「え、プレゼント……ですか。私に」

そう言ってシロウが差し出した物を私は受け取った。
それは、ピンク色の小さな小箱。
可愛らしい包装が施され、丁寧にリボンまで結ばれている。

「あの、開けてもいいのですか?」
「もちろん」

シロウはにっこりとうなずいた。
その微笑がどこか危険な香りがすると私の直感が告げていたが、そんな直感をシロウからプレゼントされたと言う嬉しさが押し流す。

今日二度目の直感無視。
そのおかげで、私はとんでもない目にあうことになる。

小箱から出てきたのは小さな卵型の物体。
それは先ほど向こうの店で見たものと同じ物だった。

「これは、確かこの店にあった」
「そう」
「どういった用途の物なのですか?」

私がそう聞くと、シロウはしばらく考えたあと、女の子が身につけるための物だ、とそう言った。

「身につけるものなのですか?」

それは予想外だった。
振動するという機能を考えればマッサージ用の道具か何かだと思っていたのだが、まさかアクセサリーの類であったとは。

「着けてみてくれないか」
「はい、それは構いませんが、ですがどこに……」

イヤリングにするには大きすぎるし、止め具のようなものもない。
このコードを首に掛けてネックレスにでもするのだろうか。あるいはブレスレット?
しかしどちらにしろ、それでは振動するという機能がまるで意味を為さない。
いやそもそも、なぜアクセサリーが振動する必要があるのだろうか。

いずれにしろ、どこにどうやってつけるかがさっぱりわからず、どうしたものかと悩んでいると、

「セイバー、貸して」

シロウがその物体を私の手から取り上げる。

「俺がつけてあげるから」
「あ、はい、それは助かります」

変な場所につけて笑われるのも嫌だし、間違って壊してしまうわけにもいかない。
私はシロウの言葉にうなずいた

「んんー、と、そうだな。セイバー、ちょっと目をつぶっててくれるか」
「目を、ですか?」

おかしなことを言う。
アクセサリーをつけるのに目を瞑る必要があるのだろうか。
とはいえ、別に断るようなことでもないので、私は素直に目を瞑った。

「しばらくそうしててくれ」
「はい」

私はうなずく。
すると、目の前の気配がすっと動くのを感じた。
いくら視界を塞いでいるとはいえ、シロウの気配を感じ取ることなど造作もないこと。
彼はなぜか私の背後に廻り、そのまま体を寄せてきた。

「シロウ?」
「じっとしててくれ」

いぶしかげに問うた私に、シロウは短くそう言った。
あのアクセサリーは背中から身につけるものなのだろうか。
ということはネックレス?
いや、それにしては、シロウの気配がやたらと近い。
背中からアクセサリーを付けさせるというより、その行動はむしろ、背中から相手を抱きしめて逃げられないようにする、そう言ったほうが正しいような気がして……

「あの……シロウ?」

背後から私を抱きしめる赤い髪の少年に問う。

「その、もう付けたのですか?」
「いやこれから」
「そうですか。それで、私はいつまで目を瞑ってればいいのです?」
「もうちょい」

そう言って、私の背後でなにやらガサゴソとやり始めるシロウ。
ローターの場合はゴム被せなくていいのかな、などとわけの判らないことを呟いている。

これが、果たしてどういったアクセサリーを付ける行為なのかはわからないが、こうやって抱きしめられていると、自然と別のことを想像してしまい顔が赤くなってしまう。
なにを馬鹿なことを考えているのだろうか、私は。これはそいういうことではないのだというのに。
……でも、シロウの鼓動がひどく近い。
それを感じていると、胸の動悸が少しずつ速くなってしまうようで、冷静に、心を静めるように息を吐く。
ふう…………おや?
なんでしょう、なんだか、足のほうが急にひんやりとしてきたような気が……
空気を遮るものがなくなり、風通しが良くなったように感じられて、

「え……?」

そこにそれが触れた。

「あぅっ! な……シロウっ、なにをして……ふぁっ!」

スカートがいつの間にかめくり上げられ、その下からシロウの手が入り込んで来ていた。
そして、下着の上から両脚の間にあるソレを撫でてくる。

「や、やめてくださいっ、シロウっ」

スカートの中で淫らな行為にふけっている彼の腕をつかもうとしたが、

「セイバー、動かないで」
「ぁ……っ」

それを抑制する声がひどく近くから、というよりもすぐ耳元で聞こえた。
それどころか、温かく粘つく感触もその言葉に付随してくる。
どうやら彼は私の耳を唇で甘噛みしながらささやいているようだ。

「もうしばらくじっとしててくれ」
「ふ、ぁ……」

言葉と共に熱い吐息が耳孔をくすぐり、反論はあっさりと封じられてしまった。
そうした上で、シロウの指が再び蠢きはじめる。
下着の上から触ってるだけなのに、まるで視認しているような正確さで花弁をくすぐるシロウの指。

「んん、あっ、このような場所で……ん、くっ……駄目です、シロウ」

こうされること自体は……その、あまり忌避することでもない。
これまでも何度かされていることなのだから。
むしろ、こうやって彼のほうから求めてくれるのは……少しだけ嬉しい。
だが、こんな場所で、いつ誰が入ってくるかもわからないこんな部屋でされるのは……

「大丈夫。しばらくは誰も入らないように言ってあるから」
「そ、そうなのですか」

それならば……と言いかけて、いやそんな問題ではないと気づく。
だいたい、アクセサリー云々の話はいったいどこに行ってしまったのか。
しかし、ほんのわずかに気を許した瞬間をシロウが見逃すはずも無く、私が問いただすよりも早く彼の行為が激しさを増した。

「あんっ、くぅ……」

つぷ……と、下着の底布がずらされ、シロウの指が秘唇の中に直接入り込んでくる。
こちらの一瞬の隙も見逃さないとは……
私との剣術稽古でも時折見せる彼独特ともいえる勘の鋭さ。
聖杯戦争やその後の熾烈な稽古で身につけたその鋭さを、何もこんな場所で発揮しなくても……

「もう濡れてるよ、セイバー」
「そんなこと、知りません」

まるでシロウの指を歓迎するかのように蜜が溢れてきているのは私にもわかる。
でも、それを素直に認めることは、私の中にわずかに残った羞恥心が許さなかった。

「そ、そもそも……んんっ、あ、アクセサリーを付けるという話は……んっく……どう、なったのです?」

秘部をくりくりと悪戯されながらも、なんとかそうやって問いただす。
この行為がそれと関係するとはとても思えないのだが、シロウは私の問いに事も無げに答えた。

「こうすることが必要なんだ」
「あんんっ」

指を出し入れされ腰が砕けそうになったが、必死でこらえた。
次第に、くちゅ、くちゅ、という音が雑多な部屋の中に響き始める。
あ、頭がおかしく……なって……

「な、なぜ……んん……必要なのですか?」

溶け去りそうな理性を叱咤しながら聞く。

「俺も使ってみるの初めてだからさ。やっぱりちゃんと濡らしておかないとまずいんじゃないかと思って。セイバーのここに傷つけるわけにいかないし」

ここ……と言いながら、お腹の中をこつこつと指先でノックされた。
その刺激に腰が震え、それが体全体に響いてくる。

「あ、ああぁ……くぅん……んんっ」

傷をつけるとはいったいどういう意味なのか、それを聞かなければならないのに、口を開けば出るのは甘ったるい鳴き声。
蜜壷に収まりきらない液体は少しずつシロウの指を伝わり、私の太腿にまで垂れてきていた。
それが、ひんやりとした軌跡を残しながら足首まで落ちる。
その感覚にもう一度体が震えた。

「きつかったら俺に寄りかかってもいいぞ」

シロウの声。
背後から聞こえるその声に思わず従いそうになるが、私は何とか耐えようと、

「ふあ、あぁぁ……」

することができなかった。
ぐったりと、後ろにいるシロウに寄りかかってしまう。
体重のほとんどがシロウにのしかかっているはずだが、彼はまるで気にも留めず、軽々と抱きしめられた。
私よりもはるかに大きい胸板。
いけないと思っていても、それにすべてを任せきってしまう。

「……んん、ぁ……シロウ……」

体に力が入らない。
さらに、わずかに残った力を抜き取ろうとするように、シロウの指が私の中を掻き回し続ける。

「く……うぅ、んんっ……」

駄目だ。なんとか耐えなければ。
閨でならともかく、こんな場所で乱れるわけにはいかない。
だが……耐えようと思って耐えられるのならば苦労などなくて、一本の指、たった一本の指によって、私のすべてが支配されつつあった。

「ふぁ……んっ、シロウ……っ、そんなに、掻き回さないでくださ……い、んんっ」
「なんでさ。こうされるの、セイバー好きだろ」
「そんな……ことは……」

ない、とは決して言い切れない自分がいる。
ほんの数ヶ月前までは、こんな問いかけなど即答できたものを。
シロウの手によって少しずつ身に纏っていた殻を剥ぎ取られ、むき出しになった体と心は些細な愛撫にもたやすく反応してしまう。
どんな魔術も決して通さない白銀の鎧の下に、こんなにも脆い自分がいるとは想像もしていなかった。

「んっ、ぁ……やめ……ん」

くすぐるように、引っかくように、様々な方法で溶かされていく私の秘唇。
はしたないほどの蜜を溢れさせていることは容易に想像できる。
スカートによって直視できないことだけが唯一の救いか。

「はぁ……はぁ……あ、あぁぁ……」

シロウの愛撫はしつこいぐらいに続くが、そうやって愛撫に身を任せているとほんの少しだけ違和感を覚える。
普段の彼なら、そろそろ、私の……一番感じるところに触れてきているはずだ。
それなのに、秘穴の上で薄皮一枚に護られただけのその敏感な突起は、いまだ何の刺激も与えられていない。

「んっ、あ、ぁぁ……」
「セイバー、そんなにお尻ふってどうしたんだ?」
「あ……」

気づけば、まるでそこへの愛撫をねだるかのように腰が勝手に動いていた。
なんというはしたない事を……
羞恥で一瞬のうちに頬が火照ってくる。

「これは、違うんです……その……」

下肢に力を入れて何とか動きを止めようとするが、燃えるような焦れったさになかなか思うようには行かない。
シロウの腕をぎゅっとつかんで耐えようとするが、シロウもそれを見越したかのような微妙な愛撫でさらに焦らそうとしてくる。

「ふ、くっ……シロウ」

背後を振り返り、シロウを見上げる。
非難がましい視線を浴びせてしまうのはしょうがないことだ。

「もしかして――――を触ってもらいたいのか?」

もしかしなくてもわかっているはずなのに、そう聞いてくるシロウ。
彼が時々見せる、意地悪な側面。
この顔をシロウが見せた時は、私は自らの不運を嘆きながら耐えるしかない。

「……」

私は押し黙る。
黙りながら、状況を把握する。
シロウがこういう状態になった時は、こちらがどう抵抗しても大抵が無駄に終わる。
ここから逃れるには、本気で嫌がるか、もしくは素直に受け入れてしまうか、このどちらかしかない。

普段なら受け入れてしまえるようなことだが、このような得体の知れない場所ではそう簡単にはいかない。
雑多なビルの中の雑多な部屋。
用途不明の器具が所狭しと並び、一時の安らぎすら決して得られることのないだろう部屋。
シロウの部屋での行為とは違い、いつ誰に見られるか知れたものではない。
私の……あのような姿などシロウ以外の人に見せるわけにもいかず、であるからここで乱れるようなことは……

「他の奴は絶対に来ないから、安心してくれ」

……時々、思うことだが、シロウは人の心を読む魔術でも身につけているのだろうか。
私の懸案事項をあっさりと見抜き、ついでにフォローまで入れてくる。
それを剣術の時に生かせれば、いったいどれだけ有益なことか。

「ぅ……ん、んっ……」

シロウの指が、どうするんだセイバー、とまるで問いかけるように秘唇を浅く突っついてくる。
言葉よりもはるかに明確な意思表示。
私の中に埋没している指だけでなく、外で遊んでいた指までもが自己主張をし始めた。
それでいて、一番敏感な場所には決して触らない。
ちょっとずつ上に来て、触ってくれるだろうかとの期待をはぐらかすようにまた下へと戻り、花弁を優しく摘まむ。

甘い疼き。
体と心が溶かされていく。
どこまでも心地よい感覚、だけど、これだけでは決して達することが出来ないというのも私は知っている。

「シ、ロウ……」

駄目です……もう、これ以上は我慢できない。
もっと強くしてもらいたい、もっと色々なところを触ってもらいたい。

「お願いです……もっと、触ってください」

その思いが、そのまま素直に口から滑り出た。
熱い吐息と共に、淫らな願いが言葉として小さく紡がれ、その願いがどれほど事実を現しているのかと証明するように、震える体を必死で支えながらシロウの顔を下から見上げる。

かつて王として……何人もの騎士と、何万もの兵士たちをこの目で睥睨し続けてきた。
その瞳が、今はまるで愛玩されることを望む犬のようになってシロウを見つめてしまう。
これこそが堕落と言うものなのだろうか。
このような姿、かつての部下には決して――いや、他の誰にも決して見せることなど出来ない。ありえない。

それを見ることが許された唯一の人物が、いま私をいじめている衛宮士郎……であるのだけど、彼はなぜかひどく難しい顔をしていた。
それは、なにか苦痛に耐えるような厳しい表情。
私のことをあえて見ないように瞳を瞑り、なにごとかを考える素振りを見せている。

心の中に不安が広がる。
もしかして……あまりに淫らなことを求めてしまい、幻滅されてしまったのだろうか。
いや、でも……そもそも私をこういうふうにしたのはほかならぬシロウであり、それにこの姿だってシロウ以外の人間には絶対に見せたりしないのだけれど、ああでも、実はシロウはそうやって自分から求めてくる女性は好きではないのかも……でもそれにしては普段からあんなことやこんなことをされている気もするし、むしろいつものほうがもっと卑猥なことをさせられたり言わされたり触られたり触ったり舐められたり舐めたり……

「まいった」

なんだかわけのわからない思考に嵌まってしまった私に、シロウが静かにそう言った。

「もう少しで理性が飛ぶところだった」

理性が飛ぶ?
それは私の台詞ではないか。

「シロウ?」
「反則だぞ、セイバー。そんな目で見るのは」

どういう意味だろうか。
そんな目で、と言われても、自分の目を自分で見ることは不可能なので、私にはさっぱりわからない。

「どういうことです?」
「いや……ちょっとした悪戯のつもりだったけど、もう少し苛めたくなった」
「え……?」

またしても疑問が浮かぶが、それが解決するよりも早く、シロウが次なる行動に移った。
私の体をさんざん玩んだ指が、膣内から引き抜かれる。

「んっ……」

出てくるとき、くちゅり、と小さな音が鳴ったが、私は聞こえない振りを装う。
そこがどれだけ濡れているかは十分すぎるほど理解しているが、それを頭で意識するのはあまりに恥ずかしすぎる。
そしてなにより、まだ達していないと言うのに、シロウの指が私から遠ざかってしまったという残念さも……少しだけ、少しだけあった。

「は、ぁ……」

体の熱はまだ燻り続けてはいるものの、ようやく、普通に呼吸が出来る状態に戻った。
だが、それも束の間のこと。
シロウの指が、再び秘唇の中へと入り込んでくる。しかも……

「なっ、んっ、冷た、い――シロウ……?」

指とは違う、明らかに異質なもの。
それが、陣頭に立って膣内を突き進んでくる。
シロウの指に押されるように進むそれは、硬く、無機質で、冷たい。
これまでとはまったく違う感覚に、私の体が緊張のため硬直する。

「あくっ……シ、シロウっ、いったいなにを入れて……んっ」
「セイバーにプレゼントだよ」
「あ、先ほどの……」

つるつるとした卵形の物体。シロウがローターと呼んでいた物。
言われてみれば、秘部に感じるこの感触は先ほど手にとってみたあれと近いかもしれない。
膣内に入っているため、正確な確認のしようはないが。

「あ、あのようなものを、そんなところに入れては、んっ……駄目です、シロウ」
「なにを言っているのさ。これは、こうやってここに入れるための物なんだ」

基本的には、と、こともなげに言い放つシロウ。
彼は些かもためらうことなく、その卵形のローターを奥にまで押し込んでくる。
抵抗しようにも、膣内の柔肉ではその侵攻を防ぎきれず、むしろ嬉々として受け入れてしまう。

「く、あぁ……深い、そんなところ……」

その人肌とは温度の違う冷たい物体が、私の一番深いところにまで到達した。

「ん……まあ、こんなところでいいのか」

やや思案気にしながら、シロウは確認するようにこつこつと指先で小突く。
その刺激が、ローターを通して子宮に響く。

「ひんっ、や、シロウ……叩いては、駄目、んんんっ」
「あ、悪い」

シロウは意外なほど素直に手を引いた。
そのまま、秘唇の中からゆっくりと指を引き抜く。
ただし、奥にまで埋め込んだ物体をそのままにして。

指が引き抜かれ、ずらされていた下着も元に戻された。

「んっ!」

きっちりと引き上げられた下着が股間に食い込み、爪先立ちになりながら小さく喘いでしまう。
異物が中に入ったままなので、腰の奥にひどい違和感を感じる。

「よし、と」

私が違和感に耐えているうちに何事かごそごそとやっていたシロウが、そう言いながらスカートを下ろしてくれた。
これで、私の姿は一応は元通りということになる。内部の物は、外からは見えないから。

「はぁ……はぁ……はぁ……」
「これ、なんだか憶えてるか? セイバー」

なんとか呼吸を整えようとする私に、手に持った何かを見せるシロウ。
それは、中央付近にスイッチのようなものが付いた、細長い長方形の機械。
先端からはコードが延び、その先がスカートのホックの隙間から内側へと消えている。

「それは……」

いったいなんであろう、そう考えた瞬間、あっ、と思い出す。
最初にこの機会を見つけた時、気になってそのスイッチを入れてみたのだ。
その結果が――

「ま、さか……」

小刻みに振動していたあの卵型の物体。
それが、今いったいどこに入っているのか、それを考えると、戦慄にも似た衝撃が背筋を駆け抜ける。

「冗談……ですよね、シロウ」

震えるような声が自然と漏れた。
今、それを動かされたら、自分がどうなってしまうかわからない。
恐る恐る背後のシロウを見上げると、にっこりと微笑んだシロウの顔が視界に入った。

駄目だ――
この顔をしたシロウは危険だ――
これまで、私を幾度も危機から救ってくれた直感が(最近はあまり役立っていないが)ガンガンと警報をがなりたてる。
私は瞬時に判断した。
全力を持ってシロウから飛びのこうとし……

「んあぁ――っっ!!」

腰が砕けた。



「あ、と……セイバー、もうイッちゃったのか」

そう言うシロウの声も、どこか遠くのもののように聞こえる。
小さなモーター音を鳴らしながら小刻みに震えるそれは、焦れに焦らされていた私の体をあっというまに弾き飛ばしてしまった。
絶頂感が膣内の締め付けを促し、それによってより強くローターの振動を感じてしまう。

「くっ、ぁ……んんっ、やめ……止めてください、シロウ」

お腹のそこが痺れるような振動は、耐えようと思って耐えられるようなものではなく、振動に合わせるように腰が揺れる。

「止めてくれって言われても、まだ一番低いレベルなんだけどな」

シロウが手の中で振動を調節するスイッチを弄びながらそう言った。
その言葉に、またしても私は戦慄する。
これで一番弱い振動だというのならば、これ以上強くされたら、いったい私はどうなってしまうのだろうか。

「じゃあ、少し強くするぞ」
「やっ、シロウ……まって……んんっ!」

抗議の言葉はさらりと受け流された。
シロウの宣言どおり、先ほどよりも明らかに勢いを増したローター。
焦らされ、達したばかりで敏感になっているそこは、その振動に耐えられるはずもなかった。

「ああっ、駄目……またっ、んっ、んん……っ」
「またイクのか? 相変わらずセイバーは敏感だな」
「そんなこと……んあぁっ」

敏感になってしまったのは一体誰のせいだと思っているのか。
シロウの無責任とも言える言葉に山ほどの文句を言いたい気もするが、現状、それが可能な状態ではない。
とにかく、達してしまわないように我慢することしか今の私には出来ない。
だというのに……

「ほら、我慢しないでイッていいぞ」

耳元で囁いてくるシロウ。
舌で舐められ、歯で噛まれ、暖かい吐息が柔らかく侵入してくる。
いつの間にかブラウスの内側に忍び込んでいたシロウの手が、胸を覆う下着の脇から滑りこんでくる。
すでに硬く勃起した先端の突起が、指先で引っ張り出されるように摘まれ、クイッと捻られた。

「ふあぁぁ……くぅんんっ!」

胸と秘部と耳元からの刺激に、私は二度目の絶頂に達した。



「はぁ……はぁ……」

身を焦がすような灼熱感が過ぎ去れば、緩やかな気だるさが全身を包む。
ぐったりと力なく崩れ落ちようとした私の体を、シロウの力強い腕が支えてくれた。

「大丈夫か?」

やりすぎたと思ったのか、シロウがそう言ってくる。
膣内で暴れまわっていたあの機械もいつしかその動きを止めていた。

「大丈夫……」

ではない、とりあえず。
振動が止んだとはいえ、甘ったるい痺れはまだ体のそこかしこに残っている。
いっそこのまま、まどろみの中に沈んでしまいたい気分だ。

「悪い。ちょっと調子に乗りすぎたな」

シロウは素直にそう謝って、私が立ち上がるのを手助けしてくれた。
少しだけしわになってしまったスカートを整え、乱れたブラウスを元に戻す。

「そろそろ戻ろうか」

暗くなり始めた窓の外を眺めながら、シロウが言った。
その意見には私も全面的に賛成だ。
このままここにいては、いつシロウの気が変わって再びいじめられるか知れたものではない。

「夕食の準備もしなきゃいけないしな」
「はい」

うなずき、シロウに促されるまま部屋の外に向かって歩く。
と、そこで気づいた。

「ふ、ぁ……あ、あの、シロウ」
「ん?」
「まだ、その……中に入っているのですが」

もう体内を蝕む動きを示してはいないが、それは、確かにそこに入っている。
歩くたびになんともいえない違和感が下肢から力を奪っていくのだ。

「入ってるって、なにが?」
「え、それは」

わかりきっていることをなぜ聞くのか、不思議に思ってシロウの顔を見ると、

「あ――」

さっき見たものと同じシロウの顔。
どこか楽しそうに、意地悪そうに、私を見つめてきている。

どうやら、このまま素直には家に戻れないようだ。
私の腰に回されたシロウの腕からは、拒否しがたい明確な意思が感じられた。
そして、その手のひらには私の命運を握るちっぽけな機械がある。

「さ、帰ろうか」

シロウはそう言って部屋の扉を開けた。
この先に続く道を果たして私は無事に行くことが出来るのか、下半身に残る違和感が、
――多分無理――
そう教えてくれているような気がした。