地球のもの                                    津田山 昭次   

「まぁ、これも地球のもですから。地球にお返しするのが筋かと思いまして・・・・・・・。」

俺のオフィスに来た馬面の男はそう話を締めくくった。確かに彼が言うことももっともだ。確かに、それは地球のものだ しかし、今の地球に居場所があるものではない。俺の仕事、防疫管理官として受け入れ先が決まらないのにそれを地球に入れることはできない。答えはNONだ。

「しかし、ドードー鳥の時はあんなに喜んだじゃないですか!」

 馬面の男は反論した。それを増やしすぎてもてあました彼も何とかして地球にそれを地球に戻したいのだ。確かにドードー 鳥のときも、モアのとき人類は彼らの申し出を喜んでうけいれた。

 

 異星人との交易が公になって以降、俺の目の前にいる男のような申し出、彼らが地球から拝借していたものを返還したいとの申し出がでてきた。

 失われた美術品、鉱物、宝石の類など人類に理解できるものも多かったが、特に多かったのは絶滅生物の返還だった。交易が公になる前に多くの異星人達が、彼ら曰く不法に、遺伝子資源=生物を地球から持ち出していた。

 返還されたものの中にはドードー鳥のように地球人が自ら滅ぼした生物が、異星人の手で保護、繁殖させられていたような幸運な例もあった。実際、地球に戻ったドードー鳥はもっとも人類に愛される動物になった。

 しかし、返還が申しだされたものはたいてい、異星人達が地球から持ち出し繁殖した挙句もてあましたものばかりだ。今日俺のところに回ってきたそれもそんなものだ。地球に返還されれば人気は出ると思うが、それは動物園よりも博物館にいるのがふさわしい。

 

「残念ながら申し出がありましたティラノサウルス・レックス二百万頭の返還の件ですが、地球側には受け入れる余地がございません。数百頭程度であれば、動物園で引き取ることができるのですが・・・。」

 そうだ、人類が生まれる以前に持ち出されたものまで、人類が責任を取れるはずがない。いくらそれが、人気のある恐竜のでも。ものには限度というものがある。ほいほいときいてられるものか。

 

「そうですか、それは残念です。」

馬面の異星人はそういって引き下がるかと思ったが・・・

「ところで、もうひとつ返還の申し入れがありまし、。私どもが以前

地球の方から拝借させていただいたリードシクテス、地球では二十五メートル程度の魚ですが。私どもの星は環境がよかったらしく六十メートル級のものが三十万匹ほどございまして・・・・・・・」

 

もう、勘弁してくれ・・・・・・・。

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