『ヒートアップ! 第2戦』−1

 

小さな駐車場に集まっていたバスケ好きは、高耶と対戦したい者たちが、それぞれチームを組み、順番を待っていた。
元々高耶と戦うのが目的で始まった試合である。
相手が代わっても、高耶だけは連戦になる。
一回戦からハードな試合だっただけに、たった十分の休憩で体力を回復するのは難しかった。

勝ったの負けたのといっても、何があるわけではない。
手を抜いたってかまわないのだが、高耶にそんな気はなかった。
お遊びでも試合は試合。やる限りは負けたくない。
コートに入ってストレッチを始めた高耶の隣で、
「仰木さん。おれ一生懸命やりますきに!」
同じように体をほぐしながら、卯太郎が上気した顔で見上げた。

次の試合は、卯太郎と一蔵が高耶のチームになっている。
高耶と一緒に戦えるんだと思うと、卯太郎の胸は、嬉しさと誇らしさでいっぱいになった。
勝つんだ! 絶対!
練習では何度もゴールを決めてるんだ。
おれだってやれる。仰木さんの力になれる。
自分に言い聞かせて、卯太郎はギュッと拳を握り締めた。

「直江の旦那。オレ頑張って旦那の大事な御主人様を守るから。安心して見とって下さい。」
試合直前、直江を見つけて走ってきた一蔵は、それだけ言うとニッと笑ってコートに戻った。
(頼んだぞ。一蔵。)
できることなら自分が同じコートに立ちたかった。
敵でも味方でもいい。あのひとと同じ場所に居たい。
見ていることしか出来ないのは、耐えがたい苦痛だった。

だが、高耶は直江が出るのを許さなかった。
「おまえはダメだ。連続で出るなんて反感を買うだけだ。ここで見ていろ。」
そういうと、さっさとひとりで行ってしまった。
確かにその通りだろう。けれど、それでも…。

 あなたは何にもわかっちゃいない。
 試合に夢中になっているあなたが、どれほど無防備で美しいか。
 無自覚に放たれる輝きに魅了される。
 俺だけじゃない。あなたに惹かれるのは…。

 どんなに隠しても隠しきれない。
 光は溢れ出す。あなたがあなたである限り。
 俺だけのものでいて欲しいと願いながら、その輝きを見せつけてやりたくなる。
 誇らしさと独占欲の狭間で、歓喜と苦痛に悶える。

 誰より近くで、あなたの傍で、感じていたい。
 あなたという存在を。
 どんなときでも。
 反感など、どうでもいい。あなたさえ嫌じゃなければ。
 あなたは何にもわかっちゃいないんだ。

もうすぐ試合が始まる。
今度の相手は、小源太、寧波、青月。
第一戦とは打って変わり、チームワークは最強。
海で鍛えた体力も闘志もハンパじゃない。
小源太以外は女だが、姫水軍は男も顔負けの力を誇っていた。
体の小さな卯太郎と一蔵、疲れの残る高耶では、どうみても不利だ。
勝てるのか?
並んだ6人を見て、ほとんどの人が高耶たちの苦戦を予想していた。

「用意はいいか!…そうれっ!」
一戦目と同じく中川のトスでジャンプした。
高耶と小源太。ボールを制したのは高耶だった。

 

続きを見る
小説に戻る
TOPに戻る