光のかけら−10

俯く高耶の横顔を、直江はじっと見つめていた。
軽蔑ではないと高耶は言った。
では彼のこの苦しげな表情は何なのだろう。
俺の思いに答えられないから?
そんな程度のことではない気がした。
好きだと言ったことを、取り消すだけで高耶が楽になるのなら、いくらでも取り消そう。
思いを告げたいのは、言わば俺のわがままだ。
告げても告げなくても、この思いはもう変わらない。

今以上の関係を望めないのは、最初からわかりきっていた。
少なくとも高耶は、ただの友人としてなら、認めようとしてくれている。
よくある「お友達でいましょう」という交際お断りの決まり文句ではなく、
もっと真剣な、本当の意味での友人でいることを求めているのだと直江は思った。

できるだろうか、俺に。
友人の線を、俺の思いはとっくに越えている。もう後戻りなどできない。
それを抑え続けなければならないのだ。今も胸に渦巻くこの思いを。
だが、そうでなければ高耶の側にいられないのなら、そうするしかなかった。

「高耶さん。呑みましょう。」
とっくりを手にして微笑んだ。
そろそろと顔を上げた高耶の瞳は、不安に揺れている。
安心させるように頷いて、その瞳を見つめた。
大丈夫。俺はあなたを喪いたくない。だからここにいる。あなたの側に。ずっと。

見開いた高耶の瞳から、涙が一粒こぼれた。
慌てて背中を向けた高耶を、思いきり抱きしめたい衝動に駆られて、直江は目を瞑った。
そのままぐっと堪える。
抑えてみせる。いつかあなたが今以上を望む時まで。

 

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