14.山川惣治のライバルたち 永松健夫
山川惣治は紙芝居作家の出である永松健夫を終生、気安く思っていたようです。
紙芝居出身であることは山川惣治にとっても引け目であったのかもしれません。その点永松健夫は気のおけない同志
だったのでしょう。
ところでわたくしは永松健夫をほとんど知りません。昔雑誌の付録で「黄金バット」を読んだきりです。それは怪人
ナゾーの出る話でした。私の受けた感じは「この他に長い長い物語があって、この付録はその一部を紹介したに
過ぎない」ということです。
福島鉄次の「砂漠の魔王」をよむと、物語のあらすじを読まされているような感じがすることがあります。「黄金
バット」も多少その傾向があったのかもしれません。
「別冊太陽・少年マンガの世界 1」や「小松崎茂絵物語グラフィティ」に紹介されている「黄金バット・アラブの
宝冠」は、異国の衣装をつけた登場人物によって演じられる古風な忠臣愛国物語のように見えます。
黄金バットはどの時代、どこの国にも出現する正義の味方かもしれません。(全貌をしらないので憶測しています。)
時空を超えた正義の味方というアイデアはなかなかのものと思います。
「別冊太陽・少年マンガの世界 1」には「黄金バット」が紙芝居、絵物語、テレビとメディアを変え、作者を変えて
書き継がれていったと書かれています。そのように長く書き継がれるのは、時空を超えた正義の味方というアイデアの
ためかもしれません。今、中国の風俗・歴史に詳しい書き手がいるとします。かれは「黄金バット」を中国に出現させ
ればいいのです。中国篇が完結して、次が続かなければ、ロシア通にバトンタッチすればよろしい。
下の絵は小西茂木作・永松健夫絵「荒馬高原」。小松崎茂調の絵です。カメラアングルが低い。