山川惣治と絵物語の世界page14255  picture

 

14.山川惣治のライバルたち 高畠華宵

kasyoh

高畠華宵は山川惣治の先輩であり、少年倶楽部の人気挿し絵画家であり、有名な「華宵事件」の 当事者です。大正14年2月、画料のことで講談社ともめた高畠華宵は、「少年倶楽部」とたもとを分かって、ライバル 雑誌「日本少年」へ鞍替えしてしまい、「少年倶楽部」の部数は一時激減してしまいました。(「少年倶楽部時代」 加藤謙一著 講談社刊 昭和43年)

そのような華宵の人気の秘密はなんでしょう。「源五旅日記」の挿し絵をみると、それは女とみまがうような、主人公 の美少年ぶりによるものだということがわかります。

華宵の描く美少年も美女も共通の特徴があります。(1)目は細く、まぶたがはれぼったく、眠たげである(2)眉は ひそめている(3)鼻の下の正中の溝を省略しない。ということです。

蒙古族で寒帯にすむ者は、まぶたに脂肪が蓄積し、はれぼったいまぶたになります。美男、美女を描くにあたって、 華宵は日本人の顔の一特徴を強調した。だから個性的な美男美女ができたのだと思います。

「源五旅日記」の最後の挿し絵で、華宵は源五の母親として、少しやつれた中年の女性を描きました。「少年ケニヤ」の 最後にワタルが出会う母親が、あまり美化されない中年女性として描かれるのは、この絵の影響かもしれません。

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