13-22 ジャングル物語の系譜22 闇の奥(1899)
ジャングル小説に出てくる文明人の中には、とんでもなく悪い人間がいます。未開の現地人と
商売をしていると、純朴な現地人をだますような気持ちにしぜんになるのかもしれません。もうかってくると人間が悪く
なってくるのでしょうか、奴隷貿易などに関係するうちに、悪くなってくるのでしょうか、それとも本国で食いつめて、
植民地で一儲けしてやろうと考える文明人は、はじめっから悪人なのでしょうか。
コンラッドの小説の中には、植民地で悪いことをしている白人がよく出てきます。
コンラッド原作の映画「ロード・ジム」でも、ジェームス・メイスンふんする海賊(汽船に乗って、河を遡って
奥地の部落まで略奪にやってくる、船長の服を着た人物。)がでてきました。
「闇の奥」はフランシス・フォード・コッポラ監督が、「地獄の黙示録」のシナリオを書くのに、原作としたそうです。
私はすっかり、ストーリーを忘れてしまいました。ただ、人間を狂気に駆り立てる環境としての熱帯、人間が一歩踏み
込んだだけで死んでしまう病毒に満ちたジャングル、とんでもない悪事が行われる舞台としてのアフリカを描いた小説
であったような感じがします。
文明人の船が未開の地域の河を遡るのは、トラブルのもとであり、悪ですらあります。
映画「地獄の黙示録」ではベトナムのメコン河を、米軍の機関銃を装備した船が遡っていきます。米軍から脱走(?)
した大佐を暗殺する密命を帯びているです。(間違っていたらごめんなさい。)米軍の船が河をさかのぼること事態、
トラブルのもとで、彼等は罪のない農民を、ベトコンと誤解して殺してしまいます。
別の映画「アギーレ・神の怒り」では、インカ帝国の時代、南米の河をスペイン人の筏が下っていきます
(逆のパターン)。すると、川岸から矢を射かけられたりします。原住民の部落を襲撃して、双方に死人がでたりも
します。スペイン人の筏が通ること事体、トラブルのもとで、原住民の平和を乱すことなのです。
また別の映画「砲艦サンパブロ」では、揚子江を米軍の砲艦が遡っていきます。すると、国民党の学生が襲ってきたり
します。主人公は自分の意志とは別に中国人の若い学生を殺すはめになります。この映画はベトナム戦争中に
作られました。
私達は白人の探検隊が汽船でアフリカの河を遡っていくと土人がおそってくる場面をよくみます。しかし、汽船で河を
遡ることは、悪事の象徴かもしれないのです。