1.山川惣治と少年絵物語の紹介
山川惣治は1940〜50年代に日本の少年雑誌に絵物語というジャンルを確立し、
空前の人気作家でありました。「少年王者」「少年ケニヤ」「少年タイガー」といった和製ターザン物語の作者でも
あります。
山川惣治は1951年10月から1955年10月の4年に渡って産経新聞に「少年ケニヤ」を連載しました。これにより、彼は
少年雑誌の読者だけでなく、日本全国に大人のファンも獲得することができました。絵物語作家で大人のファンを
獲得したのは山川惣治くらいだったでしょう。
もし外国のターザン物語のファンに、日本における代表的なターザン物語を紹介するとしたら、それは小説でも
コミックスでもなく、絵物語「少年王者」と「少年ケニヤ」になるでしょう。
絵物語とは、(1)挿し絵画家による絵と、(2)挿し絵画家自身、あるいは小説家による文の二つが大体同じ位の
分量でくみあわされたもので、紙芝居の雑誌版のようなものです。現在刊行されている雑誌などでは全く見ることが
できません。
手塚治虫の開拓したストーリーマンガとほとんど同じ時期に、絵物語というジャンルがうまれ、一時期「絵物語の
時代」が絢爛と咲き誇りました。戦前の漫画家、挿し絵画家が競って絵物語を書いた時代があったのです。その時代
は短く、絵物語はやがて少年雑誌の主役の座をマンガに譲りましたが、もし絵物語の最良のものをあげるとすると、
やはり、その創始者である山川惣治の作品群になるでしょう。
今はもう滅びてしまった絵物語のジャンルに固執することをわらう人もいるでしょう。しかしマンガにしても、
絵物語にとってかわったころの、ユーモラスでいて、感動的で、愛らしく、上品な手塚マンガのテイストは、最早
現在のマンガからは失われていると思います。すぐれた作品を読もうとすると、昔の
マンガをさがすことになるかもしれません。
現在は画像を扱えるコンピュータが普及し、素人が手軽にインターネット上に作品を発表できるようになりました。
インターネット上の発表には案外、絵物語形式が合っているように思います。