とても2月とは思えない暖かい日が続いたかと思えば、3月に入ってこの寒さ。
「梅は〜咲いたかぁぁ桜はまだかいぃなぁ、柳ゃ……」
穏やかな春の陽が心から待ち遠しい。
:
数年前の春、知人が大病を患った。
ベッドに力無く横たわる彼を見舞ったその帰り道。まさに今、この時ぞ、と云わんばかりに開いた桜に目を奪われた。
散るをや知らむ、かの桜花。
咲くを知人の生に添わせて思い、散り行くをその裏とも重ねつつ思った。誰しもがうたかたの身。
:
以来、毎年桜を見るたびにつぶやく「これが見納めの桜かもしれない」。
かなり後ろ向きな心持ちだが、そうして見る桜はことさら美しく、儚さを際立たせて私に刻まれるような気がする。
今生一見。
この春、目にする桜が今までで一番の桜であれば佳し。
そしてまた次の春も。
|