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13-28 ジャングル物語の系譜 冒険ダン吉2

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山川惣治の絵物語が、島田啓三の「冒険ダン吉」の影響をうけている証拠の続き。

ダン吉が川の中に立っている木の上でヒヒに出会うのは、「少年ケニヤ」で洪水からのがれた木の上で、ワタルがヒヒ に出会うのとそっくりです。「少年ケニヤ」のほうが、ストーリーも絵もずっとリアルなので影響を受けた気がしませ んが。

産経新聞社刊「少年ケニヤ」では、各巻の巻頭にそれまでの粗筋が書いてあり、はじめてよむ読者にもわかるように なっていました。これは「冒険ダン吉」の各回の冒頭で,熱帯の島に流れ着き、蛮人の 王様となって、善政をしくということを、毎回少し言い方をかえて、律儀にくり返すのとよく似ています。

「少年ケニヤ」第3巻に書いてあった「少年ケニヤの歌」は、少年倶楽部昭和10年2月号の 冒険ダン吉に載ったのとリズムが同じ。歌詞の最後に題名をくり返すのもそっくり。(「少年ケニヤ」のほうが 1行多いですが。)

「冒険ダン吉」では、ダン吉が隣の部族や外国人との戦いにいったん負けて、しばられてしまう事が多い。「少年ケ ニヤ」も、ゼガやワタルがよくしばられます。

「冒険ダン吉」では、川の中に背の高い家をたてる部族が出て来た。「少年ケニヤ」では樹上高くに家をつくる部族 がでてきます。

「少年王者」では巻頭に作者のていねいなあいさつがあります。これは、少年倶楽部昭和 9年3月の付録の冒頭に、ダン吉が読者に向かって長々とあいさつしたのをまねたのではないでしょうか。主人公 があいさつするのではなく、作者そのものがあいさつしたところは違っているが、まじめな調子がよくにています。

戦後、「冒険ダン吉」は旧日本軍の侵略思想のあらわれという理由で、日本人は忘れようとしました。しかし戦後の 日本人が喝采した「少年王者」「少年ケニヤ」は。「冒険ダン吉」の戦後版と思います。


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