オランウータンの寝姿
「少年倶楽部傑作選 口絵・挿し絵篇」(講談社 年)を見ていると、椛島勝一の戦前の挿し
絵の中に木を枕にして寝てしまったオランウータンの絵がでてきます。南洋一郎の「吠える密林」の挿し絵です。
オランウータンに酒を呑ませると、その場で眠ってしまうので、難無く捕獲できるというお話。戦前はこんな話が
まかり通っていたのですから、おおらかな時代でした。
山川惣治はこれをお手本にしたか、なつかしく思いながら似た絵をかいたか、どちらかと思います。木を枕にするのを
思い付いたのは、椛島勝一が先のようです。遠くから現地人がみています。ティラノザウルスの絵でも、ワタルたち
三人が、遠くから見ています。
山川惣治は「動物の寝姿」という見開き2ページの絵解きを雑誌「少年」に書いています。これは、上野動物園の飼育
係の話に基づいています。たとえばキリンは首をまげて自分の胴の上に頭を置いて寝るんだそうです。寝姿をスケッチ
したような絵でした。ですから山川惣治は木に頭をもたせて寝るのがフィクションであることは知っていたと思います
。