山梨県の県庁所在地「甲府」。
人口20万弱の我が市民等が密かに競争心を抱く街、それは群馬県の県庁所在地「前橋」だ。
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夕刻、ニュースのお天気コーナー。画面には関東一円の地図が映し出され、今日の最高気温が表示される。夏場、その「最高」の栄冠をつかむのは常に前橋か甲府だと云ってよいだろう。そしてこの勇者が概ね全国の覇者ともなる。
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甲府は盆地、廻りは隈なく山ばかりだ。「シルクハットの底」と喩えたのは太宰治だったか。
見るからに風の逃げ場所はなく、熱せられた空気はひたすら底にドロリと沈殿していくかような地形だ。
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夏の昼間はまるで真綿にくるまれているかのように耐えがたく暑いっ!。街の中を歩き続ければたちまち体力は奪われ、ここで私は遭難するのではないかと不安がよぎることさえある。
そして思う。
「こ、こんなに暑いぢゃたまらん、せめて日本一の暑さとでも云ってもらわんきゃ報われんら」
【暑さに耐えた人・ランキング首位】にでもなれば、他の地域の人々が我々の苦労をきのどくに思ってくれる、発汗量を想像しうっとうしい気分にでもなってくれれば、その気持ちだけでいくばくかの生きていく糧……。う〜暑さにやられた論理展開。
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しかし帰ってテレビを見ると、たいがい前橋の方が若干上回っている。
「せっかく頑張ったのに」
って、別になに頑張ったわけじゃないのに、なぜかせつなくなる夕方、そんな日の方が多い。
今年も二番手の夏かなぁ。と思い始めていた7月、下旬に入って逆転の一撃。
観測史に残る最高気温、7月21日・甲府40.4度。
市民たちは偉業ともいえる記録に手を取り合い快哉を叫んだ……わけではないが、私個人は胸中、溜飲の下がる思いでいっぱいだった。「見たか、前橋」
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8月の間はその打ち立てた記録を胸に、「敵なし」と安心して過ごすことができた。
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そして、はや聞く9月の声、秋も近し。
根っから懐疑的な私は、ここへ来て本当に勝利を手にしたのだろうかという不安にさいなまれた。……調べよう。
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気象庁>電子閲覧室>甲府・前橋>一ヶ月の毎日の値>7月・8月>
(ネットの恩恵を実感しつつ)
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探しだした観測結果、ふた月分、62日間の数値を加算してみた。
勝ってる。最高、最低、平均、いずれもみごとに勝る値。いま勝利の実感に熱いものが込み上げてくる。「どうだ、群馬」
しかし、根っから猜疑心の強い私は、猛暑と報じられたあの地域も調べずにはいられなかった。
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東京。暑いとは聞いていたがこりゃどうじゃ、最高以外は甲府の及ばぬ値ではないか。
あの7/21など最低気温が29.6度、信じられない寝苦しさだったろう。敗退。やっぱり都会には勝てないのかぁ〜、と嘆きつつ、根っから心配性の私は、更なる伏兵の存在に怯える。県庁所在地ではないが、なぜか天気予報のポイントとなる街、「埼玉県・熊谷」の存在を思い出す。悪い予感。
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案の定、最高気温で敗北。
最後の牙城だったつもりなのに、あなどれない。
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しかし、総計一位は逃したものの、40度という気温を体験させてくれた甲府の恵みに感謝いたす次第。
ああ、あの日は不思議と静かな日だったなぁ。
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【暑さ較べランキング】
データ・2004/7月・8月
1.最高気温の和
熊谷 2069.1度 (最高値の平均=33.37度)
甲府 2060.1度 ( 〃 =33.23度)
前橋 2021.4度 ( 〃 =32.60度)
東京 1986.8度 ( 〃 =32.05度)
2.最低気温の和
東京 1522.0度
甲府 1416.3度
熊谷 1415.8度
前橋 1381.0度
3.平均気温の和
東京 1724.1度
熊谷 1693.8度
甲府 1675.2度
前橋 1662.3度
4.一日平均
東京 27.81度
熊谷 27.32度
甲府 27.02度
前橋 26.81度
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