕方を分け、それによって空間ごとの光の質がちがう、という方針でまとめようとしていることなどを説明しました。
 今後、実施設計段階でのシビアな調整が必要になりますが、基本的な方向性についてはご納得していただきました。

 また、「ポーチの問題」については、大きな門扉を何とかして設ける、という方針が定まりました。(模型写真のものよりはもっと軽やかなデザインにしようという話はありましたが……)
2010-06-16
クライアントよりのメール
お世話になっております。

こちらこそ、昨日はいろいろとありがとうございました。

間取りはほとんど変わっていないにも関わらず、前回提示していただいた
プランと印象がすごく変わったことに驚いております。
私どもの要望をほぼすべて取り入れていただいた上で、
光の取り入れ方を考慮していただいた模型を見せていただき、
平面図だけではわからない良さが、すごく伝わりました。
すてきな提案していただきありがとうございます。

また、おそらくこれから先に進むにつれ(予算的に)シビアな選択の連続に
なることも十分に承知しているつもりですが、できれば予算的なことも含めて
遠慮せずにいろいろいっていただけますようお願いします。

いろいろとご迷惑おかけすることもあるかと思いますが、これから先も
よろしくお願いします。

前置きが長くなってしまいましたが、スタディの課程をHPに掲載していただく
ことについては、まったく問題ありません。

わたくしたちも、ほかの施主さまのスタディを拝見させていただいていろいろと
勉強させていただいておりました。また、そのおかげで手島様をはじめとする
UAPPさまの仕事の進めかたなどを知ることができ、共感するとともに安心して
お任せすることができました。
ということもあり、今回HP掲載のご提案いただいたこと嬉しく思っております。

お手数おかけしますが、よろしくお願いいたします。

 最終案において、
『「端から端まで見通しの利くライン」である、「玄関ホール」「LDK」「収納スペース」「クローゼット」の、その空間の展開をどうデザインしたか』
について、ここでお話しするべきだと思いますが、この1/50の模型写真ではなかなか表現しきれないこともあり、後日、1/30又は1/20模型できちんとまとめたいと思っています。
 きっと、この住宅ではその部分が最大の見せ場になると考えています。