平成19年春の叙勲伝達式
小林秀明 特命全権大使 ご紹介
旭日双光章を受章されましたチャチャイ・チョムタワット氏は、1995年に警察署長として赴任されたメーホンソン県クンユアム郡で、第二次世界大戦中に駐留していた旧日本軍に関する調査を続けてこられました。
1996年には自ら買い集めた旧日本軍の遺品などを展示するクンユアム郡第二次世界大戦博物館を設立され、1998年にはそれまでの調査を元にした「第二次世界大戦でのクンユアムの人々の日本の兵隊さんの思い出」を執筆されました。さらに2005年には博物館の運営や日タイ交流を目的とする平和財団を設立されました。日タイ間に歴史に関する同氏のこのような献身的なご努力、ご功績に対しては、2006年6月にタイをご訪問された天皇皇后両陛下からも直接ねぎらいと評価のお言葉があったことは、私としても忘れようのない記憶として残っております。
同氏の調査により、当時の日本軍の生活ぶり、日本軍とクンユアム郡の人々の交流、戦争末期の日本軍の悲惨な状況などが明らかになりました。こうした事実は、日本人が自らの歴史を振り返るための貴重な材料であるとともに、修好120周年を迎える日タイ関係の歴史の一齣(ひとこま)として長く記憶されるべきものであります。
(チューチャイ氏の紹介部分のみ)
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チューチャイ・チョムタワット氏 ご挨拶
小林大使閣下及び令夫人、日本大使館の皆様、並びに本日ご参列の皆様、
去る、4月29日、日本の天皇陛下より旭日双光章を賜りました。他に比類するものを見つけるのが困難な程の陛下の御慈悲に大変喜ぶと同時に感激しております。私にとりましては、昨年6月13日に両陛下への拝謁を許されたことに続く、もう一つの人生最高の喜びであります。
小林大使から私の業績についてご紹介頂いたことに感謝します。また、今回の叙勲のためにご尽力頂いた日本大使館員の皆様に感謝申し上げたいと思います。
私は、日本のマスコミや大勢の日本の方から、いつも「なぜ日本の兵隊に関する博物館を設立しようと思い立ったのか」と聞かれます。この問いに対し、自分はいつも2つの動機があると答えています。動機の一つは、私も日本人同様、すべてのものには魂が宿っているという考えを共有しているからです。博物館に展示されている物の中には手作りの物もあります。したがって、私はこれらの物には3つの魂が宿っていると考えます。1つ目は、その物を作った人の魂です。物にはそれを作った人の情熱、忍耐、愛情が込められております。これらが込められていなければ、その物は良い物にはなりません。2つ目は、その物を使った人の魂です。どんな物にもそれを大切に使い、生死を共にした人の愛情が込められています。そして、最後に、それらの物がご先祖様の残したものであれば、その子孫がその物を拝みに来ます。したがって、3つ目は、持ち主の子孫の魂です。
動機の2つ目は、私は旧日本軍の方々に、博物館を最善のものにすると約束しました。私は、戦場での辛酸に耐え、我々の近所で亡くなった日本兵の方々の魂が、安心して極楽浄土へ行けるよう望んでいます。ここにいる皆さんも彼らへの祈りを捧げて頂ければと思います。私は、我々が共に考え、共に行動し、共に守っていけば、日タイ両国民の関係は益々良くなっていくと信じています。
私は、すべての聖なる物が、天皇皇后両陛下ならびに皇族の皆様にご多幸とご健勝をもたらすことを祈念致します。
最後に、本日ご出席頂いた皆様に御礼を申し上げると同時に、霊験あらたかなものが皆様の健康をお守り頂くよう祈念しつつ、私のご挨拶とさせて頂きたく存じます。
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平成19年6月27日、在タイ日本大使館で開催された。この度の叙勲では、パイラット・タッチャヤポン氏が旭日中綬章、チューチャイ・チョムタワット氏が旭日双光章、山浦重信氏が瑞宝双光章をそれぞれ受章された。 |
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