2004.10.29 (金)
「青」と「碧」の境界
牡鹿半島・コバルトライン/宮城県




今シーズンは、結構「旅」に出かけた。近年希に見るほど走ることには充実していた。

しかし、「山」が多かった..。ワインディングを楽しむにはどうしても「山」に向かってしまうのだ。

バイク乗りの心理としては仕方がない。

もうすぐ11月の声を聞く。東北のツーリングシーズンも終盤にきている。

そんなある晩に天気予報は翌朝の霜注意報と放射冷却現象、そして快晴の予報を伝えていた。

急に「海」が見たくなった。

「青」と「緑」のワインディングではなく、「青」と「碧」が水平線で溶け合う広大な空間に身を置いてみたくなった。

そんな景色はすぐに閃いた。もうかれこれ十年は訪れていない牡鹿半島。

日帰りにしても十分に「旅」気分を味わえる適度な距離と、お誂え向きなロケーションとそして大好きな「道」もある。

今年の「旅」の締めくくりに、「もう行くしかない..」と天気予報が終わる前に既に心は決まっていた。







いつものように、走る朝は体内時計で目が覚める。

外に出てみると、空気がキンと冷えている。寒い。

おまけに予報通り、あたりは一面真っ白な世界だ。

霧では、敵わない。

もう少し遅い時間に出発することにしよう。






ようやく霧が晴れてきた。

まだまだ寒いが、最近新調した秋冬用ジャケットにオーバーパンツを着込み、もちろん冬用グローブを填める。

東北道国見ICから高速に乗るつもりだったが、白石ICまで霧のため速度規制が出ているようだ。

途中の一般道は霧のため視界がかなり悪い。

気温「3℃」..。

一つ先の白石ICから高速に乗る事にする。

白石ICに着く頃には空気はスッキリ晴れ渡っていた。



東北自動車道・白石ICからワープすることにする。

もうここからは快晴である。

日が差していてもかなり寒い上、

高速走行なので体感温度もだいぶ低い。

完全冬装備と出来の良いミニカウルのお陰で

それほど寒さを感じない。

装備さえしっかりすれば冬も走れる。

雪さえ無ければなぁ..。
下りる予定の大和IC手前の鶴巣SAにて休息をとる。

だいぶ暖かくなってきた。

太陽が眩しい。平日なのでさすがにツーリストは誰もいない。なんと贅沢をしているんだろう!。
仙台に近いだけあって「牛たん」串焼きの出店。

まだ昼には間があるし、腹も空いていないのでパス。

やっぱり牛タンは麦飯とテールスープで
食べなくちゃ!

未練を残しつつここから県道9号を東進する。
R45からR398に入り、石巻市街を抜ける頃に
旧北上川にかかる内海橋のほとりに
突然奇妙な建築が現れた。

「石ノ森萬画館」である。

昔懐かしい「サイボ-グ009」や「仮面ライダ-」の作者としてあまりにも有名な石ノ森章太郎氏の記念館だ。

数年前、建築雑誌で完成を知った時に一度は見てみたいと思っていた事を思い出す。

今回は観覧は予定していなかったので外観だけをじっくりと見て回る。

しかし、実に面白い!
宇宙船の発射台をイメージした、この屋根とも外壁ともつかないシェルターは、高度な製缶技術を要したことを読んだことがある。

そもそも宇宙船なのだから、屋根や外壁等という概念はないのだろう。

町のモニュメントとしてもかなりインパクトのある建築。

次回はこの建築を見る為に時間を作りたい。

玄関先で失礼して記念写真をとらせてもらう。

ここから牡鹿半島までは小一時間くらいだろうか。

太陽が南中を過ぎて西に傾きだしてからのほうが太平洋は綺麗に見えるはずだ。

ちょうど良い時間だろう。

またR398を東進する。
万石浦を右手に見ながら女川を目指す。

内海の東端に浦宿の港が見えてきた。

コバルトラインの入り口はもうほどなくだろう。
もうこのあたりに来ると潮の香りが漂っている。

このままリアス式海岸のワインディングを一気に駆け上る前にすぐ先の女川漁港を見ておきたかった。
以前、三陸海岸を南下縦走したときに訪れた以来だったので、あのとき昼飯を食った漁港が懐かしかった。

しかし、景色はかなり変わってしまった。

近代的な建築がいくつも並び、以前のひなびた潮臭い漁港とは一変していて驚いた。
こんなヨットまで停泊しているではないか!。

なんとも近代的な港になっている。
漁港を一回り見て回る。

旨そうな海鮮食堂が沢山あったが、ここはぐっとこらえ
半島の先での「鯨」料理を密かに楽しみにしていたので
先を急ぐことにする。







コバルトラインに入り、女川湾を左に見ながら適度なコーナーの続くワインディングを走る。

天気は最高..素晴らしい景色が続く!
山鳥駐車場にて。

息を呑むような景色が眼前に広がる。

空は青く、海は深く碧い。

この景色が見たくて今日は走ってきた。

南三陸国定公園の看板。

この向こうが女川湾である。


地図を上から眺めるようにリアス式海岸の様子がうかがえる。それにしても美しい!
しばし見とれて下さい...!
これも...。
この角度も...。
そしてこれも...。
ここから、金華山を一望できるポイントへ向かう。

御番所公園から、金華山を望む。

島の全景がくっきりと眺められる。

御番所公園から県道へ下る道から見える海と空!。

海に向かって続いているように錯覚してしまうような、
素晴らしい景色である。

こんなに美しい空と海のコントラストを楽しむのは
本当に久しぶりだ。
展望台より、西側の網地島方向を見る。

遠くに漁船のエンジン音がゆっくり響く。

午後の昼下がり、暖かい日差しを浴びながら、
ベンチに横になってしばし贅沢な時間を楽しんだ。

このまま時間が止まればいい..と思った。
展望台にある洒落た案内板。
ボクといっしょに愛馬もひなたぼっこのひととき。

この景色に彼のキャンディーレッドは実に良く映える。
今日の御番所公園には誰もいなかった。

地球が丸い事を実感できるこの素晴らしい景色を
独り占めしてしまった!

コレだから平日ツーリングはやめられないんだなぁ!。
さて、昼も遅い時間なので本気で腹が空いてきた..。

鮎川で「鯨」を食おう!!。

一気に海に突き刺さる道を駆け下る。

近代建築に生まれ変わった鮎川ホエールランド前。

鮎川は、かつての沿岸捕鯨の基地だったらしい。

昔は木造の古くさい、それでいて味わい深い建物だったような気がする。

それにしても青空が美しい。
もちろん、お目当ては「鯨炭火焼き定食」である。

昼時を過ぎ客は誰もいなかったが、

おばちゃんが、パタパタと団扇を仰いで、鯨肉を焼いてくれている。炭の焼ける匂いと香ばしい香りがしてくる。

出来上がるまでの時間がなんと長く感じたことか..。
これが「鯨の炭火焼き」

「焼き」にするのは歯クジラ類だそうだ。

この肉は「ゴンドウクジラ」のものだという。

刺身にするのはヒゲクジラ類の「ミンククジラ」が多い
そうである。

さっそく食べてみる。

さくさく、サラサラしていて思ったより柔らかい。

鯨特有の臭みがほどよく残っていて、炭火で焼かれた風味と相まって、本当に美味しい!。

小鉢は新鮮なホヤの酢の物、鯨の佃煮が付いていた。

一気に平らげる..ホントニ満足v(^^)
夕日というにはまだ早い時間に帰路につく。

月浦にて石巻湾を望む。

このあたりは砂浜が続いている。

ここは支倉常長が伊達政宗の命を受けてローマに出航した場所でもある。

常長の像と航海碑を見ていきたかったが
次の機会にまた訪れよう。



にわかに思い立った今回の「一人旅」

今シーズンの締めくくりには申し分ない出来映えだった。

「青い空」と「碧い海」の境界線をこの目で確かに感じ取り..

ゆったりした時間に身をゆだね、そして旨い鯨料理を堪能する贅沢な「旅」が出来た。

そう言えば、半島の突端に太平洋を一望できるキャンプ場があったっけ。

次の春は是非、テントの中から朝焼けを見てみたいと思った。

いや、絶対に行くぞ!と決めたのである。



総走行距離 375Km