『直高の桃太郎−1』

 

昔々あるところに、桃から生まれた男の子がいました。
彼の名は高耶。
高耶は、近所に住む大きな犬の直江と一緒に、いつも元気に野山を駆け回り、数年で立派な若者になりました。

「聞いたか?直江!鬼退治に懸賞金が出るぞ。」

ある日の朝、直江の家に飛び込んで来た高耶は、ガシッと直江の首を抱くと、柔らかな毛皮に頬を押し当て、

「俺、鬼ヶ島に行く。鬼の首領を倒してガッポリ稼いでやる!」

キラッと瞳を輝かせ、勇ましく宣言しました。

「鬼ヶ島? 本気ですか! そんな危険なこと…」

やめた方が良いと言いかけて、直江は高耶の顔を見つめ、ふうっと小さく息を吐きました。
止めても無駄だと思ったのです。

「私も行きます。どこへでも、お供しますよ。高耶さん。」 直江は高耶が子供の頃から、ずっと傍で見てきました。
やんちゃで鼻っぱしらが強くて生意気で、でも本当は寂しがり屋で心優しい高耶のことが、直江はとても好きでした。
だから高耶が行くと決めたなら、それが鬼ヶ島でも躊躇う気持ちは少しもありませんでした。
どんな危険が待っていようと、必ず守るつもりでいたのです。

やがて山道に差し掛かると、以前からよく知っている猿の綾子が、旅支度をして切り株の上に座っているのが見えました。

「どうしたんだ? こんなところで…」

「やあね。あんた達を待ってたに決まってんでしょ。
 色部のオジサマも木の上にいるわ。
 さあ、きびだんごを出しなさい。鬼は手強いわよ!」

つぶらな瞳が、高耶を見上げて微笑みました。
バサバサと羽音を立てて、雉の色部も高耶の肩に舞い降ります。

「姉さん…色部殿…ありがとう」

高耶は懐から包みを出すと、きびだんごを綾子と色部に渡しました。
きびだんごは、強い絆と百人力を授けると言われる、鬼退治に必須のアイテムです。
4人はそれを食べながら、鬼ヶ島へと向かいました。

背景の壁紙は、こちらからお借りしました。→

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