高耶は直江を見つめると、
「その言葉、忘れるなよ。おまえは今、俺と月を射る約束をしたんだ。
後悔したって、勘弁してやらないからな。」
言い放ってグイッと手を引き寄せ、直江の指に一瞬だけ唇を当てて微笑んだ。
後悔など有り得ない。
もし有るとすれば、それは…
「後悔するのは、俺じゃない。…でも…すみません。あなたが後悔しても、俺は…」
直江は高耶の手を握ったまま、スッと屈んで素早く柔らかな唇を奪うと、巧みに口を開かせて、逃げる舌を追いかけ吸い上げて、高耶が立っていられなくなくなるほどに、甘く熱く絡ませた。
「直…江」
喘ぐような声が、耳を震わせる。
競り上がってくる欲望に、身を任せてしまいたかった。
このまま抱いてしまいたい。
突き上げて、乱れる姿を想像するだけで、もう堪らなかった。
それでも、直江は高耶を強く抱きしめただけで、それより先に進もうとはしなかった。
こんなところで、こんなかたちで、初めてを迎えるなんて、いくらなんでもあんまりだ。
直江は理性を総動員して、やっと自分を抑えると、なんとか呼吸を落ちつけて高耶を見つめた。
「続き…必ずします。俺の願いは、弓だけじゃない。あなたと、どこまでも一緒にいきたいんです。」
頬を紅潮させて、整わない息をハァハァと白く吐きながら、高耶の瞳が直江を見上げた。
「…るさねえ。本気じゃなかったら、許さねえからな。」
小さく小さく呟いた声は、ざわめく葉ずれや、神事の終いを告げる銅鑼の合間を縫って、ちゃんと直江の耳に届いた。
嬉しそうに頷く直江を見て、パァッと耳まで赤くなった高耶は、
「バカ! 弓の話だ! ほら、とっとと行くぞ!」
直江の腕を掴むと、引っ張るようにして境内に向かった。
藍より深い蒼に染まった夜空には、冬の星たちが、白く輝く月と並んで、キラキラと輝いていた。
2007年12月11日 by 桜木かよ
やっぱりUPしてしまった…
お買い上げ下さった方に申し訳ないと思いつつ、でもやはり表に出してしまいたくて…(滝汗)
本とWEBでは同じ作品でも違うと思うので…
買って下さった方、本当にありがとうございます。 どうぞ許して下さい…m(_ _)m