神戸新聞2004年4月16日付「3邦人人質事件ドキュメント」より

【9日】
09:03 政府が在イラク邦人人質事件対策本部設置
11:10すぎ　3人の家族が上京し、川口順子外相に「自衛隊撤退も視野に」と要望
11:35 小泉首相が記者団に「（撤退させる考えは）ありません」
14:30 家族が北海道東京事務所で会見。小泉首相との面会や自衛隊撤退を訴え
20:06 家族が会見。「（家族）8人では国を動かせない。不安と焦りが大きくなった」

【10日】
08:30すぎ　首相特使の逢沢一郎外務副大臣と警察庁国際テロ緊急展開チームがヨルダンのアンマンに到着
09:45 政府がアンマンの日本大使館に現地対策本部設置
11:40すぎ　家族が外見で「外務省から首相は会わないと回答があった」
19:15 逢沢副大臣がヨルダンのマジャリ外相代行と会談
19:55 外務省の鹿取克章領事移住部長らが、家族に状況を説明。
22:25 家族が会見。「交渉の余地があるという声明を出すよう外務省側に要請した」
22:30ごろ　アルジャジーラが家族とのインタビューを放映

【11日】
01:00 「3人はイラクの友人」と武装グループに呼びかける川口外相のビデオメッセージを海外メディアに送信
02:40ごろ　アルジャジーラが「3人を24時間以内に解放する」との武装グループの声明報道
03:00すぎ　北海道東京事務所にいた家族が、テレビで知り、歓声を上げて抱き合う
05:00 家族が会見。「言葉にできないほどの安堵感を感じています」との声明発表
07:50 「解放の確証があるのか」との記者団の問いに、川口外相は「複数のソースから」
14:18 家族が北海道東京事務所で泣きながら「確実な情報が何一つ入ってこない。本当に戻ってくるのでしょうか」
15:00 ファルージャで、米軍と反米武装勢力との停戦が発効
15:00すぎ　逢沢副大臣がアンマンで「人質はイスラム聖職者の手に移っている可能性がある」と指摘
15:18 一部報道機関が「アルジャジーラが3人解放と報道」と誤報
15:50 家族が記者団に「希望的観測の持てる情報に期待している」
16:00 逢沢副大臣がアンマンで会見。3人の所在や安否は「確認されていない」
17:15 福田官房長官が、官邸へ激励に訪れた森喜朗前首相に「人質の無事な姿を見るまで安心できない」
17:25 家族が内閣府を訪れ、無事解放を求める14万9461人分の署名を小泉首相あてに提出
19:15 神崎武法公明党代表が北海道帯広市で講演。「日本の大使館員が確認し初めて3人を保護したと発表できる。その段階に至っていない」
20:35 3日間の期限切れの21時を前に、家族らが会見。「時間がない」「助けてください」と訴え
21:00 武装グループが要求した自衛隊の撤退期限
22:15 福田官房長官が、官邸で記者団に「身柄保護の状況には至っていない。良い方向に行くよう全力を挙げている」
22:15ごろ　アルジャジーラがイラク人権組織代表との会見を放映。代表は「自衛隊撤退なければ処刑」と警告

【12日】
00:15 家族が会見。アルジャジーラ報道に「信憑性が分からない。コメントは控える」
01:45ごろ　外務省が「アルジャジーラが、人権組織代表の発言は誤りと伝えてきた」と家族に連絡
未明　日本政府関係者が人質3人は安全でファルージャ付近にいると明らかに
08時00分　外務省の対策本部会合。登庁した幹部は「忍の一字だ」
09:00 家族が会見し「もうどこかで解放されていると望んでいる」
09:10 福田官房長官が、人質解放の情報を確認していないことを首相官邸で明らかに
09:25 先崎一陸幕長が登庁。「与えられた任務をこなすだけ」
10:45福田官房長官が記者会見で「無事だと判断してもいい時期もあったが、今は確認できていない」
11:20 小泉首相が都内で米国のチェイニー副大統領と会談。会談後、副大統領は記者団に「人質問題で首相の取った対応を全面的に支持する」
11:25 イラク派遣部隊の司令部がある北海道旭川市の市議会が、人質の命を最優先に考えるように政府に求める意見書を可決
13:05 非政府組織(NGO)などが首相官邸前での4日連続となる抗議集会で「自衛隊を撤退させろ。3人を見殺しにするな」
13:30 家族が自民党の安倍晋三幹事長や民主党の菅直人代表ら各党を訪問。「（3人が）今生きているという保証がほしい」と支援要請
15:00すぎ　「人質が解放される」との未確認情報が関係者などの間に流れる
15:32 小泉首相が菅民主党代表と会談。テロリストの要求には応じられないと強調
16:00 衆院イラク復興支援特別委員会。アルジャジーラが人質解放の様子を放送するとの情報があったことを川口外相が明かす
16:00 逢沢副大臣がアンマンでの会見で、人質が解放された、解放が近いとの情報には「接していない」と否定
16:00すぎ　高遠菜穂子さんの父睦雄さんが北海道の自宅で「金を要求するなら財産をはたいてもいいんだが……。今は運を天に任せる心境だ」
16:48 外務省の竹内行夫事務次官が会見で、退避勧告の出ていたイラクに入った人質3人の行動に疑問を呈し「邦人保護には限界がある」
17:53 小泉首相が記者団に「情報が錯綜し、はっきりした確認ができていない」
20:58 家族らが会見。「体力が限界に来ていて1人ダウンした」と支援者
21:00ごろ　民主党が人質事件で「小泉政権の責任は重大だ」とする菅代表の談話を発表

【13日】
08:31 閣僚懇談会で小泉首相が「救出に向け政府一丸で取り組むので閣僚の協力を願いたい」
09:46 福田官房長官が会見で人質の安否は「確認していない」
10:30 天皇陛下がチェイニー副大統領と会見。「一刻も早く無事に解放されることを願っています」と述べる
14:00ごろ　政府の在イラク邦人人質事件対策本部の幹事会が「事件の特殊性にかんがみ、取材には一切応じない」と申し合わせ
16:30ごろ　小泉首相と公明党の神崎代表が会談。事件の早期解決を目指すと同時に自衛隊は撤退させない方針を確認
16:50 家族が各党本部などを回り、救出のため武装グループの要求を最大限受け入れるよう日本政府に働き掛けることなどを求める要望書を提出
21:00ごろ　カタールの衛星テレビ、アルジャジーラが「戦士大隊」を名乗る武装グループがイタリア人4人を人質に取り、イタリア軍の撤退を要求しているビデオを放映
21:00ごろ　イラク・イスラム聖職者協会のクバイシ師は、小泉首相が日本人3人を拘束した武装グループを「テロリスト」呼ばわりしたため、3人の解放が遅れていると語る

【14日】
未明　日本人3人が拘束されているとみられ、停戦状態となっていたイラク中部ファルージャで、カタールの衛星テレビ、アルジャジーラが、米軍と武装勢力が一時戦闘と報道
7:00ごろ　郡山総一郎さんの母校・日章学園（宮崎市）の安藤忠次校長が都内のホテルで生徒らが折った千羽鶴を母きみ子さんに手渡す。「元気に帰ってくると信じていきます」ときみ子さん
11:00ごろ　人質家族への嫌がらせが相次いでいることについて、福田官房長官が会見で「ちょっと良くない。（家族との面会は）時期が来たらします」と述べた
11:00ごろ　人質3人を知る写真家や映画監督らが東京都内で記者会見し「米軍の攻撃が続けば彼らの命が危険にさらされかねない」と訴え
正午ごろ　小泉首相が自衛隊の派遣見直しについて「復興支援活動ができるようにさらに全力を尽くす」と撤退論を否定
12:15 原水爆禁止広島県協議会と広島県原爆被害者団体協議会が、イラクでの大量殺戮行為の中止と人質救出への努力を求めるブッシュ大統領あての文書を在日米国大使館にファクス送信し、広島市内で配布
15:00 国に自衛隊のイラク派遣差し止めを求めた名古屋地裁の訴訟で、1101人が2次提訴。原告は2363人に
15:30 人質の家族が日本外国特派員協会で会見、救出への協力を訴える。「自衛隊の撤退要求は変わらないか」との問いには「答えたくない」と慎重な発言
16:00 公明党の神崎代表が会見で「民間人は安易な気持ちでイラクに入るべきでない」
17:00ごろ　イスラム教シーア派の強硬派指導者サドル師の支持者ら約3百人が、イラク南部サマワで自衛隊撤退を求めて初のデモ
18:05 北朝鮮による拉致被害者の蓮池薫さんが新潟県柏崎市で帰国1年半の記者会見。「1日も早く解放され、無事帰国されることを願っている。拉致問題と同じくらい重要な問題だ」
夜　バグダッド郊外で日本人2人が何者かに誘拐されたとの電子メールが日本のNGO関係者に届く

【15日】
01:00 外務省関係者が「イラクで日本人拘束の情報」と述べる
01:00 現地緊急対策本部があるアンマンの日本大使館に詰め掛けた報道陣に、逢沢副大臣は「非常に残念だ」
02:40 バグダッドのアパートにフリージャーナリスト安田純平さん、渡辺修孝さんが戻っていないことが判明
早朝　カタールの衛星テレビ、アルジャジーラがイタリア人人質1人の殺害を報道
08:00 埼玉県入間市の安田さんの自宅で父、英昭さんが「わらにもすがる思いだ」
08:14 細田博之官房副長官が2人の拉致について「政府としては確認していない」
10:45 日本人人質3人の家族が不明者について「（2人拉致の）情報が事実なら無事でいてほしい」とコメント
11:07 福田官房長官が会見で「政府としては事実関係を確認中」
正午過ぎ　田中康夫長野県知事が会見で「自衛隊はクウェートへ撤退ではなく移動し、人質解放と非戦闘地域の条件が満たされたときにサマワに復帰することこそ、大人のマキャベリズム」
12:12 小泉首相が「（拘束情報は）まだはっきり確認されておりません」と記者団に
14:00 佐藤英彦警察庁長官の特殊部隊派遣について「相手国との協議や、何が解決のためになるかという判断の問題」
14:30衛星テレビ、アルジャジーラが、ウサマ・ビン・ラディン氏とされる人物の音声テープを放送。スペインの列車同時爆破テロを「報復」と、関与に言及
15:30 渡辺さんの父国雄さんが栃木県足利市の自宅で「本当に息子なのか。信じられない」と心境を語る
16:05 福田官房長官が会見で2人の拉致情報について「確認中。事実とすれば救出に全力を挙げる」
18:25 小泉首相が拉致情報について記者団に「どういう状況かはっきり確認できていない」
20:40 カタールの衛星テレビ、アルジャジーラが「3人を解放」と速報
20:43 NHKなどテレビ各局がテロップで速報
21:00 「3人はバグダッドの日本大使館で引き取ることになっている」と自民党幹部
21:04 アルジャジーラが、泣きじゃくる高遠さんら解放された3人の姿を放映。NHKでも同時に流れ、家族が待機した北海道東京事務所で歓声が上がる
21:15 政府はイラクの日本人人質3人の解放を確認。バグダッドへのチャーター機の派遣を検討
21:20 郡山さんの弟洋介さんは人質解放の知らせを聞き、近所の人に「安心しました」。高遠さんの母、京子さんがテレビで解放のテロップを見て「ありがとうございます。みなさんのおかげ」
21:30 政府高官は「午後9時10分、3人はバグダッドの日本大使館に入った」
21:40 警察庁は、警視庁と北海道警に合同で人質事件の捜査を指示
22:00 外務省は「3人の無事をバグダッドの日本大使館が確認したのは日本時間の午後8時半」と発表
22:00 人質3人の家族が会見。「今日ほどこんなにありがとうと言ったことはありません」「全世界の人々にお礼を言いたい」
22:10 イラク・イスラム聖職者協会のスポークスマンが解放理由について「日本の自衛隊撤退を求める世論が表れた」と述べたと報道される
22:17 川口順子外相が記者会見。「日本時間午後8時半に、バグダッド・アミリーヤ地区のモスクで3人が解放された」「バグダッドの日本大使館に『あるモスクに引き取りに来てほしい』と連絡が入った」
22:30 聖職者協会のスポークスマンが「協会が3人を保護したのは午後2時20分（日本時間7時20分）ごろ」と明らかにしたと報道される