絵物語を求めて5 冒険の島
イーニッド・ブライトン「冒険の島」の挿し絵。スチュアート・トレシリアン(と発音する?)
による。
挿し絵がペン画で、絵物語ふうなので、古本屋で80円で買ってきました。
ストーリーはどうかって?いやあ面白かったですよ。ちょっと御都合主義的なところもありましたがね。
挿し絵はなつかしいタッチでしたが、ものすごくうまいというのでもありませんでした。
主人公の兄妹がけんかばっかりしているというのがユニークでした。イーニッド・ブライトン女史は日常的な
できごとの描写はなかなかのものでした。しかし冒険の描写は月並みなように思います。
その詳しい紹介はネタばらしになるので書きません。しかしかりに考えてみてください。ある小説で、主人公たちが
悪漢の隠れ家にしのびこむとします。(冒険の島の筋書きとは別です)その方法として、主人公たちが発見した、
獅子王リチャードが作った20kmに及ぶ地下の間道を利用したとします。そして首尾よく悪漢共をつかまえたと
します。そのとき、悪漢を捕まえたことと、リチャード王の地下道を発見したことと、どちらが重要でしょう。
私は歴史的な発見のほうが大事と思いますが、作者がそのことにはあまり触れず、悪漢を捕まえたことのみに注目
していたら、読者としてはどう思うでしょうか。「悪漢を捕まえるためだけに勝手に地下道を作っちゃいかん」と
思うでしょう。「冒険の島」にはこの手の疑問がありました。ご都合で地下道をひねりだすのはよいが、もし
そんな地下道があったとしたら、物凄い反響を呼ぶはずで、そのこともちゃんと描く必要があります。