14.山川惣治のライバルたち 山口将吉郎
山口将吉郎は戦前からの少年雑誌の挿し絵画家です。
上は少年クラブ連載の「風雲児義経」。文は沙羅双樹という人。文章は平家物語の現代訳そのものの部分もあります。
「風雲児義経」は毎ページに挿し絵がありました。というより、絵の一部(空や海)に活字を埋めていくのに近かった。
絵の中に字を入れていくのは「講談社の絵本」と同じです。違うのは、字のスペースが半分以上あることです。字の
分量からすると、普通の挿し絵に近い。
普通の挿し絵と違うのは、毎ページに絵があること。絵の余白がほとんどないことです。
毎回色刷りでした。特別待遇です。人気からいうと、手塚治虫の「ケン一探偵長」のほうが上だったでしょうが、「風
雲児義経」が最もよいページをしめていました。
華やかな武者絵は誰でも書けるものではなかった。今から見ると上手なものだと思います。随分力を入れて書いている
なあ、と思います。
昭和31年。絵物語の最後の時期です。山口将吉郎は「風雲児義経」のあと、少年クラブにもう挿し絵を書くことは
ありませんでした。最後の輝きでしょう。
現在挿し絵画家の需要があるのは、文庫本のカバー絵でしょうか、週刊誌の連載小説の挿し絵でしょうか、それとも
新聞小説の挿し絵でしょうか。子供むきの単行本の挿し絵は現在、マンガ風のイラストを書くひとが多いように思います。
山口将吉郎のような武者絵のかけるイラストレータは現在だとどなたがいらっしゃるのでしょうか。