「子どもとコンピュータ−」
長崎市での駿ちゃん殺人事件は犯人が12歳の少年でありました。テレビ報道をいたたまれない思いで聞きました。
鹿児島県小児科医会会長の鮫島信一先生から次ぎのような文章がMLに出ていました。
転載します。
本年2月15日、平成14年度学校医講習会で、和洋女子大学の村田光範先生の講演「子どもとコンピュータ−特に子どものこころとからだに与える影響について−」を思い出したからです。子どもに早期にコンピュータやテレビなどバ−チャルな機器を与えることの警鐘でした。
最近、子どもの教育にコンピュータは欠かせないといった風潮がある。しかし、コンピュータが子どものこころとからだに及ぼす影響については十分議論をしておく必要がある。
1.コンピュータとリセットボタン
子どもはぜひとも、世の中には取り返しのつかないことがあることを学ばなければならない。ところがコンピュータはどんなに失敗しても、リセットボタンを押すと再び元の状態に戻るので、このことの意味を考えておく必要がある。
2.コンピュータとバーチャルリアルテイ
バーチャルリアルテイは「仮想現実」ではなく現実そのもので、現実の本質をなすものと理解しなくてはならない。インターネットで「わたし」と言えば男も女になれる。現実の世界は繰り返しは効かないが、バーチャルな世界は繰り返しや因果関係も様々に変えられる。相手の顔が見えないので、メディアは人格を無くし姿を変える。
3.コンピユータが持っている本質的なもの
コンピュータは人と同じに扱われる機械であり、自動車などとは全く違った使われ方をするものである。このため幼児期早期からコンピュータを使っているとコンピュータと人との区別がつかなくなることがある。コンピュータは常に使う側にとって都合の良い答えを返してくるので、「生身の人間と血の通った付き合い」が出来なくなる恐れがある。
4.子どもがコンピュータを使う時
@コンピュータゲームは少なくとも高校生になってから手を染めるべきである。
A日本語は表意文字を基本にしているので、同音異義語が多く、このためワープロソフトを使うのは小学校4年生以降が望ましい。
B計算ソフトとプレゼンテイションソフトを使うのは中学生以降が適切である。
Cコンピュータによる情報の伝達と収集。
インターネット、電子メール、携帯電話、PHSなどを介した情報交換は学校を拠点にする場合は小学校高学年から、個人同士の情報交換は少なくとも高校生になってからでもよいと考えている。特に携帯電話については子どもに対して緊急連絡機能のみをもった機種を持たせるべきである。
5.今後の課題
これからの生活がコンピュータなしでは成り立たないことは事実である。しかしコンピュータを用いた早期からの教育はむしろ子どもの健全な発育・発達に害がある。子どもにコンピュータを早期から使わせるのであれば、子どもにとって理解しやすく、使いやすいプログラミング言語を開発して、子どもがコンピュータを自分の分身として使うことを覚えさせるべきである。
少年がビデオやゲ−ム感覚で、現実の世界を錯覚し、取り返しのつかない犯罪を起こしたのではないかと危惧した次第です。
(鮫島信一)