武蔵伝説
宮本武蔵の風貌


身の丈五尺七八寸、頬骨が高く、鼻梁が高く、瞳は琥珀色をしていた。
初決闘の十三歳のころは、既に十六歳くらいに見えた。
一生沐浴をしなかった。
夏になると手ぬぐいを湿らせて体を拭くだけであった。
はだしで外を歩き、汚れても拭くだけで、衣服も汚れ放題であった。
雨が降っても、そのまま雨に濡れて歩き回った。
服の汚れを隠すためビロードの衣服を着ていた。
鼻水を着物の袖で拭いていた。
着物は繻子の小袖に紅裏をつけ、足の甲に垂れるほどの長さであった。
子供のころに頭のてっぺんに蓮根という腫れ物を患って、その後が醜いので髪は蓬髪にしていた。
壮年のころは髪を帯の辺りまで伸ばしていたが、晩年のころになると肩の辺りまでにしていた。
一生、髪に櫛を入れなかった。
若いころは刀を腰に差していたが、晩年は刀を帯びず五尺の鉄製の杖を愛用していた。

武藏にとっては屈辱的な伝説であるが、同時代に生きた渡辺幸庵の証言もあるので真実であろう。
しかし、衣服が汚れ放題というなら、身の回りの世話をする女中たちの怠慢だ、
とさりげなく他人のせいにしておこう。

