13-14 ジャングル物語の系譜14 ジャングル・ブック(1894年)
ラドヤード・キップリングの「ジャングル・ブック」の主人公モーグリは狼の頭アケーラや、黒豹の
バギーラと話ができます。読者もその話を聞くことができます。狼や黒豹や熊が人間のように話をする世界です。
しかしキップリングは最初からこのような物語を考えついたのではなく、最初はもっとリアルな小説を書きました。
その中ではモーグリはは狼と意志が通じますが、読者には彼等の話の内容はわかりません。偕成社文庫の「ジャングル
・ブック」の末尾にこの原形ともいうべき短編が載っています。
インドには、狼に育てられた人間の子の実話記録があり、キップリングはそれをヒントに「ジャングル・ブック」を
書いたのですが、2通り書いて、評判の良い方に続けて書いていったところをみると、実話からうまれる小説はひとつ
ではなく、面白いものになるかどうかは、作者の腕にかかっていることがわかります。
モーグリは、年をとって群れのかしらの地位が危うくなったアケーラをたすけます。この点、モーグリは保守的です。
山川惣治の主人公も、しばしば老酋長やゴリラのボスを助けます。山川惣治は「ジャングル・ブック」の
パターンを忠実になぞっているようにみえます。
モーグリは人間としての特技(火を使うなど)を生かして、狼のむれの中で頭角を現します。山川惣治の主人公も
全く同じパターンを踏襲しています。