第5章 前日からスタートまで

チームの皆さんは、日帰りということであったが、「沖縄引越しはできるだけコンパクトにしなければならないということなので、すぐに使わないものは実家に預ける」、
「天草勤務時代の同僚と飲んで騒ぐ」ということで、別行動を取らせてもらい、
前日から単身天草入り。

ところが、御存知の通りの雪模様。開催されるかなあと思いつつも、
かつての同僚たちは、口を揃えて、「参加費を事前に徴収している手前、
とりあえず中止はしない。あくまでも参加しないのは個人のせいにしてしまうのだ。」
というので、控え目に飲むつもりだったが、12時まで帰してくれなかった。
(12時には帰してくれたというべきか)

翌大会当日。
6時30分起床。
同僚が、レトルトの牛丼を用意してくれるが、
二日酔いで胃が受け付けない。しかし、栗さんから、
「早め早めの補給をしないと150キロ持たない。」と言われていたので、
前日買っていたジェリー状の補給食1個とエネルゲン500mlを流し込む。

車の中でチームジャージに着替える。寒いのは分かっていたので、
ブレスサーモのソックス、グローブ、アンダーウェアの上から、
ロード用のソックス、グローブ、ウェアを着込む。それから、長袖を持たない者として、
当然アーム及びレッグウォーマーを着用する。しかし、このとき慌てていたことが、
後で赤っ恥をかく羽目に・・・。

会場へ向かうと、2台前に自転車を後ろにくくりつけた車が走っているが、雪で真っ白になっている。良く見れば決して安くはないメーカーの物であった。
けちんぼの私には決して真似できない。

7時20分会場到着。初めてだし一人だしで不安に駆られ、良い人ばかりのチームの中でも特に優しいライオンさんに電話してみると、もうすぐ到着しますとのこと。
補給食をもう1個食べたりして、時間をつぶそうとするが、気ばかりあせって、
待ちきれずに一人で受付へ向かうと、ライオンさんとYさんから、
「ジャージですぐに分かりましたよ」とお声がかかる。
一緒に受付を済ませ、私は一旦参加賞等を車に乗せにいく。
それから自転車を組み立て(前輪をつけただけ)、
タイヤに空気を入れようとするが、
前輪に上手く入らない。ここまで来て何てことだと思ったが、
4〜5回やってみてやっと成功。

ようやく自転車でスタート地点付近へ行くと、
鬼池港から走ってこられている社長さん御一行が到着されていた。
すでに自転車もウェアも汚れておられる。

ライオンさんの携帯で記念撮影なんかしてもらっているあたりから、
何かひざの辺りがだぶついているなとは思っていた。しかし、スタート10分前くらいに、その原因が、レッグウォーマーがずり落ちていることであると気づき、
自転車をDさんに持ってもらい、直そうとするが焦って思うようにいかず、
結局スタート。


第6章 スタートからゴールまで

スタート前に、社長さんから「補給は早めに十分に」と、
ライオンさんから
「ブレーキがあまり効かないので要注意」というアドバイスをもらったが、
後で思えば、そのおかげで無事故で完走できたのだと思う。

いよいよスタート。エントリーoに50名ずつ3分間隔でのスタート。
188番の私は4番目のスタート。
多分ライオンさん以外のチームの方も同じスタートだったと思うが、
昼食会場まで追いつくことはなかった。

とにかく150キロもたせないといけないし、日ごろの練習でチームの方についていくのは無理と分かっていたので、最後尾からゆっくり走る。
路面はシャーベット状態、霙交じりの雨。
最悪のコンディションながら、いつになく調子が良い。
特に苦手にしている登りがまったく苦にならず、
むしろ何人か追い抜くことができた。もちろん、
後続のトップ集団からは次々抜かれるが、浮かれた気分で第1チェックポイントに到着。
このころにはすでに天気も回復していた。

おそらく母校の後輩であろうと思われる中学生が、バナナや飴を配っている中に混じって、みすぼらしい格好の老婆の姿が・・・。良く見ると母であった。
母の話では、事務局の準備が遅れ、早く到着した人には補給が間に合わなかったらしい。
40近くなった息子を思い来てくれた母に感謝しつつも、
中学生たちに向かって「こっちにもバナナ頂戴」なんて言うのはやめて欲しかった。


魚貫地区を抜けるまでは路面はぐちゃぐちゃだったが、
河浦の国道へ出たあたりから乾いてきて、コンディションが良くなってくる。
私の記憶では、ここからしばらく海沿いの曲がりくねったアップダウンが続くはずであったが、いくつものトンネルがショートカットしていて、大したことはなかった。

多少太腿に疲れが出てきたが、楽しく昼食会場へ到着。
やっとYさんやDさんたちと出会う。おにぎり3個、ガネ(蟹)のてんぷら(実は、千切り状に切ったサツマイモをかき揚げ風にあげた物。
形が蟹に似ていることからそう呼ぶ。)2個、豚汁1杯を食べる。

すごく混み合っていて、あらためて参加者の多いことに気づく。

腹が満たされてすぐなのに、きつい登りがしばらく続く。
しかし、下田温泉を過ぎれば後はほとんど平坦であり、また、
天草にいるころしょっちゅう乗っていたコースなので、気合を入れ直して登る。

ほとんど最後の登りといってよい鬼海が浦からの海岸沿いはいつ見ても美しく、
特に自転車だとゆっくり味わえるので得をした気分になる。
このころから腰に疲れが出てきたが、回転数は落ちない。


第3チェックポイントで、鬼池港ゴールのDさんたちに別れを告げ、先に出発。
しかし、すぐに追いつかれるからさっきのタイミングで「お疲れ様でした」と言うこともなかったな。と思っていると、案の定、後ろから「お疲れ様でした。」と声が掛かり、
あっという間に抜き去られる。とうとう最後までついて行けなかったが、
鬼池港にカーブしていかれる姿の見える位置にはいることができたので、
少しは強くなったかなと思う。

残り3キロあたりだろうか。先にゴールされたライオンさんたちが、
帰りの車の中から手を振って応援してくださった。いつも優しい方である。
多分1時間は差がついていないだろうと勝手に思い込み、やはり強くなったなあと自信が出てくる。

午後3時30分。無事故で完走。初めての参加、初めての3ケタ距離。
すごく自信になった。また、女性の参加者と年配者の参加者の多さ、
それから様々なメーカーの自転車に驚いた。
早く子供たちが成長して一緒に乗れる日がくればいいと願いつつ、つたない文章を終わることにする