COLONEL  





闇と光の中心にいて

迷う

惑う

呼ぶ声

手招き

涙と微笑が交互に責める ─ 動けずに俯きかける

だが ─

君が在た

前を進む姿

それで私は安堵して─とても安堵して・・





窓についた結露の雫に陽光が乱反射。

触れると雨のように一斉に流れ落ちた。

見えなかった空がそのせいで青い事を知る。少し上向きに朝陽を顔に浴びた。

ひんやりとした空気は体の中を一瞬に浄化して ─

それも気のせいかもしれないが。



エドワードはあまり笑わない。

私はその理由を知っている。 知っていて触れる、その傷口に。


「機械鎧の調子はどうだい?」

部屋の真ん中に置いた椅子に、座っている彼を見ながら私は自分の右腕を軽く叩く。

エドワードは、ちらっとこちらを見て、

「別にいつもと変わりなしだけど」 と素っ気無く答えた。

「足も?」

「足も」

「それは良かった.。じゃあ、早速だが仕事をしてもらおう」

「・・今度は何?」

エドワードは顔を背けたまま、私の読む依頼の内容を聞いている。

「分かった。じゃ、行くから」

「今回もあまり目立たぬように、くれぐれも気をつけたまえ」

部屋から出掛けに声を掛けると、振り向きもしないで強くドアが閉められた。

真っ直ぐで直情的な彼には難しい注文。

目立てば、それだけ早く [ 上 ] に目をつけられる。

[最年少の国家錬金術師]と言うだけで、既に [人間兵器]としてのチェック項目の

半分を満たしている。


「・・ [ 分かった ] か・・」

空に手を翳し、その影で目を閉じた。 瞼の裏に横顔のエドワードが張り付いている。

その顔に触れる事は出来ない。 彼はここに居ない。

自分がたった今、遠ざけたばかり。

「・・エド・ワー・・」

名前を呼びかけて自分で戦いた。

信じたくないが、この胸の中で育っているものがある。

まだ名前も無い。

まだ意味も無い。 その [ 何か ] が警告する


  ─ 近くにいたくない

  ─ 側に置きたい


「バカなことだ」

声に出してみたが [ 何か ] が消えてしまうわけでも、壊れてしまうわけでもなかった。

「相手は子供なんだぞ・・」

不意に、笑いが込み上げてきた。

視線の彼方にエドワードの走る後ろ姿。

ふと立ち止まったと思ったら振り返った。彼は暫くこちらを見上げていたが、まるで

気まぐれな猫のようにふいっと踵を返してまた走り去った。

窓枠ぎりぎりに鳥が羽ばたいて消えた ─ だが、私の目はエドワードから離れない。

互いに小指の爪ほどの姿。その表情までは知れない。 でも、そこに存在している。

かきあげた髪を指の中で留めて私また思案する。


ナニヲ  イマサラ

彼は逃げられない

私ももう囚われた

嘲笑うならそうして

蔑むならそれもいい

起きたまま見ている夢の出来事だ。


答えなど  シレテイル

結末も  ミエテイル

その物語の題名すら決まっていないのに ─





(COLONEL = 大佐)




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