14.山川惣治のライバルたち 斉藤五百枝2
斉藤五百枝のさし絵の中には山川惣治が描いたような人体のアクロバチックな動きをリアルに描写した
ものがあります。かれの挿し絵は、まるで身近の人間をコンテでスケッチしたような、リアルなタッチが身上ですが、
そのタッチで巴投げを描いたりすると、誇張がないだけにかえってものすごい迫力がでます。
また、斉藤五百枝と山川惣治がよく似ているのは、双方とも、ドラマの背後の景観を手抜きしなかったことです。これは
椛島勝一にも言えることです。このことは伊藤彦造の「天兵童子」の挿し絵がバックを省略して、人物に焦点をしぼって
いるのと対照的です。
斉藤五百枝の挿し絵で私が好きなのはむしろ、動きのすくない、静かな絵のほうです。それがこの人の持ち味のように
思います。