COLONEL 1
闇と光の中心にいて
迷う
惑う
呼ぶ声
手招き
涙と微笑が交互に責める ─ 動けずに俯きかける
だが ─
君が在た
前を進む姿
それで私は安堵して─とても安堵して・・
窓についた結露の雫に陽光が乱反射。
触れると雨のように一斉に流れ落ちた。
見えなかった空がそのせいで青い事を知る。少し上向きに朝陽を顔に浴びた。
ひんやりとした空気は体の中を一瞬に浄化して ─
それも気のせいかもしれないが。
エドワードはあまり笑わない。
私はその理由を知っている。 知っていて触れる、その傷口に。
「機械鎧の調子はどうだい?」
部屋の真ん中に置いた椅子に、座っている彼を見ながら私は自分の右腕を軽く叩く。
エドワードは、ちらっとこちらを見て、
「別にいつもと変わりなしだけど」 と素っ気無く答えた。
「足も?」
「足も」
「それは良かった.。じゃあ、早速だが仕事をしてもらおう」
「・・今度は何?」
エドワードは顔を背けたまま、私の読む依頼の内容を聞いている。
「分かった。じゃ、行くから」
「今回もあまり目立たぬように、くれぐれも気をつけたまえ」
部屋から出掛けに声を掛けると、振り向きもしないで強くドアが閉められた。
真っ直ぐで直情的な彼には難しい注文。
目立てば、それだけ早く [ 上 ] に目をつけられる。
[最年少の国家錬金術師]と言うだけで、既に [人間兵器]としてのチェック項目の
半分を満たしている。
「・・ [ 分かった ] か・・」
空に手を翳し、その影で目を閉じた。 瞼の裏に横顔のエドワードが張り付いている。
その顔に触れる事は出来ない。 彼はここに居ない。
自分がたった今、遠ざけたばかり。
「・・エド・ワー・・」
名前を呼びかけて自分で戦いた。
信じたくないが、この胸の中で育っているものがある。
まだ名前も無い。
まだ意味も無い。 その [ 何か ] が警告する
─ 近くにいたくない
─ 側に置きたい
「バカなことだ」
声に出してみたが [ 何か ] が消えてしまうわけでも、壊れてしまうわけでもなかった。
「相手は子供なんだぞ・・」
不意に、笑いが込み上げてきた。
視線の彼方にエドワードの走る後ろ姿。
ふと立ち止まったと思ったら振り返った。彼は暫くこちらを見上げていたが、まるで
気まぐれな猫のようにふいっと踵を返してまた走り去った。
窓枠ぎりぎりに鳥が羽ばたいて消えた ─ だが、私の目はエドワードから離れない。
互いに小指の爪ほどの姿。その表情までは知れない。 でも、そこに存在している。
かきあげた髪を指の中で留めて私また思案する。
ナニヲ イマサラ
彼は逃げられない
私ももう囚われた
嘲笑うならそうして
蔑むならそれもいい
起きたまま見ている夢の出来事だ。
答えなど シレテイル
結末も ミエテイル
その物語の題名すら決まっていないのに ─
(COLONEL = 大佐)
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