『魔法使いのハロウィン』

 

冷たい夜風が当たらないように、マントでスッポリと包み込むと、
そこはもう二人だけの世界。
月の光を映して輝く湖をゆっくり飛びながら、
直江は振り向いた高耶の瞳を、じっと見つめた。
そのまま引寄せられるように唇を近づける。
だが、重なろうとした唇は、高耶の口から零れ落ちた意外な言葉に、寸前で止まってしまった。

「ハロウィンパーティー? 行きたいんですか?」
マジマジと見つめて聞き返す直江に、高耶は慌てて手を振ると、
「べ…別に、そんな行きたいってんじゃねえぞ!
 千秋が、珍しいものがいっぱいあるって言うから、ちょっと面白そうかな…と」

赤くなった頬を隠すように、前を向いてしまった高耶を、直江は笑って抱き寄せた。
「そうですね。パーティーも、あなたと一緒なら楽しいかもしれない。行きましょうか。」
そう言うと、腕の中で嬉しそうに撥ねた鼓動を、逃がさないようしっかり捕まえて、
首筋にそっと歯を立てた。

「んンッ…なん…の真似だよッ…アん」
直江の熱い舌と歯の硬い感触に、背中がゾクリと震えて、抑えきれずに声が裏返った。
「あぁ…ダメですよ高耶さん。
 そんな声を聞かせたら、本物のバンパイア達に狙われてしまう。」

うっとりと囁く直江の甘い声が、敏感になった首筋を嘗めるように滑ってゆく。
「ハロウィンには仮装が決まりです。バンパイアと獲物なら、これくらいはガマンしないと…」
練習が必要ですね。と言われて、高耶は混乱した頭で、ギュッと目を瞑った。

乱れる呼吸に上下する胸、
小さく開いた唇から苦しげに洩れる、声にならない喘ぎが堪らない。

ちょっとした悪戯が、いつのまにか本物の熱に変わってしまうのは、相手が高耶だからだ。
「や…直江…!」

掠れた声を聴きながら、ささやかな抵抗を手と唇で封じると、
直江は愛しい人を思いのままに追い上げた。

「こんなの…練習だなんて…」
紅潮した頬と荒い息のまま、ようやく言葉を繋いだ高耶の耳に、
直江はにっこり微笑んで唇を寄せた。
「いいえ。これはフェイク…練習ですよ。本番は帰ってからゆっくり…」

ゲシッと肘鉄が腹に決まって、直江は咳き込みながら箒を家に向けた。

やがて高耶が、そっと腕にもたれかかり、
直江は自然な仕草で、その体を引寄せると、胸に優しく抱きしめた。
二人の家は、もうすぐ眼下に見えてくる。
半分の月が夜空に白く輝いていた。

 

プチミラが10月ということで、これを桜木通信 No.4 にしたの(^^)
UP遅くなってすみません。しかも続き物…(滝汗)
最後まで楽しんでもらえると嬉しいな〜♪

背景の壁紙は、こちらからお借りしました。→

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