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14.山川惣治のライバルたち 石井 治(はる)

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昔の少年雑誌を見直すと、石井治は時代物の絵物語を沢山書いています。その絵をみると、 ああこれが石井治だったのかと思い出すのですが、私にはほとんど印象にのこっていませんでした。

憶えていたのは、「おもしろブック」の「巨人マグラ」、「少年クラブ」増刊号の「丹下左膳」、「冒険王」 の「影法師」だけでした。

とくに「影法師」はおとなの小説の挿し絵と少しも変わらない、素気ない感じが、少年雑誌の中では異様でした。

岡友彦がけれん味たっぷりであるのに対して、「影法師」の石井治はけれん味ゼロにちかいように思います。岡友彦が 滑稽味もたっぷりなのに対して、「影法師」は滑稽味ゼロです。デッサンは正確で小松崎茂に負けないスマートさもある のですが、小松崎茂にはあり、山川惣治にさえある甘さがあまりない絵のようです。「影法師」はとくにその 傾向が強く、時代劇にでてくる虚無僧のような感じがする絵物語です。

しかしそのために私はおぼえていました。この絵物語だけ、大人の小説の雰囲気を漂わせていたので、記憶に残った のでしょう。なんであれ、個性を強調することはよいことです。失敗を恐れず、個性をだすことで、世間は記憶してくれる ということでしょう。

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