後編
「ひぁっ、あ、あぅ――っ! ふぁ……んっ、んぅ……シロウッ!」





セイバーが鳴いている。

俺のすぐ下で、俺が動くたびに。

声と、淫らきわまりない蜜の音。
 
脳髄を破壊するかのようなその刺激。
 
セイバーの腕が俺の首に回され、脚はしっかりと腰のうしろで組みあわされ、その瞳からは透明な雫があふれていた。
 
俺の名を呼びながら、ちからの限り抱きしめてくるセイバー。

お互いの腰がぶつかり合うたび、俺の物に体内をえぐられるたび、彼女は快楽に打ち震えた。
 
こんなセイバーの姿、いったい他の誰が想像できるだろうか。
 
俺だけが見ることを許されたこのセイバーの痴態。



「はぁっ、ん、んっ……んぁっ!」
 
鳴き続けるセイバー。
 
傍から見れば俺がセイバーを責めさいなんでいるように見えるだろう。
 
だが、実際は違う。
 
ぽた……ぽた……と、セイバーの頬や首筋や胸元につたうしずく。
 
俺の汗だ。
 
俺は――もうすでに限界寸前だった。

 



そもそも無謀だったのだ。
 
一度、セイバーの攻撃によって限界ぎりぎりのダメージを受けたというのに、そのすぐあとに更なる強敵に向かうことなど。
 
正直言って、セイバーの『ここ』は恐ろしいぐらいの破壊力を持っている。
 
もともと鍛えられた身体をもつセイバーは『ここ』の筋肉も発達しているらしい。
 
さらに性への好奇心も意外なほど強いし、おまけに素直だ。
 
教えられたことはすぐ実行に移すし、回数を重ねるごとに自らもいろいろなことを学び取り成長している。

「はぁ……んっ、んっ、んっ……シロウ……ん」

だからこうやって、内部を……うっ、うごめかすようなことも最近はしてくるようになったわけで……
 
やばい。
 
もうそんなに持ちそうにない。
 
しかし、逃げ出すにも退路は完全に絶たれているし、さっきのような小細工を弄する余裕も今回は無い。
 
惰性的に腰を動かし続ける。
 
奥をこづくたびにセイバーは歓喜の声で答えてくれるが、余裕を持ってそれを見ることなどできない。
 
シロウ、シロウ、と俺の名を連呼するセイバーだが、もはや俺はその声に応えられそうに無かった。
 


さすがに……ここまでか……
 
このままでは、俺はセイバーより先にイッてしまい敗北することになる。

一瞬の快楽に屈したあと、襲いくる敗北感。
 
そして、セイバーに「もう……おわってしまったのですか?」と言われることになるのか。






「――――っぐ!」

脳が灼熱につつまれる。

い、いやだ。
 
やっぱり、それだけは耐えられない。
 
負けたくない……というよりそうやってセイバーをがっかりさせたくない。
 
くそぉ――あきらめるな。
 
ギルガメッシュと戦った時だって、アーチャーと戦った時だって、俺は決してあきらめなかったじゃないか。
 
それらよりも今回は別の意味で苦しい戦いかもしれないが、絶対にあきらめることなどしない。



で、でも……どうする?
 
どうやればこの絶対絶命の窮地を脱することができるというのだ。

渾身の力を振り絞ればどうにかなるというような戦いではないのだ。

どうすれば……どうすればいいんだ。

「んんっあ……シロウ、はぁ、んっ、んっ、あぅ」

くっ、と、とにかく……少しでも時間稼ぎを。



俺は腰の動きを止めた。

「あ……シロウ……?」
 
急に動きを止めた俺にセイバーが怪訝な声をかけた。
 
悪いな……これ以上動いてたらイッてしまうから、って、こらセイバー! 腰を動かすな!
 
俺はあわててセイバーの腰も止める。

「んっ……あ、シロウ、ん、ん、動いてください……もう、意地悪しないでください……」
 
どうやらセイバーは俺がまた意地悪で焦らしていると思っているようだ。
 
全然違うけどな。
 


ふうっ、と俺は心を落ちつけた。

「シロウ……シロウ……」
 
泣き出しそうな声音でセイバーがお願いしてくるが無視。
 
自爆してしまうから。
 
とにかく、なんとか現状を打破しなければいけない。

「んっ……んっ……は、ぁ……」

「く……っ」
 
動けないならばと、膣内だけでも必死で蠢動させてくるセイバー。
 
ください、ください、とひたすらおねだりしてくる。
 
こ、これは……このままでもそう長くはもたないぞ。

う、あ……もう、やばい……

くっ!



あっ、そういえば、こういう時はそれとは全然べつのことを考えると、より長く保つ効果があるというのをどこかで読んだ記憶がある。
 
数学の数式とか物理とか英語とか古文とか、セックスとは全然別のもの、できるだけ小難しいものに意識をうつすのだ。

それがどれほど効果があるものなのかわからないが、座したまま放出の時をむかえるよりはましだろう。

俺は股間のものから意識を切りはなした。

頭に羅列するは脈絡のない知識。

これまでの人生でつちかわれたありとあらゆる知識が脳内を駆け巡る。

紫式部やらニュートンやらアインシュタインやら、はてはアリストテレスまで。

うろ覚えの知識を総動員してセイバーに対抗する。



が――



「シロウ……シロゥ……ん」

切なげなセイバーの一撃に、それらのすべてがあっといまに吹っ飛んだ。

ぐ……駄目だ、こんなのじゃ。

しょせん、つけ焼刃の作戦ではセイバーを打倒することなどできるはずもない。

も、もう少し具体的に思い出せるものを。



そういえば……最近、俺が必死で身につけようとしていることを思い出す。

英語だ。

いずれ倫敦へと行くことがもうすでに決まっているから、英語ぐらいはできないと話にならない。

そういうわけで現在勉強中。

いまのところは遠坂が俺の英語の先生だ。

もう少し上達すればセイバーのキングス・イングリッシュにも慣れたほうがいいとかなんとか、そんなことも言われている。

あ、そういえば、このあいだ遠坂が「ベッドで学ぶ英語はためになるらしい」なんて、情報源はいったいどこなんだ、っていう勉強法をひろってきたことがあった。

もちろん俺たちは試したわけだが、まあなんだ……それには相手が英語を母国語として使っている人間でなければ意味がないということがわかった。

初めのほうはなんとか英語でやろうとしてた遠坂だけど、入れた途端「ああ……やだ、もうだめ、イッちゃうよぉ……」なんて感じになってまったく意味がなかったというか……

「ふあぁぁ……シロウ……動いてください……」

そうそう、こんな感じで……って。

「ぐ――っ!」

しまった。自爆った。

意識を遠ざけるどころか、思いっきり懐に飛び込んでしまった。

雪のような白い肌をうすいピンク色に染めたセイバーが、俺の下で悩めかしく身体をうごめかせている。

それが視線に入り、それと同時に股間から忍び寄ってくる悪魔の快楽。

「っ――はっ……うぅ……」

射精感がこみ上げてくる。

も、もうだめか……

俺は……この夜の戦いでもセイバーに勝てないのか……

ぐ、あ……で、出る……

ま、だ……出したくない……

勝ちたい……

セイバーを……悦ばせてあげたい……









――ならば、せめてイメージしろ。



脳裏に響く声。

どこかで聞いた言葉。



現実では敵わない相手ならば、想像の中で勝て。

自身が勝てないのなら、勝てるものを幻想しろ。



ああ、これは。



――所詮。おまえに出来ることなど、

       それぐらいしかないのだから――









「――――同調トレース開始オン

誰にも聞こえないぐらいの小さな声で、俺だけの魔術を発動した。







腰の先端から響いてくるねっとりとした感触を忘却する。
 
イメージするのは剣。
 
頭の中に一振りの剣を形成する。
 
そしてそこに集中すべく意識を注ぎ込み……

「シロウ――シロウ……んぁ、んっ」
 
再び現世に引き戻されそうになるがなんとかこらえる。
 
脳裏に浮かぶ剣。
 
こうすることで意識をセイバーから遠ざけ、少しでも長持ちさせようとする時間稼ぎ、小細工。
 
正直なところそれだけのこと。

脳裏に浮かんだ思いに素直にしたがったが、ただそれだけのはずだった。



だが、それがとんでもない結果を導き出す。

「……これは」
 
繋がる。
 
何かと繋がる。
 
一振りの剣がかき消え、別のものに生まれ変わる。



それは……剣から鞘へ――



「ふぁぁ……っ! あ、あ、な、なにが……!」
 
セイバーの声音が甲高く響いた。

剣ではなく、それをおさめる鞘。

十年前のあの時から、己の内になにか得体の知れないものがあると漠然と認識してはいたが、ここまではっきりと感じたことはこれまでなかった。

「うぁっ、ん、んっ……ああ、これはいったい、シ、ロウ!」
 
俺の中のそれと、セイバーの中のそれ。
 
繋がる。
 
いやもう、繋がっているといえばさっきからずっと繋がってるけど、それとは違う、別の繋がり。
 
肉体的なものではなく、精神的なものとも少し違う……どこか魔力的なものを感じさせる繋がり。
 
おさまるべきところに初めてそれがおさまった、そんな感覚。



「ああっ、シロウ! お、おかしくなりそうで、す、んぁっ!」
 
セイバーが泣き叫びながら大きくのけぞる。
 
身体を高潮させ、俺の物をぎゅうっと締めつけてくる。
 
先ほどまでなら耐えられなかっただろうそれを、俺はなぜか平然と受け止めることができた。

先ほどまでの焦燥感がきれいさっぱり消えている

なんだ……なんだこれは。
 
身体の奥底からとんでもない「力」がわきあがってくる。
 
いや、正確には俺の身体の中にある何かに、どこからかとんでもないほどの魔力が流れ込んできて、それが俺の「力」となって放出されている。
 
これは――もしかしてセイバーから流れてきているのか?
 
なにしろ、腰の先、いわゆるその一物の先端から腰の奥に、ずん、と重たく響いてくるのだ。

「ひぁあぁぁっ! んぁっ、くっん……んっ!」

そして、セイバーがこれだけ乱れているとなれば、やはり何か彼女と関連性があると考えるのが自然だ。
 
細かいことはわからない。

わからないが、そんな俺にもひとつだけ理解できたことがある。





形勢は劇的なまでに逆転した。








腰を突き出す。

「くぁっ……」
 
天井をこする。

「ひぁ――!」
 
グラインドさせてみる。

「あふぁぁぁ……」
 
と。
 
いちいち反応してくれるセイバー。
 
かわいい。たまらなくかわいい。

「セイバー、もっと鳴き声聞かせて」

余裕の出てきた俺はそんなことを言ってみる。

「そ、んぁっ、そんな……」
 
ぐっちゃぐっちゃ、と、とんでもない卑猥な音を響かせながら、セイバーという名の楽器を奏でる。
 
特にここ、膣内の天井部分、ちょっとだけざらざらとしたこの部分がセイバーの弱点。
 
突いてみる。

「ひゃぁ――ぁんっ!」
 
キンとした甲高い声を放ちながらセイバーがのけぞった。
 
それに呼応するかのように膣内の締めつけが増す。
 
ここがセイバーの弱点であるということはかなり前からわかっていたことだったが、今まではそうそう攻めることはできなかった。
 
なにしろここを攻め立てたらその分セイバーの中も収縮するのだ。
 
つまり諸刃の剣。
 
普段は最後の瞬間以外はなるべく手を、というかアレを出さないようにしていた。
 
でも、今日は違う。



「よっ……と」

「ひあぁっ! あぅ、んっ!」
 
何度でも攻め立てる。
 
もちろん、肉壁を蠢動させることで彼女は対抗してくるが、今の俺ならばそれに耐えることがじゅうぶんに可能だ。
 
それどころかさらに俺の物がより凶暴さを増していき、耐久性もあがっていくような気がする。
 

いくらでもそこを攻めたてることができるが、それでも俺はその急所の部分からいったんアレを引く。

そして、しばらくゆっくりと抜き差しを繰り返した。

何ごとも緩急が大事。

「ふぁぁ……ん……ん」
 
とりあえず落ち着いた呼吸に戻るセイバーだが、甘い。
 
唐突に、セイバーの『そこ』を思いっきり突き上げる。

「ひあぁぁっ! ひぃん――っっ!!」

あられもない声を上げ、身体を痙攣させながらブリッジするかのように背中をそらせるセイバー。
 
繋がっている部分からは大量の蜜があふれ、俺の身体を汚している。
 
どうやらイッてしまったみたいだ。

「はぁ……ん、ん、はぁ……」
 
うっとりとした顔つきで呼吸を整えようとするセイバーだが、俺は攻撃の手を緩めなかった。

「まだだぞ、セイバー」

「……え?」
 
にっ、と笑い、再び『そこ』を突き上げる。

「くぁっ!」
 
またのけぞるが、一切の手加減をしない。
 
徹底的に、突く、突く、突く!
 
ざらざらとした部分が亀頭の先端にあたる。

「ひぁっ! シ、ロウ、あ、ま、また、んっ! ふぁ……あ……ひぃん――っ!」
 
きゅん、と俺の物を締めつけイッたことを知らせてくる。
 
でも俺はまだやめない。

「あふぅ、んっ! ひぁ、も、シロウ……ゆる……んぁっ! ゆるして……くださ、ふぁぁんっ!」
 
またイク。でもまだ突く。
 
連続的な痙攣がセイバーの身体を襲い、部屋中にセイバーの鳴き声と蜜のあふれ出す音。
 
また締めつけてきた。
 
どうやらイキっぱなしな状態のようだ。
 
体力のあるセイバーだからこそここまで耐えられているが、普通の女性ならばとっくに失神していてもおかしくない。


 
ぷしゅぅ、と小さな水の音がして、お腹の辺りがなにやら生暖かいものにつつまれた。
 
ん、これは、どうやらまた潮を吹いたみたいだ。

「セイバー、すごいな。お漏らししたみたいになってるぞ」

「ひぃんっ! そ、そんなこと……ふあっ!」
 
泣きながら、それでも耐え切れない快楽に理性を崩壊させていくセイバー。
 
布団はセイバーが吐き出した蜜によってびしょびしょになっている。



「だ、駄目です、シロウ」

「ん? なにが駄目なんだ」

「こ、のような……姿、ふぁっ……ん、これ以上は……んぁっ!」
 
ん、なるほど。
 
いくら相手が俺であるとはいえ、こんな姿を見られるのはやっぱり恥ずかしいみたいだ。
 
まあ俺も、これだけ乱れたセイバーを見たのは初めてだしな。

「心配しなくてもいいよ、セイバー」

「んっ……はぁ……はぁ……?」

「いじめられて泣きそうなほどに感じまくるセイバーっていうのも、新鮮で見てて嬉しいし」

「そ、そんな……こと……」

「だからさ――もっと俺にセイバーのいやらしい姿を見せてくれ」

「くっ! んあぁぁっっ!」
 
つきこむと同時にセイバーの嬌声がまた鳴り響いた。
 
さらに休む間を与えず、徹底的に攻め立てる。

「ふぁ……ん、ん、シロウ……」
 
セイバーは息も絶え絶えな様子。
 
それを見下ろしながら、どこをどうやって弄くったらセイバーが感じるのかを分析する。
 
とりあえず最大の弱点はすでにわかっている。
 
先ほどから攻めているこの部分、この膣内の天井をお腹の内側からえぐるように突くと、

「ひゃぁん――っ!!」
 
こういうふうになる。
 
こうやってゆっくり引き抜いてやると、ちょうどカリ首が膣内をこするようで心地良いらしい。

「ふぁぁぁ……ん……」
 
だから、こんなふうにうっとりとした声が漏れる。
 
そしてセイバーのもっとも深いところ、俺以外の人間では決して到達できない場所。
 
亀頭の先端が何かに触れた。

「うっ、くぅ……んっ、シ、ロウ」
 
苦しいような切ないような声。
 
俺はセイバーのその子宮口を自分の物で押し広げるように突きこんだ。

「ひぁっ! あっ、くっぅ――んっ!」
 
切り裂くようなセイバーの悲鳴と、それにともなった殺人的なまでの膣内の締めつけ。
 
俺の物を、より深くまで誘い込むような肉壁の蠢動。
 
内部のあらゆるところから溢れだしてくる甘美な蜜が、セイバーと――俺を狂わせていく。

背筋から這いあがってくるものを感じる。
 
そろそろ……俺にも限界が近づいてきたようだ。
 
何でここまで保ったのか……そんな疑問が残りはするものの、正直なところもうそんなものどうでもよくなっていた。

「セイバー」
 
震える手ですこし乱暴ぎみにセイバーの顔をつかんだ。

「ん……あ……シロウ……」
 
もう、視線すらさだまらないセイバー。
 
金色の髪が数本ほつれ、汗によって額にはりついている。
 
それでも、俺の顔をなんとか確認するやその美貌をしずかにほころばせた。
 
外れかけた脚をもう一度俺の腰にまわし、すべてを受け入れるかのようにぎゅぅっと押し込んできた。

「くっ、セイバー」

「はぁ……はぁ、シロウ」
 
お互い汗にまみれ、身体も思考もどろどろに溶けた状態。
 
それでも最後の理性でもって俺たちは口付けを交わした。


ちゅく……ちゅく……

 
とろけた飴を唇で交換しあうかのような甘ったるいキス。
 
お互いの腰は溶け合い、いまなお狂いそうなほどの快楽を導きだしている。
 
俺がセイバーの口内に唾液を流しこむと、彼女はなんのためらいもなくそれを飲み干した。
 
のどが鳴り、もっとくださいというような感じでよりいっそう唇を押し付けてくる。
 
セイバーのあまりの可愛さに俺の脳も破壊寸前。
 
ああ……わかってる、セイバー。
 
もっと飲ませてあげるよ。



俺はセイバーの腰をぐっと引き寄せる

「いくぞ――セイバー」

「……はい……シロ、ウ……きて、ください」
 
最後の時をむかえるべく、猛然と腰のうごきを加速させた。
 
ぐっちゅ、ぐっちゅ、と俺とセイバーがぶつけあう腰のあいだから粘りつくような蜜の音。
 
あたりにその生暖かい粘液がとびちり、周囲を花の蜜のような甘い香りがつつんだ。

「あっん――っ! はぁっ、んっ、んっ……くぁ――んっ!」
 
暴れるセイバーの腰を逃がさないようにがっちりとつかむ。
 
そびえる怒張で、ぐりっ、と奥を突いてやると、セイバーが悲鳴を上げながらのけぞった。

「ひあぁぁ――ん、っ!」
 
動きをふうじられた金色の蝶は布団のうえで淫らに舞う。
 
膣内が激しい収縮をくりかえすが、その締めつけをこじ開けるように俺はただ乱暴に腰を突きまくった。
 
背をそらせ、のけぞるセイバー。
 
白魚のようおなかが俺の瞳をまぶしく撃ち、俺はそのおなかを内側からひっかくように突き上げた。

「くぁんっ! シ、ロウ……ぁぅっ!」

「く――っ」
 
熱い蜜を俺にふりかけながらセイバーが乱れる。
 
俺も限界。
 
極悪なまでに膨れ上がった俺の物が、そのすべてを解放されたがってセイバーの体内で暴れた。

「セイバー! 出、すぞ……!」

「ひぃあ……っ、は、んっ、はい……シロウ。あなたを……私に注ぎ込んでください、シロウ、んっ! はぁ……私、を、あなたの……シロウの『もの』にしてください――っ」
 
そ、そんな言葉は反則だぁ――っ!



「ぐっ……ぁ――!!」

耐えに耐えてきたもの、溜まりに溜まったものが一気に解き放たれた。

「ひぁっんっ! あ、あぁ――ふあぁぁっ――っ!!」

あられもない絶叫。

俺の物がセイバーという美しく白き剣を、よりいっそう白く染めあげていく。

「ああぁっ! シロウ! シ、ロウ――っ!」

「セ、イバー……」

どくっどくっ、と大量の精液がセイバーの体内に注ぎ込まれていった。

それをもっとも深い部分で受け止めながらセイバーは泣き、俺の物を痛いほどに締めつけてくる。

そのあまりの気持ち良さに、俺は白濁した液を吐き出しつづけながらも小刻みに腰を動かし続けた。

今までに感じたことの無いような快楽。

すべての神経を麻痺させるかのような陶酔感に俺は酔った。





「はぁ……はぁ……」

身体全体をつつむ疲労感。

でも、それ以上の満足感。

俺はセイバーを見下ろしながら、やっと勝利をつかんだことを実感した。

セイバーは胸を上下させ、静かによこたわっている。

どうも、意識を失ってしまったみたいだ。



ちょっとやりすぎたかな。

間違いなく、これまででもっとも激しい性交だった。

俺ももちろんそうだけど、セイバーはそれこそ何度もイッてたからな。

失神してしまうのも無理ないか。

しかし、あのセイバーの意識を失わせるとは……俺もすこしは自信を持っていいかな。

「でも、なんだったんだろうな、あの感覚」

セイバーに勝てた要因は、とつじょ俺におとずれたあの不思議な感覚だった。

俺の内部の何かに、とんでもない魔力が流れ込んでくる不思議な感覚。

もう、どんな敵でも来いや、ってなぐあいに「力」がみなぎってきて、そしてあのセイバーをあれほど狂わせたという事実。

うーん、わからないな。

原因なんか想像もつかない。

でもまあ、特に悪いことではないだろう。

こういうことに特化したものなのかは知らないけど、セイバーを悦ばせることもできるし、耐久力もやたらとあがったみたいだし、それに……って、あれ?



「……む」

俺は下を見た。

いまだにセイバーの中に入ったままの物。

すべてを出し尽くしたはずのそれなんだが……

「なんでさ」

まだ暴れ足りん――そんな言葉を吐きそうなほどに、猛りくるったままの我が愚息。

これにはさすがに呆れてしまう。

セイバーの中が気持ちいいってのはよくわかるんだけど、節操がないというか何というか。

いま、出したばかりなのに……

「ふぁ……んっ……ん」

「……」

セイバーの心地よさげな声が聞こえた。

それに即座に反応する俺の物。

ビクン、と反り返り、セイバーの内部をうがつ。

「んっ、あ、あ……シ、ロウ?」

セイバーが目を覚ましたみたいだ。

そりゃ、自分のなかでこんなものが暴れていたら、ゆっくり失神してることもできないだろうな。

「セイバー……」

「え……あ、はい。なんですか? シロウ」

「もう一回いくぞ」

「え? あっ、そんなっ……んぁっ、くっ、んっ、あぁ――っ!!」



セイバーの鳴き声とともに、その日の夜は更けていった。



















朝日が差し込むキッチン。

俺はすこし遅めの朝食を準備していた。

ジュー、という音と、芳ばしい匂いがキッチン全体にひろがっていく。

空腹状態であるためそれだけでも食欲をそそる。





昨夜はほんとうにいろいろあった。

あれから、俺とセイバーはけっきょく明け方ちかくまで抱き合っていた。

勝負がどうとかプライドがどうとか、そんなもの途中から完全に吹き飛んでいた。

ただただ、俺はセイバーの身体をむさぼりつくした。

前からが二回、横から一回、後ろから二回、口の中に二回。

立ったまま壁に手をつかせて後ろからやったりとか、四つん這いにさせて自分の手でひろげさせたりとか、俺の目の前でひとりエッチをさせたりとか、なんか……とんでもないことばっかやらせちゃったよな。

でも、セイバーってそんな俺のわがままを素直に聞いてくれるから。

俺はなんど出しても次から次から体力が湧き出してきて衰えをしらなかったし、セイバーはセイバーでそんな俺に必死でこたえてくれた。

いじめればいじめるほどセイバーは可愛くなっていったし。

昨夜も思ったけど、セイバーってそういうのが好きなのかも。

ああ、でも……ちょくせつ彼女に聞いてみたら「貴方だからです、シロウ」なんて答えそうだよな。

うん。

まあ、なんだ。

やっぱりセイバーはかわいい、ということだ。



「……あっ」

そんなことを妄想していたら、フライパンの中でプレーンオムレツが苦いにおいを発しながら焦げついている。

やばい、俺としたことがこんなミスをしてしまうとは。

妄想もいい加減にしておかなければ。






出来立ての朝食を持って居間に行くと、二人の女性が俺を待っていた。

遠坂とセイバー。

朝にやたらとよわいい遠坂は、普段からこの時間はだいたい機嫌が悪いもんなんだけど、今日はいつにもまして機嫌が悪そう。

すっげぇ目つきが悪くなってるし、おまけに目の下にはくまのようなものもつくってる。

なんだ、どうしたんだ?

昨夜、眠れなかったのかな?

またなにか怪しげな魔術の研究でもしていたのだろうか。

「ええと……おはよう、遠坂」

そう言って目の前に彼女の分のお皿をおくけど、

「……」

無言。

それどころかさらに目つきが恐ろしいことになっていく。

う……っ。

いまはそっとしておいたほうが良さそうだ。



いっぽう、視線を転じればいつものようにピンと背筋を立てて行儀よく席についてるセイバー。

「おはよう、セイバー」

そう言うがじつは今日二度目のあいさつだ。

一度目はもちろん、さっき俺の部屋で起きたときに裸で抱き合ったままかわした。

「お、おはようございます」

めずらしく少したどたどしいセイバーの挨拶。

まあ、昨夜のことがあるから仕方ないかもしれない。

ん、でも普段は……ああいうことをした日の翌日でももう少し普通に接することができたと思ったけど、今日はなんか違うな。

視線が合うと、

「……ぁ…………」

顔を赤くしてうつむいてしまうし。

うーん……昨夜のことをまだそんなに気にしてるのかな。

そりゃまあ……いつもより激しかったのは間違いないけど、別に初めてってわけでもないから。

「……」

な……なんか、向こうのほうから凄まじいばかりの殺気がほとばしっているような気がするんだけど。

気のせい――だと思うことにしよう、うん。

「あ……まあ、その……なんだ。ち、朝食に……しようか」

俺のへたくそなごまかしとともに、衛宮家のやや殺伐とした朝餉が開始された。








「さて……と……」

朝食を何とか平和に終えて、そのまま俺はすぐ道場にやってきた。

さっきセイバーと話をして今から剣の稽古をしたいと申し入れたのだ。

決着をつけるべく。

最後の戦い。



俺とセイバーの剣の技量はかけ離れている。

普通にやってはかなうはずもないだろう。

それでも今日の俺には勝算があった。

その第一の理由がこの二本の剣。

聖杯戦争の時、無意識のうちに自分の武器として投影した二刀。

たぶん……俺にとってもっとも意義深い因縁の込められた剣だ。

もちろん、いま俺が持つ二刀は自分で投影したものではなく、すこし短めの木刀を使ったもの。

それを持ち、軽く振ってみる。

「……ん、いい感じだ」

重さも感覚もまったく違うわりに驚くほどしっくりくる。

これが今日の俺の武器。



そして第二の理由。

今日の朝食の席で見たあのセイバーの姿を思い出す。

昨夜の敗戦が予想以上のダメージを彼女にあたえていたのか、さっき見たセイバーは驚くほどに元気がなかった。

というか俺に視線を合わせようとしなかった。

セイバーのような確固たる自己をもった女性が、あのような痴態を他人に見せるということはよほど痛恨のことだったみたいだ。

俺としては、まあ……ただの一夜の出来事なんだから、別に深く気にするようなことじゃないと思うけど。

好きあってる者どうしが夜をすごしたら、少しぐらい乱れるのが普通だと思うし。

……きのうは、確かにちょっと普通じゃなかったかもしれないけど。

とにかく、向こうが気にしているようならちょっとひとこと言ってあげるのが良いかもしれないけど、それはまた今度ということにしておこう。

卑怯かもしれないけど、そのおかげで俺の勝ち目が出てくるのならそれにこしたことはない。

……やっぱり卑怯かな。

「ま、今日だけだから」

そう自分に言い訳する。

俺だって一度くらい剣でセイバーに勝ちたい。

それこそ、なんかの事故でもまぐれでもかまわないから。



そんなことを考えていたその時……ゆっくりとセイバーが道場に入ってきた。






勝てる。

そう考えたのはいつごろだったか。

時間にすればほんの数分前、あるいはほんの数秒前、そのぐらいだった気がする。

二刀をかまえ、セイバーと対峙した瞬間はいけるような気がしていた。

彼女からいつもの強さが感じられなかったから。

気合をこめ、空間を切り裂くような掛け声とともに踏み出した時も勝てると思っていた。

そして、右の剣を鋭くひらめかせ、じっと立つセイバーに切りかかった瞬間、俺は勝利を確信したのだ。

そして――



俺の意識はそこで途切れた。






「――っつ、あ……あれ……?」

視界がゆっくりと開けていき、見慣れた道場の風景が飛び込んできた。

「どうしたん――っく、あ、つっ……あ、なんだ、これ……」

きしむような痛みが後頭部に走った。

あわてて手をそこに持っていく。

「……げっ」

とんでもなく大きなこぶの感触。

触っただけでも痛む。

なんだよこれ……というか、俺なんでこんなところにいるんだ?

わからない。記憶がとんでしまっている。

なんとか思い出そうとして――



「ようやく目が覚めましたか、シロウ」

そんな冷たい声が俺の意識に冷や水を浴びせた。



「セ、セイバー……」

目の前には静かにたたずむセイバー。

冷涼たる気配をその身にまとう誇り高き騎士。

俺を見つめる瞳には朝の時のようなためらいが何一つ感じられない。

あの時――薄暗い土蔵で初めてセイバーを見た時を思いおこされる。

……こんな彼女が、ほんの数時間前まで自分の腕の中で泣いていたということが信じられない。

それこそ単なる妄想の産物だったかもしれないと思うほどに。

というか、剣でセイバーに勝てるかも、なんて少しでも思っていた自分が信じられない。

いま目の前にいる少女は、かつて俺が対峙したどんな化け物よりもはるか上を行く怪物だった。

「ではシロウ――目が覚めたのならば剣を取ってください」

「……え?」

「剣の稽古なのでしょう?」

「まあ……そうだけど……」

今日はもういいかなあ……って正直そう思ってるんだけど。

どうやっても勝ち目なさそうだし。

「……剣を――」

「はい……」

静かなる殺気が、その答え意外を発することを禁じた。

俺は己の見立ての甘さを呪いながら、両手にあの二本の剣をかまえた。

さっきまであれほど頼もしかったその剣が……いまはやけに軽く感じられた。






地獄。

今日……俺は地獄を見た。

わずか数時間。

しかし――俺にとっては永遠のごとき数時間だった。

セイバーに打ちかかるたびに俺の記憶は途切れ、目を覚ますたびにいまだ地獄が続いてることを嘆いた。

「も、もう少し手加減してくれよ、セイバー」

俺の微妙に情けない……それでいて切実なまでの意見は、

「じゅうぶん手加減しています。本気でやっていれば今頃あなたは動けなくなっていますから」

無情なまでに簡単にはねつけられた。

そしてようやくこの地獄が終わりをつげ、俺は死にそうなまでの疲労感を引きずりながら冷たい道場の上に倒れていた。

「大丈夫ですか、シロウ」

なんだかやたらとおざなりにセイバーが聞いてきた。

「……俺のこと、全然心配してないだろ、セイバー」

「当然です。力加減はしっかりと調節していましたから」

なるほど。

つまり、死なない程度にきっちりと痛めつけてくれたと、そういうわけか。

これはもしかして……もしかしなくても昨夜の意趣返しか?

そう聞こうとしたが怖いのでやめておいた。

へたれかもしれないが……道場でのセイバーは本気で怖いのだ。

とくに今日は。

「そろそろ昼食の時間ですね」

「あ、ああ、そうだな」

とりあえず俺はほっとした。

セイバーが食事を抜くことなどあるはずがないから、これで今日の地獄は終わる。

明日になればセイバーの機嫌も直って、

「では続きは昼食のあとにしましょう」

そう上手くはいかないみたいだ。

「昼食の後って……そんな体力残ってないぞ」

「心配いりません。そのあたりもしっかり調節しますから」

ま……まだいたぶり足りないというのか……セイバー。

もしかしてマゾだけでなくサドの素質もあるのか。



「ではシロウ。そろそろ昼食の準備を」

それだけを言ったセイバーは、もう用は無いといわんばかりにさっさと道場を立ち去ろうとする。

汗の一滴もかかず、髪の毛の一房も乱さず、何事もなかったように歩くセイバーのうしろ姿。



それに、俺は最後のあがき……というか負け犬の遠吠えを叩きつけた。



「くそ、今夜も徹底的にいじめてやるからな。覚えてろよ、セイバー!」



むなしい響き。

でもそれに――





「はい……シロウ」



そんな答えが返ってきたような気がした。







どちらが勝ってどちらが負けたのか。

判然としないまま俺たちの戦いは第一幕を下ろした。


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あとがき

セイバーは士郎にいじめられるのが好きなのです。
というわけで、妙に長くなったけどようやく終わったVSセイバー。
じつはこの話、Fateをプレイした後、いちばん最初に考えた話だったりします。
入れたまま「同調、開始」とりあえずこれがやりたかった。
これであんなに強くなるのは自分的設定、もしくは俺的妄想。
セイバーエンド後じゃできないプレイ。
もしかしてこれを使えば「黒セイバー」にも勝てるかも。
まあ、向こうはこっちのセイバーみたいに手加減してくれないだろうから、
ヤルまえに殺られちゃうか。
あ、それならあの最後の戦いみたいにライダーに協力してもらえば良いのか。
だったらその前にライダーも少し調教しておかないと……

なんというか、あとがきでまで妄想してしまった。