『ヒートアップ! 第2戦』−2

 

「行けーっ!一蔵っ!」
高耶が叫んだ。
流れるような華麗な身のこなしで、あっというまに一蔵がゴールを決めた。
誰もが一瞬、言葉をなくした。
「うおおお〜っ!」
ひと呼吸おいて歓声が沸き起こった。
へへん。と得意げな笑顔を浮かべる一蔵を、寧波たちが歯噛みして睨む。
予想もしなかった一蔵の活躍に、試合は大混戦となっていった。

走っている最中、眼の端に直江の顔が映った。
食い入るように見つめている。真剣な瞳で。
直江…。
ほんの一瞬だ。それだけで、心が直江に向かうのを止められない。
どんなときでも、意識の一部は直江と共にある。
第一戦で気付いた。
直江のガードを外れても、どこかで直江を追っている。
だから試合に出るなと言った。あいつの気持ちを無視して…。
なのに、俺がこんなじゃ意味がない。
集中しろ! 目の前の敵に! この試合に!
心の中で自分を叱咤して、高耶はボールを追った。

一蔵の動きは素早い。
くるくると向きを変え、左に右に後ろにと、自由自在にドリブルしながらガードをかわす。
始めのうちは、誰も動きについて行けなかった。
その間に、高耶と一蔵で5点入れた。
だが、やがて青月が、次に寧波が、一蔵の動きを見切った。
ふたりでガードに入り動きを封じると、ボールは小源太に渡り、豪快なシュートが決まった。

そこからは、彼らからボールを取るのが精一杯になってしまった。
一蔵がボールを取ると、さっと二人がガードに付く。
高耶には小源太が張り付き、大きな体で覆い隠してパスを阻む。
フリーの卯太郎にボールが渡っても、驚くほどの早さでゴール前に立ち塞がった小源太に、競り合いで弾き飛ばされてしまうのだ。
困った卯太郎はロングシュートを試みたが、2度とも失敗してしまった。
取られたボールを入れられていつのまにか形勢は逆転し、寧波チームは7点になっていた。

焦る気持ちばかりが膨らんでいく。
どうすればいい? どうすれば勝てるんだ?
「卯太郎! こっちだ!」
高耶の声を頼りに、大きな壁のような小源太の、頭上を越す高いパスを上げた。
「よっしゃあ!通った! 上手いぞ、卯太郎!」
観客から歓声が上がったが、せっかく高耶に渡ったボールも、なかなかゴールに近づけない。

目だけでお互いの考えがわかるのか、絶妙のコンビネーションで動く寧波と青月が、
執拗に高耶につきまとい、体力を消耗させていく。
荒い息を吐きながら睨む高耶の瞳は、焦りをはらんで熱く燃えた。
「ふうん。あんたほんとにいい男だねえ。」
寧波が唇に凄みのある微笑を浮かべた。
「ぼうやなんて、もう呼べないね。青月が騒ぐわけだ。なあ、青月?」
「かしらっ! いきなりなにを…。」
青月がパッと赤くなった。美しい顔に、なんとも言えない色香が漂う。

だが、高耶は動揺しなかった。
「誉めてもらっても何にも出ねえよ!」
言うと同時にバックパスを一蔵に送った。
掴んだ一蔵がゴールに向かう。
卯太郎が絶好の位置にいる。
「やれぇーっ! 卯太郎ぉ!」
一蔵のパスを受けとって、卯太郎は渾身の力でシュートした。

目の前に小源太の手が現れた。
またダメなのか? おれじゃゴールできないのか!
バシンとブロックされたボールが、卯太郎の頬を直撃した。
「卯太郎、大丈夫か?」
心配して駆け寄った高耶に、倒れていた卯太郎はヨロヨロと立ち上がった。
「大丈夫ですき。こんくらいで負けてられん。おれだって…おれだって…やれる。」
目に涙をいっぱい溜めて、悔しげに拳を握り締めると、周りを見まわした。
「ボールは? 仰木さん! ボールはどこなんじゃ。」
言われてハッと後ろを見ると、寧波がシュートを打とうとしている。
「おれ、こんままじゃおられん。諦めん!」
バッと走り出した卯太郎が、勢いをつけてジャンプした。

 

 

さあ、第2戦です。新年早々続き物でごめんなさい〜(^^;
直江が複雑な思いで見守る中、高耶さんは勝てるのか?
楽しんで頂けたら嬉しいな〜♪
 

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