杉本健郎さん「小児の脳死・移植と小児科医」: Sugiken 2001

2003.10.23. by てるてる

杉本健郎さんの、2001年の「小児の脳死・移植と小児科医」に関する発言をまとめました。

杉本健郎さんのホームページ

小児脳死・移植と小児科医(2000/Dec、2001/1月)

小児脳死と関連した課題:各大学病院では、以下の発表ような判断に迷う事例が日常的に見られています。ご意見をお待ちします。2001年1月

・小児の脳死診断をすべきか?(なんのために)・無呼吸テストは実行すべきか?子どもの場合のやり方は?・脳死診断後、どうするか?心停止はすぐにはおこりません。むしろ、血液学的異常値は改善します。さあどうする?? 長期に入院・人工呼吸器管理になっているのが現状です。
 小児移植はできない。すぐに人工呼吸器止める・両親の了解があったとしても、厳密には違法。点滴(水分補給)以外の治療をしない。人工呼吸器の条件をゆっくり落とす(悪くする)・・・・病棟では、主治医が一人取り残されて、(個人的)判断を迫られる。法医学者、ケースワーカー、顧問弁護士は明快な答え出せない。親は介護に疲れ切る!主治医にすがる「どうしたら、いいのか、なんとかして・・・」と。

2000年10月、第28回近畿小児経研究会での発表
「脳死と思われた小児5例の検討」(滋賀医大中野ら)

小児の脳死判定に関する基準はいまだ確立したものではないが、臨床の場ではしばしば成人の脳死判定に合致する症例に遭遇する。われわれは過去3年間で5例の脳死と思われる症例に遭遇し、その対応を通して多くの問題点に直面した。
背景病因としては、MRSA肺炎による低酸素脳症、事故による窒息、SIDS疑い、インフルエンザ脳症、原因不明が各1名ずつであった。このうち3名は無呼吸テスト以外の項目で成人の脳死基準に合致し、7日から54日の経過で死亡した。他の2例は、脳幹反射の消失およびABRの消失、脳波の平坦化があるが、1例は除脳硬直肢位、1例はまれであるが、あえぎ様運動の存在で典型的とはいえず、2年4か月から3年1ヶ月を経過した現在も人工呼吸管理中である。家族の受け入れについても、非常に多様であり、スタッフの関わり方でも多くの問題を生じた。また、小児では脳死と思われる状態に陥った後も、長期間生存する例もあり、その間のケアーをどうするかについても議論があった。
これらの症例を通じて提起された問題点としては、・脳死基準に完全に合致はしないが、遷延性植物状態二も合致しない症例の存在、・臨床的脳死を判断する無呼吸テストの実施の指針がなく、また施行が困難な場合がある、・脳死判定から心停止までのケアーについての指針がない、・家族ケアーのための専門スタッフの欠如などがあげられる。

(なお、発表時の聞き取りとして、患者年齢は、2歳、3歳、6か月、7か月、9か月とすべて幼少でした)

小児の脳死・移植と小児科医(2000 年12 月)

 資料として文芸春秋の「日本の論点2001年」のNO.49:「臓器移植法を見直すべきか」をお読みいただきたい。

「臓器の移植に関する法律」(施行・平成9年10月16日)(以下、臓器移植法と略します)の3年後の見直しの時期に入り、色々な見解が出てきています。
3年前の上記法律は、ご存じの通り、中山議員を中心とした「議員立法」でした。衆議院通過後、参議院で修正が行われ、これまでの臓器移植法が施行され、これまで8例の脳死移植が行われました。

前国会では、政府与党内の紛争があったからではないでしょうが、「改正」論議は国会内では行われていないようです。また、前回が議員立法であったために、今後、修正があるとすれば、厚生省・政府案による討議ではなく、議員立法的な「見直し案」が上程されるはずとの、複数の関係者からの情報です。2001年、年明けの通常国会で急遽、案件がでてくる可能性はゼロではありませんが、つい先だっての、先進的な「移植推進モデル地域」の北海道での移植ネットワークの着服事件やこれまでの脳死・移植例が少なすぎることなどから、しばらくは水面下での検討になる可能性が考えられます。

小児の健康に日夜奮闘している子どもの味方である小児科医が、この機会に子どもの権利を保障する立場から、小児医療の専門職としても、一定のコンセンサスが得られる点を内外に公表すべきと考えます。また、小児医療として今後継続的に検討しなければならない項目については、委員会・検討会のようなものを作って、専門家としての作業をしていかねばならないと思います。

以下にいくつかの問題点を列記します。

法律の原則は、(1)ドナーカードによる本人の意思表示のある時のみ、脳死を死と認め、移植する、(2)15歳以上に限る、(3)家族の合意が必要、という3点であると思います。
これに対して、幾つかの見直し案が出ています。
厚生省科学研究、「臓器移植の社会的資源整備に向けての研究」の分担研究者である、上智大学町野教授の研究班は、『年齢に関係なく脳死状態にある人からの臓器移植を可能とする。15歳未満の未成年者の提供については、特に親権者の承諾を得る。』という、現法の主旨を大きく逸脱する内容のものでした。すなわち、「本人の反対の意思表示がない以上は、臓器を摘出することは、本人の自己決定である」という論理です。この考えに立つ法律を掲げる国もないではありませんが、果たして、これまでに行われてきた我が国の脳死・移植討論の流れにそうものかは大きな疑問があります。さらに、15歳未満の小児であっても、親の了解があれば、子どもの意思に関係なく脳死・移植ができるという内容です。これは小児のレシピエント、特に心移植の場合の心臓のサイズのことが理由にあげられ、子どもへの移植はこどもからでないとできないという論理からでてきた発想です。

これに先立ち、総理府が2000年5月に世論調査を行っています。
臓器提供については「本人の意思表示と家族の承諾が必要」と考える人が69.9%を占め、「家族の承諾だけでよい」とする人は、2.1%にすぎませんでした。小児の臓器提供については、「臓器提供を出来るようにすべき」が67.9%あり、「出来ないのはやむ得ない」が21.1%でした。
この結果は、本人の自己決定が大切であることと同時に、小児の脳死でも希望すれば移植が可能になればよいという、一種矛盾したものでした。しかし、小児に関しては、我が国では、歴史的にこどもは親の意思に添うものという考え方があり、後半の結果は、親が納得・希望すれば可能にしてもよいという発想からの結果でしょう。
もう一点、最愛のわが子の瀕死の場面では、「わが子の生きたものを残したい」「社会的貢献をさせていやりたい」という切なる親の思いも自発的にでてきます。この点については、現段階の法律では移植不可能です。この点は、なんとかならないか?という想いも伺えます。

次の視点は、「児童の権利条約」です。
1989年の国連総会で「児童の権利条約」が採択され、我が国も批准しました。
以下は、生命倫理を専門とする大阪府立大学森岡教授の指摘を参考にしました。
第6条には児童の生命に関する固有の権利を有すると書かれ、生と死についての判断を子どもの保障する。
第12条は、「意見表明権」で、年齢と成熟度に相応して考慮され、子どもは自分の意見述べる権利を保障する。
第14条は、「思想・良心・宗教の自由」で、子どもは、親からの指示を受け、かつ公共の秩序に反しない限り、思想、良心、宗教の自由、信念を表明する自由をもつ。
第19条は、「虐待・放置・搾取からの保護」で、これはいうまでもない内容ですが、親の願望と子どもの希望は別物である。意思表明していないこどもの臓器を親だけの意思で摘出するのは、性的虐待にも似た児童虐待ではないか。

即ち、森岡氏は、子どもでも意思表示をする機会・ドナーカードを所持してもいいのではないかという考えです。それには、学校や家庭でこどもと「死の教育」を真剣に討論しなければなりません。

 


杉本健郎さんの「−脳死と移植−」掲示板

64 日本脳死・脳蘇生学会6月22日久留米に行きます

2001/6/19(火)11:53 - スギケン

急遽この学会に出席することを決めました。てるてるさんからの情報をもとに、最後の
パネルディスカッション「法的脳死判定の課題」を聞きに行きます。おもしろそうですね。
今回は小児の問題が含まれているにも関わらず、小児科関係からの演題がでていません。

抄録を読んでいると、まさに賛否両論、学会内部も一つの意見でないことが伺えます。
代表幹事の桂田先生は、1986年にNHK教育テレビETV 8での討論で立花たかし氏や東京女子医の小泉
教授などとご一緒して以来、お会いしていません。その先生が今回の小児脳死判定基準に
科学的根拠がないとの発表。これはいろいろな意味で話題性があります。我々小児神経専門医
も黙っているわけにはいきません。日本医師会雑誌124巻11号1623〜1657に掲載された問題の基準
をみると、小児神経でなじみのある3〜4人の名前を見つけました。
自分の意見(診断基準についての小児神経専門医として)は改めてまとめて申し上げます。

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68 脳死・脳蘇生学会の報告はあらためてやります。待って!

2001/6/23(土)08:53 - スギケン

いやー面白かった。全国の救命救急関連の医師がどのような考えで何に悩んでいるかが、一日
会場に座っていて、よく理解できました。みんな悩んでいるのだ。立場は違うが・・・
ハマベ先生の論理展開はなかなか難しい。予定時間の3倍を費やしていましたが、それを許容した
学会当局もすごい。でも討論はあくまですれ違い。ちがうんだ。いろいろな意見があるんだ。医師の意思も
いろいろなのだ。でもその医師の意思でやり方はことなるのだ。
また書きます。とりあえず博多からの第一報です。西日本新聞には大きくでていました。
これから広島へ向かいます。

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69 脳死・脳蘇生学会私的レポート・無呼吸テストに関連して

2001/6/26(火)11:49 - スギケン

とにかく学会始まった時、40〜50人と広い会場に医者などがパラパラでした。討論に立つのは
いつも同じ人たち・しかも意見・考え・攻めどころはいつも同じ。座長をしていた人達でした。
無呼吸テストのことが朝日新聞での記事で曖昧な書き方との指摘。私的な印象を列記します。
 シンポジウム「脳死に至る病態経過」の脳死レジストりーシステムの構築での討論。
救命センター12施設の2000年1年間脳死が疑われた260例の分析。24例脳幹反射あり、226例
中116例が完全に脳幹反射なし。116例中19例は脳波取らず。フラット脳波確認94。うち無呼吸テスト実施
が20例で、19例で実施し、1例で中止している(抄録と数字が異なる)。260例中カード所持者が
6例あった。4例は臨床的脳死判定前に提示、2例は判定後に提示された。臨床的脳死判定
6例中法的判定は2例で実施、この2例が脳死・臓器提供した。
マニュアルと厚生省局長通達の相違が討論となる。本来臨床的脳死判定前にドナーカード提示
あれば臨床的判定は不要で、即法的判定(無呼吸テスト含む)へいくべし(局長通達通り)と
の討論になる。これまでの14例の脳死・移植例のうち、12例が臨床的脳死判定前にカード提示
があった。この時のフロアからの質疑で、田中教授は無呼吸テストはカードを持っている人と
施設で独自の無呼吸テストの必要性を認めている施設での実施であったと。熊本の教授の発言:無呼吸テストが少なすぎる。
きっちりやると安全なのだから、もっと(臨床的脳死例にも)無呼吸テストを実施すべきであると。
まとめとして、救急学会理事長島崎教授が、将来もっと検討施設を増やして、症例を積み重ねて
検討していく。(すべて杉本健郎の聞き取りで責任は杉本に)

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70 脳死・脳蘇生学会報告は不定期日記に書き込みました

2001/6/26(火)22:37 - スギケン

脳死・脳蘇生学会は大半の救命救急センターのドクターが脳死そのものを討論する学会
と思いますが、あまりにも少人数の参加で、限られた医師の討論になっていたことに
少し危惧を持ちました。
 ドナーカードを持って、自分の身体を移植に役立てたいと申し出る人たちの願いを
かなえたいという想いは十分理解できました。しかし、いくら厳密で世界一厳しい診断基準
を要求されるとしても、そこは密室です。まさにパターナリズムが厳然と存在する場所です。
当日の発言にもあったように、このような煩雑で厳しい診断基準を作り上げたのは、まさに
和田移植事件そのものだということを肝に命じて、医療への信頼をより確かなものにするため
曖昧な行為は厳に慎むべきと思います。
 しかし、3年目の見直しにでてきた厚生省研究班の結論は、小児科医としては看過できない
ものと思います。そのことについての討論は、この学会では皆無でした。

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63 7月12日夜「杉本健郎が斬る・子どもの脳死・今なにが問題か」

2001/6/14(木)11:13 - スギケン

大阪小児神経学懇話会の定例会が7月12日木曜日夜梅田であります。この会は
大阪の小児神経関連の医師の研究会です。僕が仕組んだものではありません。従来は小児神経
の症例検討や学術的な話題を討論してきた研究会なのです。当番幹事の先生から
30〜40分の時間を頂きました。医療の問題、社会的
問題、倫理的問題など様々な問題提起をして、関連する医師の指定発言も含めおおいに
討論しようというものです。脳死問題に取り組んで15年、今年ほど周りの医師が関心を
持ってき、討論がひろがりつつあることに驚きと喜びを感じています。
一部の移植関係者や法律家の討論でなく、直接脳死などの子ども達に接してきた医師にも
討論がひろまりつつある。黙っているときではない!
うれしい限りです。

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67 re(2):7月12日夜「杉本健郎が斬る・子どもの脳死・今なにが問題か」

2001/6/22(金)08:25 - スギケン

この日は、大阪医大田中先生や淀川キリストの船戸先生などがコメントしてくださいます。
もしお時間あればぜひきてください。大阪梅田の第一生命ビル6階?協和発酵会議室です。
小児神経の医者が20人ほどあつまります。詳細は帰ってからまたここに掲載します。
今から久留米の学会へ出ます。博多より

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72 re(3):7月12日夜「杉本健郎が斬る・子どもの脳死・今なにが問題か」

2001/7/6(金)16:32 - スギケン

8階の会議室です。時間は6時から小児神経の症例検討を2題してから
僕の話が7時ころからでしょうか?
一応入場料が1500円いります。しかし、終了後の立食討論会の費用込みです。
明日は産科の先生方相手に脳性麻痺と仮死の話をします。それがおわったら、この準備をします。
スライドつかわず、できる限り多くの資料を用意するつもりです。

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73 7月12日講演のレジメ作りました。過不足などご批判下さい。

2001/7/8(日)17:25 - スギケン

来る今週木曜日夜7時ころから40分間話します僕のレジメを作りました。
タイトルが奇抜なため、少しは若い医者が来てくれるかな?と期待しています。
この問題にあまり興味がなかった医師でも今の現状を理解してもらえるように考えました。
もちろん自分の意見はしっかり述べるつもりです。
若くない医師からも討論参加があります。どこまで話せるかわかりませんが、自分の頭を
整理するつもりで、最近の関連資料をひろくよみあさりました。
 自分には、ものすごく勉強になりました。
このように機会を与えて下さった市立豊中病院小児科部長永井利三郎先生と大阪医大小児科講師の
鈴木周平先生に厚くお礼申し上げます。
 この秋には、日本小児神経学会の小児神経セミナーで「意識障害の評価と小児の脳死判定
基準」というタイトルで若い勉強熱心な小児神経学を目指す医師に講義する機会を頂いて
います。意識障害は脳炎・脳症を専門にして僕の縄張りです。脳死は息子の宿題です。
こんなところでつながってきました。卒後研修委員会の岡教授をはじめ委員の先生にお礼
申し上げます。本当にありがたいことです。さらに勉強を続けたいと考えています。

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74 re(1):7月12日講演のレジメ作りました。レジメです

2001/7/8(日)17:29 - スギケン

レジメの張り付けを忘れていました。失礼。よろしく意見メイル下さい。

『杉本健郎が斬る「子どもの脳死」今なにが問題になっているか?』 杉本健郎

主題
・臓器移植法は見直すべきか? 討論の時期に来ている 自己決定権の解釈
     町野案についての討論  小児の自己決定・意見表明権は?
・脳死=死か? 法律面、臨床現場のとまどい、海外先進国の動き
・15例の脳死・移植の現状 ドナー、レシピエントの権利は保障されたか
・現脳死診断基準は十分か 無呼吸テストは? 
・小児診断基準案は十分か?

  そのほかに
移植と関連して
・何故 ドナーが増えないか?各国の違い ドナーカードの問題?? 救急医療の問題?
・レシピエント その後の生活?レシピエントへの情報公開・インフォームドコンセント
・移植ネットワークのあり方はこれでいいか?
・医療保険適応の問題
・レシピエントの数(待機者) ドナーへの潜在性は?

脳死と関連して
・救急医療・脳蘇生学  低体温療法の評価 各提供病院のシステムの現状
・病態の研究  Chronic "brain death" by Dr Shewmon ( UCLA小児神経専門医)
        ラザロ徴候などの解釈
・現場のパターナリズム 死に逝く側のサポートシステム 別れと家族への癒し
・早期診断は必要か? 人工呼吸器はいつはずすか? どこで、いつ、どのようにして
・JDFC(日本ドナーファミリークラブ、2000年秋)の発足の意味
・直接的関連はないが・・・超重度児者の快適に生きる権利への影響
・小児救急医療の現状
・虐待の増加
・日本小児科学会代議員アンケート結果とこれからの学術学会としての取り組み

海外の現状
・スウェーデンの移植法、カロリンス小児病院での聞き取り
・デンマークの移植法と脳死診断
・ドイツの最近の国会の動き
・トロント(小児)の脳死からの移植  MOREの活躍の秘訣 虐待の扱い
・米国・テキサス自然死法の意味

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75 杉本健郎が子どもの脳死問題を斬りました

2001/7/13(金)12:46 - スギケン

講演者側からの意見です。約40人ほどの小児科医師が参加していたと思います。
討論の時間が少なかったのですが、話していて言葉が聴衆の耳に吸い込まれていく感覚を
感じました。もとより小児神経科専門医師として急性脳炎・脳症の臨床的診断や治療を専門として
これまで研究を重ねてきました。脳症状の一つに意識障害があります。その最悪が昏睡です。
すなわち脳死とは不可逆的な昏睡という位置づけでした。ところがまもなく臓器移植が治療的
選択の一つになるや、ノーリターンの昏睡・まもなく(1週間以内)死を迎える患者に
脳死と名付けて、治療放棄を合法化したのでした。
今、シューモン博士等の仕事からみても、命は1週間ではない(もっとも海外では死体)ことが
証明されています。14年も腐敗が起こらず、身長も大きくなり、成長を続ける「死体」!?
ノーリターンの状態をどう情報公開し、納得し、その後の治療内容を選択するか・・・
まさに一つの答えではありません。しかしこの判断は基本的には自己決定されるべきもの
と考えます。そのようなシステムとサポート体制が必要になると思います。

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76 7月12日夜のスギケン講演のケロケロレポートです。おもしろい。良く書けている。

2001/7/14(土)07:41 - スギケン

森岡教授のHPから引用させていただきました。

スギケンさん講演レポレポ 投稿者:カエル  投稿日: 7月13日(金)13時41分05秒

お医者さんの秘密の集会(謎)にカエルが潜入いたしました。
杉本健郎さんの講演メモもありますよ。
森岡さんの発言メモも。
興味のある方はどうぞ見てくださいまし。

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カエルのケロケロレポート2001年7月×日 「お医者さんの秘密の集会」潜入レポレポ

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81 小児神経学セミナー「意識障害の評価と小児脳死判定基準」のテキスト・レジメ

2001/8/5(日)22:11 - スギケン

日本小児神経学会若手研究者対象の「小児神経学セミナー」が11月23から25日にあります。
杉本は「題名」にある内容を講義します。テキストレジメです。ご批判下さい。

1. はじめに:セミナーと私

 演者はこのセミナーの第4回から9回連続で参加しました。セミナー出席は、春の学術総会への演題発表とともに、小児神経学への研修の二本柱でした。同世代の医師の質問内容に常に触発され「これではだめだ。もっと勉強しよう」との想いをもち続けました。青年医師時代の「やる気」の原動力そのものでした。
「急性脳症の診断と治療」は演者の当初の主題でした。1985年に長男を交通事故で亡くし、医師の視点でなく、枕頭看護から家族の目線から終末医療を学びました。その後、「脳死」そして「臓器移植」は、もう一つの課題になりました。
セミナーは小児神経学の基礎的研修を目的とするものです。今回の講義は、「より科学的な診断」とその診断が持つ社会的側面も指摘します。さらに今後の診療のなかで、治療の持つ不確かさの確認や自らの診療行為を客観的に評価できる姿勢を身につけてほしいと思います。小児神経医師は常に病める側、脳死では死に逝く側の気持ちを理解できる医師でなければなりません。
 限られた時間ですが、大いに意見を交流しましょう。

2. 意識障害の評価

 主に坂本が提唱した乳幼児の意識障害評価法(表1)と乳幼児では評価が難しいが、救急医療で頻用されているグラスゴー・コーマ・スケール(表2)について述べます。
表3には、自験例の急性脳炎・脳症を坂本法を含め、3・3・9度方式で障害レベルを点数化し、重症度、期間を相対的に評価したものです。
他の評価には、皮膚色や口臭、そして呼吸(図1)や瞳孔(図2)の大きさがあります。
最近経験したインフルエンザウイルス流行時の急性脳症の乳児死亡例と3歳男児の急性脳症から約3か月間脳死状態が継続した例で意識障害レベルの具体的な評価法と推移、そして家族や治療側の対応・悩みにを述べます。

3. 小児の脳死判定基準

(1) 小児基準提案の背景

 4年前にできた我が国の臓器移植法が昨年から見直しの時期に入っています。修正への賛否両論がたたかわされています。今回の小児脳死判定基準案(以下小児基準案)もその一貫です。従来法では6歳未満児の判定はできませんでした。それを法律の見直しにあわせ、医学的側面から6歳未満でも「脳死診断可能」を証明する必要から提示されたものです。
決して社会的要請と切り離して討論はできません。現診断基準(表4)と小児基準案(表5)を示します。

(2) そもそも「脳死」とは?

  脳死は、1959年フランスでcoma depasseとよばれる昏睡の一つの病態から始まり、1968年のハーバード脳死基準の「非可逆的昏睡」へとつながります。すなわち極めて早い時期に死に至る昏睡状態だという意味です。
 単に医学的意味だけでなく、「死」という社会的な問題が絡んできます。
「すぐに終わる命なら、早期に診断してもいい、そして、それを死とする」。
この背景には、一つに移植があり、もう一つに経費削減策があります。リビング・ウイルとしての生命の価値の討論もからみます。
すなわち脳死診断とは極めて社会的事象なのです。死に逝く側の弱者の視点を忘れてはなりません。

(3) 小児脳死の課題

脳死状態が正確に診断されたら、遅くとも1週間以内に心拍停止が来て、死が訪れると考えられてきました。これまでの脳死の診断基準はすべてその概念に基づいていました。ところが、1998年UCLAの小児神経医Shewmon博士が、4歳から14年も脳死状態=「死体」(米国では)のまま、在宅ケアをしている青年を含め、脳死診断基準を満たした状態でも平均2、3か月以上心拍は停止しないことをNeurology誌に発表しました・。
演者を含めた多くの小児科医も数ヶ月以上「脳死」状態でケアした子ども達を知っています。急性期を脱すると、心拍が停止するのではなく、血液学的な異常検査値のほとんどが一気に正常化することも知っています。
「脳死状態」を科学的、医学的にみても、1980年代までに認識されていた病態とは異なってきているのです。
ノー・リターンという概念だけで、脳死を考えるなら、「植物状態」も同様にノー・リターンです。北米のようにドナー不足が深刻になってくると、「植物状態」ですらドナーになりえるという考えが出てきます。
われわれ小児神経専門医は、日常的に中脳以上がほとんどない状態の超重度児者を多く診療し、生活のサポートをしています。この人たちもたしかにノー・リターンです。
脳死状態は存在します。いそがなければ、正確に非可逆的昏睡=脳死状態の診断はできます。
近いうちに心停止がくる昏睡が果たして死であるのかを含め、この講義が脳死をもう一度自分の頭でしっかりと考察する機会になれば幸いです。
脳死診断は、従来の「診断学」のみに終始するものでは決してありません。さらに治療学の原則である「早期診断・早期治療」があてはまるものでもありません。


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