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13-27 ジャングル物語の系譜 冒険ダン吉

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「冒険ダン吉」は戦前の雑誌「少年倶楽部」で田河水泡の「のらくろ」と人気を二分した漫画絵物語 です。

講談社刊「冒険ダン吉漫画全集」(昭和4 年)のあとがきで、手塚治虫は。次のように書いています。-----「冒険 ダン吉は『団子串助漫遊記』にはじまり、『正チャンノバウケン』を経て、『少年ケニヤ』で終わりをつげた漫画 絵物語のひとつのピークである。」-----手塚治虫は「少年ケニヤ」を漫画絵物語の1種だととらえているのです。 あるいは少なくとも、絵物語よりも先に漫画絵物語があったのだと言っているのです。

私は山川惣治の絵物語は「冒険ダン吉」とは全く違うものという印象を持っていましたので、ストーリーマンガの 神様の意見は、山川惣治にたいして厳しすぎるように思って、なかば憤慨しながら「冒険ダン吉」を読みました。と ころが、この漫画が山川惣治の絵物語に多大な影響をおよぼしていることを知って驚きました。「少年ケニヤ」と「 冒険ダン吉」を漫画絵物語としていっしょにくくるかどうかは別にして、「ケニヤ」が「ダン吉」の影響下にある ことは確かです。

「冒険ダン吉」の絵の特徴は。遠近感の強調による、縦(前後)の構図の多用です。たとえば、上の絵ではキリンと だちょうが画面手前にむかって疾走しており、ダン吉は、はるか後方にちいさく取り残されています。全体の構図を 整えるためにダン吉のそばに大木が描かれています。このように画面手前と奥との遠近感を強調する構図は、同じ 漫画でも田河水泡の「のらくろ」にはけっしてみられません。

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ダン吉と土人たち(島田啓三はいつも蕃公といっている)が恐竜に追っかけられる、上左の絵では、先頭を走って いる土人に比べて、うしろの土人は、随分ちいさくかかれています。両者の距離の強調があるのです。 広角レンズでみたような絵です。「少年王者」でブロントザウルスに探検隊が追い掛けられる上右の絵をごらん ください。漫画らしい線と、挿し絵風の絵のちがいはあっても、構図そのものはそっくりです。


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