旧制第一高等学校寮歌解説
青くすみたる |
明治33年第10回紀念祭寮歌 南寮
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1、くすみたる大空に 一筋かゝる天の川 夕べの色は清けれど 東白みて明けゆけば 悲しや影は失するなり めざめよ自治の健男兒 2、村雨晴れし山の端に 浮ぶ錦の虹一つ 染たる色はさやけれど あはれ見る間に消ゆけば かげだにとめずなりぬべし めざめよ自治の健男兒 *「染たる」は昭和10年寮歌集で「染めたる」に変更。 3、かすめる野邊のすみれ草 そよ吹く東風に綻びて 小芝かくれにほゝゑめば 摘みて取りて少女子ら 花のたばねとなさんとす めさめよ自治の健男兒 *3・4番は「めさめよ」で1・2番「めざめよ」と異なるが、誤植か。 |
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音符下歌詞の仮名遣いで、「自治」の振り仮名も「じぢ」「ぢち」等とこの頃は一定していないが、ここでは「ぢち」 借譜でない最初の寮歌? ただし、作曲者の「久保田一藏」は卒業者名簿にない。ペンネームも考えられるが、寮生であるとの確認はとれてない。 ホ長調4分の2拍子は変わらず、昭和10年寮歌集で、次の3点が変更された。 1、「たる」(1段2小節3音) 4分音符が、付点8分音符(た)と16分音符(る)に分けられた。 2、「かーげ」(5段2小節1・2音) スラーが付けられた。 3、「のー」(6段2小節3・4音) 4分音符ド1音とされた。 |
語句の説明・解釈
語句 | 箇所 | 説明・解釈 |
青くすみたる大空に 一筋かゝる天の川 夕べの色は清けれど 東白みて明ゆけば 悲しや影は失するなり めざめよ自治の健男兒 | 1番歌詞 | 青く澄んだ大空を天の川が横切る。昨夜は、あんなに光り輝いていた星も、東の空が白み夜が明けてゆくと、悲しいかな星の光は消えて行き、姿を消してゆく。目を覚ませ、自治の健男児よ。 真理(太陽)に勝るものはない、という意か。 「各節とも、最後の行の『めざめよ自治の健男児』に繋がる論理不明」(井下一高先輩「一高寮歌メモ」) |
村雨晴れし山の端 に浮ぶ錦の虹一つ 染たる色はさやけれど あはれ見る間に消ゆけば かげだにとめずなりぬべし めざめよ自治の健男兒 | 2番歌詞 | にわか雨が晴れた山の稜線に、錦のように綺麗な虹がかかった。七色の虹の色は誠にさえて綺麗だけれども、やがて見ている間に消えていって、その跡さえ留めない。目を覚ませ、自治の健男児よ。 実質のない浮華を追い求めてはいけないということ。 |
かすめる野邊のすみれ草 そよ吹く東風に綻びて 小芝かくれにほゝゑめば 摘みて取りて少女子ら 花のたばねとなさんとす めさめよ自治の健男兒 | 3番歌詞 | 春霞の野辺のすみれ草、そよ吹く春風に綻んで、芝の間から花を咲かせると、少女らに摘み取られ、花束とされてしまう。目を覚ませ、自治の健男児よ。 出る杭は打たれるの意か。 「少女子」は、一高寮歌では、「恋」や「少女」等という歌詞は極めて珍しい。他には、水泳部部歌「狭霧はれゆく」に出てくる程度である。 「あみひくあまや乙女子の」(「狭霧はれゆく」2番) |
巣を立ち出でし雀の子 てらす春日ののどけさに 野山も分かずさまよへば 追ひて捕へて里の子ら 小籠の中に飼はんとす めさめよ自治の健男兒 | 4番歌詞 | 巣立ちして間もない雀の子が、春の日のどかな陽射しに浮かれて、野を越え山を越え遠飛んでいけば、里の子に追いかけられて捕らえられ、小籠の中で飼われる羽目になる。 浮かれて実力以上のことをしてはならないということ。 4、巣を立ち出でし雀の子 てらす春日ののどけさに 野山も分かずさまよへば 追ひて捕へて里の子ら 小籠の中に飼はんとす めさめよ自治の健男兒 |