わたしも街道をゆく/1991年/東北へ
わたしも街道をゆく 1991年 東北へ


1991年8月1日 東京から鶴岡へ 本日の走行距離618Km

「旅行中の事故に注意」

 午前4時、出発。
 9月には結婚する私、この場所からツーリングに出発することはもうきっと無いんだな、と思うとちょっぴり切ない。(……まだあるかもしれない……)

 その上、今週の星占い、山羊座(私です)は旅行中の事故に注意…。久し振りのロングツーリングで走りたくってしょうがないVTZと慎重すぎるくらい慎重になってしまっている私、どうも歯車が噛み合わない。やめたほうがいいのかなあ。

 東北自動車道浦和ICに近付いてやっと調子でてきたかな、という矢先、私の番で発券機がこわれた! 係のオジサンがしばらくいじってたけど直らない、どんどん車が増えてくる。ついに諦め隣のゲートを開け、最後尾の車からどんどん誘導するオジサン。えっちょっと待ってよ、そうすると先頭にいた私はビリですか? おまけにバイクってバック出来ないんですけど。これってやっぱり行くなってことなのかしら…。えっさえっさとバイクを後ろに引いて、やあっと東北自動車道へ。

 時々小雨が降る東北道、サービスエリアのフランクフルトは吐きそうなくらいまずい。サービスエリアの軽食類ってどうして何食べてもこんなにまずいんだろう。日本道路公団さん、少しは考えてね。
 村田ジャンクションからわかれて山形自動車道へ。関沢から山形北まではなんと昨日開通したばかりで路面はぴかぴか。でも高速での片側1車線はけっこう怖くて嫌いだ。
 山形北ICで高速を下りると、雨。初日からカッパを着ることになるとは。とほほ。

岩にしみいる蝉の声

 東へ走り、まずは山寺、立石寺へ。
 だあーれもいない奥の院で、蝉の声を聞きながら、芭蕉の気持ちを味わおうと思った私が甘かった。お土産物屋が立ち並ぶ、ただの観光地ではないか。なんかの撮影なのか、芭蕉翁の格好(コスプレか!?)している人までいる。ま仕方ないかと思いつつ、山門をくぐり、目指すは奥の院。

 いやこれが大変なのである。金比羅さんの奥社への1323段なんてあっさり登れたのに、体力の衰えをひしひしと感じて情けない。おまけにタンクバッグにカメラとレンズ、捨てたくなるほど重い。こんなに汗かいたなんて久し振り。心臓が止まりそう。
 やっと着いた奥の院。閑かでもないし岩にしみ入る程の蝉の声も聞こえなかったけど、途中の苔むした岩や、鬱蒼と茂る木々、切り立った崖、楽しませてもらいました。観光客の皆さん、足元ばっかり見てるともったいない。ねえ芭蕉さん。

 汗だくで入った秘宝館(といってもクジラのナントカみたいなものはない9は、クーラーの効きすぎで寒い。特別展示「幽霊図」に、ますます寒気が走る。

 走り出せばまた降る雨。カッパを着ると雨が止む。なんで?

 今日のお昼は塩ラーメン。お店のおねーさんにコーヒーご馳走してもらって心もあったまるね。また振り出した大雨も、コーヒー飲みながら雨宿り。

神様いっぱい出羽三山

 今回のツーリングの目的の一つである、出羽三山へ。

 修験者たちの修業の跡、その全盛の中世の空気を少しでもいいから感じたい。そんなふうに思いながらR112を山形から西へ、湯殿山神社を目指す。(あ、月山神社は登山しなくちゃ行けないなので今回はパス。)
 湯殿山道路は有料とは思えないような道。いったいどこに連れていかれちゃうんだろう。だけど俗界の塵芥を防ぐにはこのくらいでないとダメなのかもしれない。
 駐車場に着いてみると、あと2、30分は急坂を歩かないと行けないそうな。連絡バス(100円)も出ている。うーんとどうしようかと悩むが、こういう所って歩かないとご利益ないよねえ。天気も良くなったし、よし歩こう。…でもすごい急坂。踵にマメが出来ていくのがわかる。ガクアジサイらしい花、小さいけどとてもきれい。でもちょっと今登るのに精一杯、写真は後でね。

 ここからは湯殿山参拝。「語るなかれ」「聞くなかれ」なので詳細はナイショです。

 下りは、遠くの山々を見ながら歩く。稜線が幾重にも重なった、墨絵のようなこの景色を見ながらかつての修験者たちは何を思っていたんだろう。ここで即身仏となることを目指しそれを実現した人々は…。

 今日のお宿に向かって走る渋滞中の鶴岡市内。あ、雨だとカッパを着た途端、今まで経験したことがないような、すごい雨が降ってきた。バケツどころか東京ドームをひっくり返したみたい。雨が痛いんだもの。あっという間に路肩は水浸し。どうなっているのか先の状況がわからないから(穴が開いているかもしれない)すりぬけってこわい。初日からぐったり疲れて鶴岡ユースに到着。

 知らなかったけど東北って今日、梅雨明けしたんだって。天気悪いはずだ。
 でもやっぱり走り始めるとどっぷりひたっちゃうね、ツーリングって。