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13-18 ジャングル物語の系譜18 恐竜探検記(1926)

RCA

ロイ・チャップマン・アンドリュースは、アメリカ自然史博物館が派遣し、世界ではじめて恐竜の 卵を発見した中央アジア探検隊の隊長です。「恐竜探検記」はかれの著書です。

彼等は人類の祖先の化石を求めてゴビ砂漠に遠征し、原人の化石のかわりに、プロトケラトプスの卵の化石を発見しまし た。あるものを探していると、別のものがみつかることがよくあります。そのときにですね、最初何を探していたか、 ということにはあんまりこだわらず、みつかったものを楽しむようにしたほうがよいと思います。

この探検記はたいへん楽しい記録なのですが、半分ほどまでは、砂漠を旅行する苦心談ばっかりです。アンドリュース 隊長は射撃が得意らしく、かもしかなどを撃ちとめては、晩のおかずにしています。化石を探す、考古学の専門家には グランガー博士(ウォルター・グレンジャーと発音する?)という人がおり、なにか重要な発見があると、この人が 出ていって、処理します。

アンドリュース隊長は探検の専門家なのですが、考古学に関してはど素人で、化石を掘り出そうとして、 グランガーに「手をだすな」と言われたりします。

カナダのフィリップ・カリー博士を隊長とする考古学探検隊が、数年前ゴビ砂漠で探査を行いました。「恐竜探検記」 に出てくる恐竜化石の名所ネメゲトウにも行っています。彼等は化石を「RCAする」という隠語を使っていました。 RCAはロイ・チャップマン・アンドリュースの頭文字で、「RCAする」とは化石を乱暴に掘り出そうとして、標本を 台無しにすることです。隊長が不器用で、専門家グランガーの血圧を上げるようなことをしていたのが、考古学上の 伝説になっているのです。

しかしもう一度「恐竜探検記」にさっと目を通してみると、ロイ・チャップマン・アンドリュースの文章は正確で、 面白く、堂々としています。彼は中央アジア探検隊の前にも、いろいろな探検を行っており、スライドを用いた 講演会は大評判だったそうです。中央アジア探検隊の費用も、彼の講演会の評判のおかげで、公的な援助を受けずに 民間からの寄付だけでまかなえたのだそうです。話の上手なひとだったのでしょう。

いよいよ、恐竜の卵の化石が発見され、このあたりは化石の宝庫だ、ということになると、隊長から運転手まで、 化石探索熱に浮かされ、毎日朝早くから、砂漠に出かけていって、化石が地表に出ているのを発見しては、印を つけて、グランガー博士に報告します。一日が終わると自分たちの成果を報告し合って、今日の一番手柄は誰それだ、 と評価しあいます。そして次の日も、きょうこそと思ってでかけるのです。

いまでも、ゴビ砂漠は化石の宝庫です。第2次大戦後、ロシアとポーランド合同探検隊が行きました。このときの隊長 はロシアの考古学者兼SF作家であるエフレーモフでした。エフレーモフ隊長も探検記を書いています。同行した考古 学者のロジェストヴェンスキーも本を書いています。最近のカナダ・中国合同探検隊の成果は、「史上最大の恐竜 発掘」という本に紹介されています。

「少年ケニヤ」では、ワタルが、恐竜の生卵(だちょうくらいある)を飲んだりしています。目玉焼きにしたりする とお笑いになってしまいますが、生でのむとちょっとなまぐさかった、というと本当らしくきこえます。卵をみつける だけでなく、食料にするのがすごい。


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