国立科学博物館〜新館:カミナリ竜とハドロサウルス〜
第9回では中生代の地球で主要な草食恐竜群を占めたカミナリ竜とハドロサウルス類を紹介しよう。
国立科学博物館にはカミナリ竜の標本として実物のアパトサウルスの全身骨格化石が展示されている。これはかなり貴重なものである。
またハドロサウルスもヒパクロサウルスを中心に恐竜の成長過程が分かるような展示になっている。旧館のマイアサウラとあわせればハドロサウルスについて理解を深めることができるであろう。
惜しむらくは、頭骨のレプリカでもいいのでイグアノドンの標本があれば、旧館のカムプトサウルスとあわせて鳥脚類の進化が俯瞰できるのであるが・・・・・・・
(もっと贅沢を言えばヒプシロフォドンプシッタコサウルスカルノタウルス羽毛恐竜の展示があれば新館と旧館の恐竜展示とあわせて恐竜全体の進化と分布、生態を学ぶ上でパーフェクトとなるのだが・・。もし展示を増強する機会があればこれらレプリカを追加してほしいなぁ)


【カミナリ竜の世界】
1.カミナリ竜概論
カミナリ竜(竜脚類:サウロポッド)は恐竜の黎明期三畳紀後期に登場し、白亜紀の最末期まで繁栄し、所によってはK/T境界線を越えた暁新世最初期まで生き残ったグループである。四本足で長い首と尾をもった彼らは恐竜時代の全期間を通じて繁栄下ばかりではなく、ジュラ紀後期(約1億5000万年前)と白亜紀中期(約1億年前)に巨大化のピークを迎え史上最大の陸生生物を生み出した。恐竜=巨大なものという観念を人々に植え付けたのも彼らです。彼らはもっとも恐竜らしい恐竜といえよう。

【カミナリ竜の歴史】
先ずカミナリ竜の歴史をざっと俯瞰してみよう。下は彼らの進化の道筋を示した系統樹である。

1.カミナリ竜黎明期(三畳紀後期〜ジュラ紀前期)
彼らの歴史は以外と古い。タイで三畳紀の地層からイサノサウルスという竜脚類が見つかっている。三畳紀と言えば恐竜が生まれた黎明の時代であり、イサノサウルスはこれまで竜脚類の先祖と考えられたプラテオサウルスなどの古竜脚類と同じ時代に生息しいた。これは竜脚類が恐竜誕生の初期からいたグループであるということをうかがわせる。
この後ジュラ紀前期にかけてヴァルカノドン、シュノサウルス、パラパサウルスといった原始的な特長をもった種類が続々と現れる。
2.第一次大型化のピーク(ジュラ紀後期)
次のジュラ紀に入ると竜脚類は地球上で主要な草食動物としての地位をかため、ジュラ紀後期には第一回目の巨大化のピークを迎える。アパトサウルスディプロドクスカマラサウルスブラキオサウルスなど我々がよく知っている竜脚類が生息したのがこの時代であり、最大の恐竜候補として挙げられるセイスモサウルスが生息したのもこの時代の北米に生息していた。
また当時、孤立した島大陸であったアジアではジュラ紀前期の原始的な特長を受け継いだマメンキサウルス、オメイサウルスなど首が異様に長い竜脚類が繁栄していた。
3.一時的な衰退と第二次大型化ピーク(白亜紀前期)
白亜紀に入ると北半球ででディプロドクスの仲間などいくつかの系統は衰退する。代わってイグアノドンのような鳥脚類が北半球を中心に繁栄したためや俗説としてカミナリ竜がジュラ紀に絶滅したと言われる。しかし、それはウソである。
ブラキオサウルス類は白亜紀前期にヨーロッパのペペロサウルス、北米のサウロポセイドンといった最大級の種を生み出す一方でプロコウエルスといった体長7m程度の小型種も生み出し多様化のピークを迎える。
カマラサウルス類もアジア最大級恐竜のヌロサウルスを生み出している。
また生き残ったディプロドクスの仲間では小型ながらアマルガサウルスのような特異な形態の種も生まれている。
カミナリ竜は白亜紀に入っても主要な草食恐竜であったのだ。
4.タイタノサウルス類の時代(白亜紀後期)
特にジュラ紀後期〜白亜紀前期に勃興したタイタノサウルス類は白亜紀後期に南半球(南米、アフリカ、インド)で主要な草食恐竜となった。彼らの中には北米のアラモサウルスのように北半球に逆進出したもの、アルゼンチノサウルスのようにジュラ紀の竜脚類に負けず劣らず巨大化したもの、南米のサルタサウルス、ヨーロッパのアンベロサウルスなど装甲を発達させたグループを生み出した。また、議論の余地がある話ではあるがヨーロッパに生息したヒプセロサウルスはKT境界線(白亜紀の終わり)より200万年のちの暁新世の地層からも卵を含む化石が見つかっているといわれ、最期の恐竜の一つといわれている。
このほか白亜紀後期の北米の地層からブラキオサウルス類と思われる化石が見つかったと言われている。またモンゴルでは最期のディプロドクス類と思われるメネグトサウルス、カマラサウルス類と思われるオピスカウディリアが生息していた。

【主な竜脚類の生息年代】

三畳紀 ジュラ紀 白亜紀
後期 前期 後期 前期 後期
古竜脚類 プラテオサウルス(欧州)
テコドントサウルス(南米)
メラノサウルス(アフリカ)
ルーフェンゴサウルス(中国)
ユンナノサウルス(中国)
マッソスポンディルス(アフリカ)
原始的な竜脚類
(中国の竜脚類ふくむ)
イサノサウルス(タイ) クンミンゴサウルス(中国)
イービノサウルス(中国)
ヴァルカノドン(アフリカ)
パラパサウルス(インド)
シュノサウルス(中国)

パタゴサウルス(南米)
マメンキサウルス(中国)
オメイサウルス(中国)
ケイティオサウルス(欧州)
ジョバリア(アフリカ)
オーストロサウルス(オーストラリア)
ディプロドクス類 アパトサウルス(北米)
ディプロドクス(北米)
セイスモサウルス(北米)
スパーサウルス(北米)
ディクラエオサウルス(アフリカ)
バロサウルス(北米・アフリカ)
アマルガサウルス(南米)
レッバキサウルス(アフリカ)
メネグトサウルス(モンゴル)
カマラサウルス類 カマラサウルス(北米・欧州) ヌロサウルス(中国)
アラゴサウルス(欧州)
オピスカウディリア(モンゴル)
ブラキオサウルス類 ブラキオサウルス(アフリカ・北米) サウロポセイドン(北米)
ペペロサウルス(欧州)
プロコウエルス(北米)
タイタノサウルス類 ヤネンシア(アフリカ) マラウィサウルス(アフリカ)
アルゼンチノサウルス(南米)
タイタノサウルス(南米、インド)
ゴンドワナティタン(南米)
アンタークトサウルス(南米)
アンデサウルス(南米)
アルギロサウルス(南米)
ラペトサウルス(マダガスカル)
アラモサウルス(北米)
ヒプセロサウルス(欧州)
サルタサウルス(南米)

アンペロサウルス(南米)




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