奇跡は起こらなかった。運命のいたずらが悲しい物語を作った。戦争が終わった後、タイ人は日本のことが嫌いになった。そのため、郡の役人や警察は日本人を助けなかったのだろうか。だから逮捕して日本に送り返したのだ。
戦争が終わって50年後、かつてビルマで戦いそしてタイに敗走した元日本兵が、このクンユアムの地を探しあて訪れた。そしてパーゲオ(ゲオばあさん)を訪ねて、むかし世話になった礼を述べた。皆パーゲオのことは日本人同胞だと思った。子供たち孫たちも日本人の血をひいている。パーゲオとその家族を苦しめたのは日本人我われの責任だと思った。毎年その人たちはクンユアムに来ると必ずパーゲオを訪ねて、土産をあげて優しい言葉をかけた。
いまパーゲオは70歳を過ぎて、普通の生活をしている。二人の子供は立派に育った。長男は学校の先生でパーゲオの近くに住んでいる。このためパーゲオは自分の健康は安心している(*タイでは公務員の両親は公立病院での医療費は無料)。次男は自営業をしている。パーゲオの両親は数年前に亡くなった。パーゲオと子供が残った。いろいろな思い出がある。辛くて泣いていたこともあった。辛くて悲しいときは、サンペーといた幸せなときを思い出して生きている。
(原文タイ語日本語訳文責 武田浩一)
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