『〜すべての百選滝 との対面を終えて〜』 |
私は2012年5月4日に七ツ釜滝を訪ねたことに より、日本の滝百選に選ばれているすべての 滝との対面を果たし終えることができました。 思えば私は他にも日本に現存しているすべての 即身仏、五重塔、三重塔、一之宮との対面を 果たし終えていますが、基本的に車で「そこ」 まで行けばいいそれらと違って、時には 何時間も掛けて逢いに行かねばならない滝を 訪ねるのは本当にツラいものがありました。 振り返れば2010年を終えた時点で、私が 訪ね終えていた百選の滝は91箇所で、 残っていたのは早戸、三条、御来光、 茶釜、松見、田立、八ツ淵、七ツ釜、双門と 難易度が高いとされる滝ばかりでした。 尚、この時点では滝百選の方が一之宮や 三重塔よりも進捗率が高く、ペースが 早かったのですが、結局、滝百選を すべて訪ね終えるのは一之宮や三重塔の それよりも遅くなってしまいました。 実は私は基本的に滝はいつも一人で行って 心行くまで堪能したいと思っている人間 なのですが、さすがにもうこれは一人では 無理だろうというレベルの滝ばかりが 必然的に残ってしまっていました。 しかしながら、素晴らしい滝仲間と廻り会う ことができたこともあり、彼らの力を借りる ことにより、2011年度中に何とか早戸、三条、 御来光、茶釜、松見、田立、八ツ淵の滝との 対面を果たす(結局、このうち一人で行った のは田立と八ツ淵のみ…)ことができました。 しかし、正直に言って、早戸大滝や三条の滝、 御来光の滝に行った時などには『もうこれを 最後に滝巡りは絶対にやめよう…』と、 いつも必ずそう思ったほどツラいツラい 本当にツラい道のりでした。(まぁ〜そうは いっても、ひと度滝を目にするとそうした 気持ちは吹き飛ぶのですが…。) そして2011年度を終え、私はいよいよ 『残すは双門の滝と七ツ釜滝の2つのみ』 となりました。しかしこうして最後まで残った のには当然『然るべき』理由があり、この 2つの滝は残るべくして残ったという滝です。 双門の滝は誰に聞いても口を揃えて百選の 滝の中では最難関の滝であるといいます。 また七ツ釜滝も双門と並び称される難易度の 高い滝であり、しかも2004年の水害により 登山道が大打撃を受けたことにより、通行 止めを余儀なくされ、名実共にまぼろしの 滝となってしまっていたからです。 私は命の危険を伴う双門の滝だけは絶対に 手を出しちゃいけないと『ずっとそう思って いました。』そして万一双門に挑戦する日が くるとしたら、それは日本の滝百選を99箇所 訪ね終え、残すは双門の滝のみとなった 場合だけだと考えていました。本来ならば、 早戸、三条、御来光、茶釜、松見、田立、 八ツ淵と難攻滝を次々と踏破した勢いで 2011年度中に双門の滝にもチャレンジ すればよかったのでしょうが、仮に双門の滝 から無事に行って帰ってこれたとしても 七ツ釜が残ってしまう以上、百選マスター にはなれないため、私は双門の滝に挑戦 しようという気はさらさらありませんでした。 しかしながら、2012年3月にどうやら七ツ釜滝 への道が約7年半振りに復旧、開通しそうだ という情報を入手した私は、ついに 双門の滝に挑戦する決意を固めました。 そして2012年のGWで双門と七ツ釜の2つの 滝を一気に攻略する計画を立てました。最初に 最も難易度が高いとされる双門の滝に挑戦 して、その後、体力の回復を待って七ツ釜に 挑戦するという計画です。 しかし、双門の滝は下手をすれば命を落とし かねない難攻滝であり、行くと決意を固めて からも、ずっと心は揺れ惑い、毎日のように 滑落する夢を見るなど恐怖心と好奇心が 激しく葛藤する日々を過ごし、決意を固めた 後も本当にチャレンジをするのかずっと迷って いたこともあり、本気になる(覚悟を決める) のが遅すぎました…。2011年度に早戸、 三条、御来光、茶釜、松見と立て続けに 難攻滝にチャレンジした時にはかなり時間を 掛けて体力作りをしたのですが、今回は 最難関の滝に挑戦しようとしているのにも 関わらず心身共に準備不足は明らかでした。 本当はもっと体力を付けるべきだったんじゃ ないか…、本当はもっと体重を落とすべき だったんじゃないか…という不安な気持ちを 拭えないままに…、そして万が一の時は 死ぬんじゃないか…という不安と恐怖に 打ち勝つこともできないままに双門の滝に チャレンジする当日の朝を迎えてしまいました。 こんな状態で本当に双門の滝にたどり着くことが できるのだろうか…。自分自身でも半信半疑の まま双門の滝へと続く道を進みました。そして 歩き始めて2時間余り経過したところで後続が 来たので、道を譲ろうとしたら、何とそれは 顔見知りの滝仲間の2人でした。私は死ぬほど うれしくなり、元気と勇気が百倍になりました。 あぁ〜『これできっと』何とか無事に双門の滝 まで行って、そして帰ってこれるに違いないと 確信し、気がとても楽になりました。(無事に 双門の滝に行って帰ってこれたのは彼らの おかげだと感謝してますが、下手すりゃ 死ぬかも知れないと覚悟を決め、ハードルを 限界まで上げて挑んだせいか、正直双門は 予想以上に楽でした。怖れおののいていた 水平梯子・天空梯子も拍子抜けで結局体力が 尽きることもなく余力を残して帰って これちゃいました。) こうして双門の滝を無事にクリアすることが できたので、ついにあとは七ツ釜滝に行く ことができれば念願の百選マスターです。 七ツ釜滝は双門の滝と並び称される難攻滝 ですが、私には『双門の滝に行けたら七ツ釜滝 にも行けるはず』『7年余りの封印から復旧・ 開通する以上、万全の安全対策が施されて いるはず』という2つの確信がありました。 このため、双門の滝から帰ってきたら間髪 いれずに七ツ釜滝にも挑戦したいという 気持ちがありましたが、実際には翌日から 全身筋肉痛ならぬ、全身激痛におそわれ、 また天気も翌日から崩れ、さらに翌々日から 3日間で七ツ釜滝のある大杉谷に450mmの 雨が降るほどの悪天候となりました。このまま では七ツ釜滝&百選マスターはお預けに なってしまうかも…というような諦めにも近い 気持ちが頭をよぎりましたが、ようやく何とか 天気が好転しそうだったので、双門の滝から 中4日で七ツ釜滝に挑戦することになりました。 七ツ釜滝へは日本の滝百選の中では最長の 6時間20分もの時間を要してしまいましたが、 予想通り道は整備が行き届いていました。 また前述の通り、3日間降り続いた雨により、 七ツ釜滝は大増水していて、これまでの私の 滝の概念を根底から覆すようなとんでもない 大豪瀑となっているなど、感動のフィナーレと 共に百選マスターになることができました。 改めて、滝百選に選ばれているすべての滝を 訪ね終えた感想をひとこと。本当に本当に ツラかったです。そもそもそういうことに挑戦 しようという気がなかったので、まさか自分が 百選マスターになるなんて夢にも思って いませんでした。 百選滝への訪問数が50、60、70と着実に 数が増えて行ってもハナから自分には絶対に 無理だと諦めていた滝が何本もあること などから『最終的に百選マスターを目指す、 何としても百選マスターになる』という気持ちを 抱いたことは皆無に等しく、百選マスターに なるなんてことは私にはあまりにも非現実的な ことで、やはり夢のまた夢だと思っていました。 それは百選滝への訪問数が90を超えた時も やはり同様で本当の意味で『百選マスターに なってやる』と思ったのは七ツ釜滝への道が 開通・復旧することを受けて双門の滝と併せて チャレンジしようと決意した『最後の最後の 大詰めの時』でした。 そんな感じだったので、もう一度やれと 言われても絶対にやりたくありません(笑) 正直に言って滝巡りをいつやめようかという ことはいつも考えていました。実は一人で 滝に行けなくなったら滝巡りはその時点で やめようと思っていたことなどもあり、やはり 滝には一人で行って帰ってきてこそ 『一人前の滝好きだ』という考えは今でも 少しも変わりがありません。 なので、一人では行けなかった、連れて行って もらった滝がある以上、胸を張って百選 マスターだとは恥ずかしくてとても言えないです。 この他にも百選マスターになった後で、色々と 感傷的になることやマイナス的なことを考え たりもしましたが、まぁ〜それは置いといて、 今後はノンビリと自分なりの『裏滝百選(百選 クラスまたはそれらを超越してるのではないかと 思われる滝)』を見付けたいと思います。 ちなみに百選マスターとなった時点では40本の 『裏滝百選』候補の滝を見付けています。 あと残り60本は焦らずに一生を掛けてゆっくり ノンビリと気長に探し出すことができれば いいなぁ〜って思っています。 |