14.山川惣治のライバルたち 阿部和助2
阿部和助を山川惣治のライバルたちの中にいれたのは「ゴジラ」のせいだけではありません。
「くろがねインディアン」という古い作品を読んでいくと、阿部和助がとんでもなく重いテーマに挑戦しているのに気
がついたからです。
白人に滅ぼされたインディアンの部族、その若い酋長はインディアンにそだてられた白人、そんな設定でした。
山川惣治の「幽霊牧場」もインディアンを主人公にした西部劇だそうです。「荒野の少年」いさむは日本人とイン
ディアンの混血児です。阿部和助は少数民族を主人公にした物語の路線の継承者だったのでしょう。
日本の敗戦により、日本人は民族滅亡の危機を感じました。ほろぼされた少数民族の気持ちになって考える機会を
得ました。それは貴重な経験でした。阿部和助は絵物語を舞台として少数民族のテーマに挑んだのです。
その意図は壮としなければなりません。阿部和助を山川惣治のライバルたちの中にあえて入れる所以です。
「少年ザンバ」では南アメリカのシャバンテスの中で生きる日本少年を描きました。阿部和助の連載絵物語の中
では代表作かもしれません。下の絵はその一場面ですが、山川惣治そっくりです。