いのちの輝きに想いを寄せて[山梨大学(読売新聞社)で開催される講座を中心にまとめています] |
10.
|
脳科学が拓く可能性
(アンチエイジングと心の輝き) |
アンチエイジング医学
(抗加齢医学) |
1)アンチエイジング医学とは、
元気で長寿を享受する事を目指す理論的・実践的医学で、元気とは
「病気の排除」ではなく、例え病気であっても当人が健康感を持ち、
人間としての存在の喜びを持って日々の生活が続けられる生き方
(日野原重明先生)
2)平成22年2月時点での高齢者人口 単位:万人
項 目 |
男 |
女 |
合計 |
総 人 口 |
6,208 |
6,538 |
12,743 |
65才以上 |
1,246
(20.1%) |
1,669
(25.5%) |
2,915
(22.9%) |
75才以上 |
527
(8.5%) |
862
(13.2%) |
1,389
(10.9%) |
★2025年(15年後)の65才以上:28%、75才以上:16%
★高齢者人口:10%到達は1985年、20%到達は2005年
|
高齢者に多い
精神症状 |
高齢者に多い精神症状
(1)認知症(痴呆症:2004年12月以降認知症に変更)
(2)意識障害(特にせん妄:意識混濁に加えて幻覚や錯覚が見られること)
(3)睡眠障害
(4)うつ状態
(5)妄想状態
(6)心気状態(過去の自分の病気が心配になること)
認知症とは
一端正常に発達した知的機能(記憶力、判断力など)が、日常生活
上の活動を損なうほどに低下している状態を言う(Dementia)
又、正常老化から認知症に移行する途中の段階で軽度認知障害
(MCI)の過程が有る(日常生活機能は、自立あるいは軽度障害)
MCI有病率は高齢者の5〜20%、MCIから認知症への年間移行率は
10〜15% MCI:Mild Cognitive Impairment
全世界の認知症患者の総数(推計)
2001年(2,430万人)→2020年(4,230万人)→2040年(8,110万人)と、
20年で倍増している |
アルツハイマ−病
|
1)我が国の認知症原因疾患の60%がアルツハイマ−病
2)全世界のアルツハイマ−病患者総数(推計)
2010年(3,560万人)→2030年(6,570万人)→2050年(11,540万人)と
認知症患者同様20年で倍増している
3)此の病気は下記の通り老人斑(アミロイドβ蛋白)と呼ぶ脳にシミ状
の組織が出来ることが原因とされている
4)アロイス・アルツハイマ−博士の研究により原因を特定出来た
|
認知症予防の疫学的知見と病態仮説との関連性 |
1)アミロイド仮説(アルツハイマ−病の最も有力な説)
脳にアミロイドβ蛋白と呼ぶシミ状の物質が出来それが増殖する
2)認知予備脳仮説(認知予備脳:頭を大いに使い脳を活性化させる)
認知機能テストの点数が高い人ほど認知症発症の進行が遅くなる
3)酸化ストレス仮説
生体内の酸化と抗酸化の平衡の恒常性が崩れて、酸化に傾くこと
によって生じる生体への影響で、呼吸により取り込まれた酸素の
数%は反応性の高い活性酸素種に変換され、生体内の核酸、
蛋白質、脂質などを傷害することを言う
4)神経ホルミシス仮説
神経細胞あるいは神経系が適度の強さのストレスに対応する事で、
本来は神経細胞や神経系にとって極めて危険となることが、適度の
ストレス(微量)により逆に抵抗力が増強される事を言う
ホルミシスとは
生物に対して通常有害な作用を示すものが、微量で有れば逆に良い
作用を示す生理的刺激作用を言う
1)〜4)を対応(予防)する有効な手段
@カロリ−制限:通常のカロリ−の30〜40%をカット(見極め要)
但し、必要な栄養素は摂取要
A体重の軽減化(生活習慣を改善する)
B適度な運動
C認知刺激のある活動
Dレジャ−活動
Eファイトケミカルの摂取(赤葡萄酒、緑茶、ニンニク、ブロッコリ−
ビタミンCとE、DHAなど)
|
脳を健やか
に保つ10ヶ条
|
1)脳を健やかに保つ10ケ条
1. |
頭を第一に |
健康は脳から始まる。脳は身体の中で最も重要な
臓器のひとつなので、脳を大切にしよう |
2. |
脳の健康は心臓から |
生活習慣病に気を付けて、心臓に良いことを毎日
続ける |
3. |
測定値を大切にする |
体重、血圧、コレステロ−ル、中性脂肪、血糖値を
望ましい範囲に保つ |
4. |
脳に良い栄養を与える |
脂肪が少なく、抗酸化物質を含む食品を摂る |
5. |
身体を良く動かす |
運動により身体を良く動かす |
6. |
心に適度な刺激を与える |
脳を良く働かせることにより、脳の活力が増加し、
脳の予備脳が高まる |
7. |
対人関係を良くする |
余暇活動に積極的に参加する |
8. |
頭の怪我に注意 |
普段の生活の中で例えば転倒による脳の障害などから頭を護る事が大切 |
9. |
習慣を見直す |
不健康な習慣を改善し、過度の喫煙や飲酒などに
気を付ける |
10. |
将来の為に今日から |
今日出来る事は今日から実行する |
2)高齢者の心が輝くために本当に必要なもの
@ 元気で長生きすること(健康長寿)
A 脳の老化を出来るだけ予防すること
3)脳のアンチエイジングと心の輝き
★脳の科学的アンチエイジング理論に基ずく生活習慣の改善により
認知症の危険度を低下させることが期待される
★認知症などの脳の疾患を病む高齢者の社会受容(社会の理解と
受け入れ)は、すべての高齢者の心が輝く社会の実現に向けて
重要なステップである
|
9. |
”いのち”ある造形
「動く作品」の
見方・とらえ方 |
キネティシズムと
キネティックア−ト |
1)キネティシズムとは
・絵画や彫刻など固定化された形状や組成のみで説明するのではなく
全ての事物は「動く」と考えて、その力動性(動きの存在)に着目して
記述する考え方
2)キネティックア−トとは
・キネティシズムを基本に、20世紀以降の社会や世界観の変化から
誕生した動く造形をキネティックア−トと言う(生き生きとした魂のある造形) |
動く造形が19世紀迄
認められない理由
(動かない造形
芸術の本質) |
1)19世紀までの美術の中で、自ら変化して行くものを芸術作品として
見出すことは難しい(いずれも動きのない作品がすべて)
2)その理由は、絶え間なく変化して行く現実社会を、自らが理想とする
姿・形で永遠に手許に留める事が造形芸術の起源であり目的とされ
そこに固定された姿・形から例えば「愛」のような抒情性や精神性を
読み取ることが出来る表現が重要と考えられていた |
造形芸術に対する
認識の変化 |
1)産業革命により此れ迄の世界観や社会通念が大きく変わった。
(大型機械、蒸気機関車、蒸気船などのダイナミックな動き)
2)速く動く物や姿・形に力動性を見出すに及んで造形芸術は大きく
変化した
3)更に機械技術や制御技術の進歩により、経過を記録・再生する
事が可能になり動く映像(映画やテレビなど)が発展した |
美術における
新しい価値観 |
1)動き・光・音等からなる作品の登場により新たな芸術的価値観の
拡張が生まれた
2)こうした新しい価値観によりキネティックア−ト(動く造形)の分類
が多方面に広がって行った |
私なりのまとめ
|
1)20世紀以降、其れ迄の絵画・彫刻・書画などの静止芸術の存在
とは別に、その分野から飛び出して動きのある作品が世の中の
価値観を拡大していった
2)生き生きとした動きのある作品には命の存在が感じられる
3)技術・哲学・芸術が組合わされて「”いのち”ある造形」社会が
急速に広がっている |
8. |
子どもが考える
心と命
(風に心と命を
見出す知的活動) |
認知心理学とは |
なぜ、我々は亡くなった人が何処かにいると感じ、亡くなった人との想い出はいつまでも忘れないのか、これらの問題について「認知心理学」を通して考察する
1.認知心理学とは
1-1.思考・記憶・知覚(外部の情報)など、人間の認知活動の情報処理
のメカニズムを解明しようとする研究
1-2.情報処理の観点から心理事象を探る考え方(方法論)で、
認知心理学的な臨床心理学や認知心理学的な社会心理学など
例えば
偏った認知(赤面は恥ずかしいこと)→感情(人前に出るのが憂欝)
→行動(人前に出られない)が悪循環すると言うモデルにおいて、
認知を修正することにより、適切な認知(赤面は恥ずかしくはない)
→感情(人前で赤面になっても平気だ)→行動(人前に出られる)
|
素朴概念 |
1.認知心理学の対象としての素朴概念
日常経験から自身で作り獲得した現在の科学では不適切な知識の事
2.子どもの多様な素朴概念
・小売値≧仕入値:100円で仕入れた物を120円で売るのはずるい(利益に対する
概念が無い)
・物は固有の熱を持つ:毛布に包まると温かいから氷を毛布に包むと早く溶ける
3.大人の素朴概念
映画館での「学割」制度は何故あるか→学生は貧乏だから。ではなく正解は安くして
需要を増やし、同時に将来の客層を確保するのが目的
|
素朴概念の特長と
生命に関する素朴概念 |
1.素朴概念の特長は、現在の科学と一致しないが、一定の妥当性を
持ち実感による確証度は高い
2.更に、能動的な知的活動の産物で、広範な問題解決に適用される
(自分で作った知識は応用が利く:振り込めサギが良い事例)
3.生命に関するものでは、生命概念の発達の中で以下が有る
3.1)人に有用な物は生きている(太陽は我々を照らしてくれるから生きている)
3.2)自発性に関わりなく運動するものは生きている(風・川・雲など)
3.3)自発的に運動している物だけが生きている(自動車など)
3.4)動物だけでなく、植物も生きている
|
何故、大切な人の想い出は記憶に残るのか
-感情と記憶の関係- |
1.亡くなった大切な人との想い出は、自分の人生を方向づける出来事
であり、何度も参照されるので、そのため何度も思い出されその意味
づけが行われる。そして、その意味と共に再度記憶されるので、何時
までも忘れない(忘れる事はない)
2.大切な人との大事な体験は、忘れてしまうと自分を危機にさらす。
そこで、忘れないでいようと心掛けるが、其れが供養である。
|
「千の風になって」
の合理性 |
1.何故、我々は亡くなった人が何処かにいると感じるのか(?)
・いないことへの実感が無く、人間の能動的な認知の産物として、
実在論的な思考や、アニミズム的な思考が働くから
(アニミズム:物事には霊魂が存在し、全ての事象はその働きによるとする考え方)
2.何故、亡くなった人との想い出は何時までも忘れないのか(忘れようとしないのか)
・其の人の人生にとって意味が有る記憶であり、しばしば参照される為に忘れ難い。
・忘れてしまう事自体が自分自身を危機にさらす。
「千の風になって」の歌詞には此の上記の2つの意味するものより
極めて合理性が有る。
|
7. |
生活に役立つ
微生物 |
微生物とは |
@ 肉眼では見えない生物(大きさ:数十ミクロン以下)
(属名) ((種名) (日本語名)
A 名前(ラテン語):例えば、Escherichia Coli・・・・・・大腸菌
(人の名前)(大腸)
B 特長
分類学的多様性・・・全部で凡そ17万種
1) きのこ・カビ・酵母・・・・・8万種
2)細菌・放線菌・古細菌・・・5千種
3)藻類(アメ−バ−など)・・4万種
4) 原生動物・・・・・・・・・・・・4万種
C 増殖が速い:1個体→2個体への細胞分裂による増殖が20分間
(大腸菌が倍加するのに要する最少時間) |
微生物の培養
とその利用 |
1)微生物の培養
微生物を培地(寒天を下地にして水にブドウ糖などの栄養素を溶かし
たもの)の中で増殖させること。個体培養と液体培養が有る
2)微生物の利用
@ 発酵・醸造(ワイン、日本酒、ビ−ル、ヨ−グルト、納豆、味噌、醤油)
A バイオ燃料(アルコ−ル、水素)
B 生理活性物質(酵素、抗生物質、ホルモン、抗癌剤、免疫抑制剤)
C 機能性食品(抗酸化、免疫促進)
D 排水・廃棄物処理、堆肥)
3)ジベレリン(食物成長ホルモン)
基は稲が成長し過ぎてモミが付かない病気の研究の中で、稲の根に
馬鹿苗病菌(カビ)が関係していることを日本人が発見し逆にブドウの
房の成長期(5月)にこの溶液に浸けた所、成長が早くしかも種の無い
ブドウが出来た(1940年頃)そこで、以来「種無しブドウ」が生産される
様になった。 |
生活に関わる
微生物 |
@ 酵母:ワイン酵母や清酒酵母に代表される酵母菌
A 細菌:納豆菌、乳酸菌(ヨ−グルト、チ−ズ、漬物)
B カビ:青カビから出来るペニシリン(抗生物質)、麹菌、貴腐菌
C 放線菌:此の菌から抗生物質(ストレプトマイシン)、免疫抑制剤
等が出来る |
産業 (医学)
への利用研究 |
1)新規感染症への対応:SARS、鳥インフルエンザ等
2)薬剤耐性菌への対応:MRSA(ブドウ状球菌で、薬が効かなくなる)
3)バイオマス(生物体)研究による水素やアルコ−ルの利用(燃料) |
山梨で見つかった
新属新種の放線菌 |
放線菌は全世界で150属が判明しているが、其の内6新属50新種が山梨で発見されている。中でも、武田神社の堀の地層から200年前の分離された希少放線菌が見つかっている。(放線菌:抗生物質を作る
ベ−スとなる菌で、ストレプトマイシンが知られている。但し数十年すると耐性を持つ菌が発生するので常に新属を開発しなければならない) |
6. |
健康づくりと運動
-質の高い人生の為に- |
健康寿命 |
1)健康寿命は、要介護を必要としない自立して生活できる期間を言う
2)要介護の原因疾患
健康寿命を脅かす3大疾患(@、A、E)と運動(C、D)の関係
@脳血管疾患(脳卒中)・27.3%
A認知症 ・・18.7%
B老衰 ・・12.5%
C関節疾患 ・・・9.1%
D転倒・骨折 ・・・8.4%:CとDを合わせて、E:運動器疾患
(筋肉、骨、関節)・・17.5%
標語:「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」
|
メタボリック・ドミノ |
2005年に発表されたメタボリックシンドロ−ムは、以下の様なドミノが
次々に倒れ病気に至るメタボリックドミノで判り易く説明されています。
メタボリック・ドミノ
生活習慣→肥満(内臓脂肪:皮下脂肪に有らず)→脂質異常・高血圧・食後高血糖→動脈硬化・糖尿病→心臓病・認知症・脳卒中・神経障害・網膜症・腎不全、と言った其々のドミノが倒れて行く考え方で表されていますが、最終局面に至る前の出来るだけ早い段階で、何とかドミノを止めようと提唱する考え方。 |
肥満の原因 |
太り易い状態は、食べ過ぎが原因だが、もう一つに消費不足がある
・日本人の平均の摂取カロリ−:2226kcal(1975年)→1898kcal(2007年)
と少しずつ減少している。そこで、肥満が増えているのは食べ過ぎと
共に消費不足が原因と言える。(消費不足=運動不足)
・消費を支える中心は、基礎代謝(主に筋肉)
・一日の基礎代謝の変化(年代と共に変化):厚生労働省資料より
18才の基礎代謝:1600kcal→60才:約1350kcal(男)
同 上 :1200kcal→同 上:約1100kcal(女)
・加齢と共に摂取エネルギ-を減らす必要がある
・太る事の現代的解釈(都市、工業、文明社会)
1)食べ過ぎ・運動不足→脂肪蓄積→健康寿命の喪失(死)
2)日常茶飯事として飢えは無く、太り易い体質だけが残った |
骨折と骨粗しょう症 |
骨折の主因として転倒があるがその原因は2つ
@咄嗟の一歩が出ない→運動能力、筋力やバランスの低下
Aもともと骨が折れ易かった→骨と筋力(運動器)の機能低下
骨粗しょう症の予防
@1次予防:最大骨量のアップ
A2次予防:加齢に伴う低下の抑制→自分の体を動かすこと
(使わないと想像以上の早さで機能低下する)
|
認知症の予防 |
海馬と運動の関係(海馬:新しい記憶を保存する場所)
@運動すると海馬の血流量が増し機能が高まる
A習慣的な運動で、空間学習・記憶注意認識や言語流暢性が高まる
B軽めの運動を継続的に実施すると、海馬機能が向上する
C高齢者(人)の海馬サイズは体力に比例する |
結 論 |
1) 歩くこと(少しだけ意識をして歩く)
2) 筋肉を刺激する(体重を使って筋肉を動かす)
|
5. |
いのちと水
そして生活 |
惑星の水の存在 |
@火星にも水が有る。しかし、殆どが氷の状態。しかし、水が流れた跡
が観測されているので、現在液体の水を確認中とのこと。(太陽系で
は水は珍しくない)
A地球上の生物は液体の水が不可欠で、水を前提として生命が生ま
れ発展して来た。 |
体内の水の割合 |
@人間の体内の水は以下の通り(体重に換算)
出生直後(80%)→乳幼児(70%)→成人(60%)→高齢者(55%)
A冬眠する哺乳類と海に住む哺乳類は、脂肪の代謝(分解)により水を
得ている
・ラクダのコブは脂肪の塊
・カンガル−ネズミは水を飲まず食物の代謝により必要な水の90%
を得ている |
世界の5歳未満児
の死亡者数と、
仮想水について |
@5歳未満児の死亡者数(1,000人に対する割合)・・ユニセフ資料
日本:4人、カンボジア:82人、シエラレオネ:270人。此の死亡数
の原因の筆頭は不衛生な水による下痢が関係している。
A日本は水に恵まれ且つ衛生的な水が手に入るが、食糧生産国では
作物を作るのに多量の水を使うので、食糧を海外に頼る日本は将
来世界的な水不足から食糧難に陥る事が考えられる。また、作物
を作るのに必要な水を「仮想水」と呼び、結局食糧の輸入国である
日本も仮想水の不足から逃れることは出来ない。例えば、小麦1
トンを生産するのに1,000トンの仮想水が必要となる。 |
世界の上下水道 |
宗教上の理由や生活レベルの低さから汚れた川から飲み水を汲んだり
(バングラディシュ)、トイレが無く下水と上水が区別されていない国
(カンボジア、ネパ−ル等)が沢山ある。(日本にいては考えられないが) |
山梨大学の研究
活動(COEについて) |
山梨大学グロ−バルCOEでは、世界各地の水に起因する災害・病気を軽減するために先端研究(医科学・疫学・気象レ−ダ−・・・など6項目)を展開している。
(主に東南アジアを中心に当該地域からの留学生を受け入れて共同研究している)
COE:center of excellence・・・多くの大学及び研究所などが取組ん
でいる |
|
4. |
命を支える
食育と健康 |
糖尿病の現状 (20歳以上) |
H19年10月の1億2千万人の人口に対するサンプリングによる推定値
@糖尿病が強く疑われる:約890万人(HbA1cが6.1以上)40歳以上
では男性(19.4%)、女性(10.2%) A糖尿病の可能性が否定出来ない:約1,320万人(HbA1cが5.6以上 6.1未満)合計2,210万人 |
新メタボリック シンドロ-ム |
メタボリックシンドロ−ムとは8学会による下記其々の項目中2項目以上が該当する場合を言う
@ウエスト周囲径が男性85cm以上女性90cm以上
A中性脂肪(TG)値が150mg/dl以上又はHDLコレステロ−ル値が
40mg/dl未満 B収縮期血圧が130mmHg以上又は、拡張期血圧が85mmHg以上 C空腹時の血糖値が110mg/dl以上。40〜74歳で見ると、男性の2人 に一人、女性の5人に一人がメタボが強く疑われるか又はその予備 群と考えられる。 |
3大栄養素以外の 摂取注意点 |
朝食の欠食率が年々上がっている。更に野菜の摂取量の平均値が290g(基準は350g以上)と不足している。又、脂質の摂取量も増加している。食塩が男性12g(目標値10g未満)女性10.3g(目標値8g未満)と目標値に対してまだ高い。但し、摂取エネルギ−は減少傾向にある。 |
PFCの摂取量 |
食事をバランス良く摂ることが大切で、3大栄養素である蛋白質(P)、 脂質(F)、炭水化物(C)のバランス(平均値)は摂取するエネルギ−に対して、Pが15〜20%、Fが20〜25%、Cが60%が理想だが、脂質が現状増加傾向にある(30%以上の割合)しかし、高寿命である日本のこのPFCの数値が世界のお手本になっている。 |
脂質の注意点 |
脂質については、脂肪エネルギ−のみならずその質についても考慮する。肉類にある飽和脂肪酸はn-3脂肪酸(魚)に変え、油類はn-6系脂肪酸(植物性油)が望ましい。 |
3. |
生活支援ロボット
-人の生活・命を支援
する機械たち- |
ロボットの分類 と成長 |
ロボットは今後RT(ロボット・テクノロジ−)として
@もの作り(産ロボ)
A介護を中心(安心・安全・公共ロボット)
B人手不足対応(生活・サ−ビスロボット)
の3分野に区分されて進化すると考えられるが、2010年と2030年(20年後)の生産額を比較予測すると
@は1兆3千億円→4兆7千億円(3.5倍)に対し、
Aは300億円→2兆7千億円(90倍)
Bは400億円→2兆3千億円(約60倍)の成長が見込まれる。 (日本ロボット工業会) |
日本の人口予測 |
日本の人口(計算上)は1.15億人(2030年)、1億人(2045年)、9000万人(2055年)、4500万人(2100年)で、2055年には人口の2.5人に一人が65歳以上となる高齢化が明白。しかも単独世帯・高齢者の一人世帯・認知症などの増加が避けられないので、上記A及びBの開発を急がないと間に合わない。 |
少子高齢化社会 への取り組み |
東京大学が国内企業7社(パナソニック、三菱重工、トヨタ、富士通、凸版印刷、オリンパス、セガ)とIRT(IT+RT)研究機構を立ち上げた。その目的は、
@少子高齢社会の課題解決に貢献するIRTイノベ-ションを創出する
A研究の初期から大学と企業が対等な立場で協働し「死の谷」を克服
する産学連携の新たなモデルを実現する
B細分化された専門領域を結びつけ、課題解決を実現する能力を備え
た人材の育成。 |
同上の途中経過 |
上記の途中経過として、掃除ロボットや片付けロボット及び゙キッチンロボット(皿洗いロボット)のビデオを見たが、画像処理と思考判断等にかなりの時間を要し実用化までの道のりはまだ相当先になることを実感した。
ただ5月に脳波を用いて電動車イスの操縦を行う新聞記事を読んだが、地道でも大切な研究である事を痛感した。 |
ロボット工学3原則 |
ロボット工学三原則は、アイザック(ロシア)・アシモフ(アメリカ)作によるSF小説により下記のように取り決められた(1942年)
1)ロボットは人間に危害を加えてはならない。又、何も手を下さずに 人間が危害を受けるのを黙視していてはならない。
2)ロボットは人間の命令に従わなければならない。但し第一原則に 反する命令はその限りではない。
3)ロボットは自らの存在を護らなくてはならない。但し、第一、第二
原則に違反しない場合に限る。 |
2. |
生命の誕生
-不妊治療の現状 と将来の展望- |
不妊症とは |
不妊症は頭痛などと同じ病気の一つで、全夫婦の10%〜15%(300万組に近い夫婦)に子供が授からない悩みを持っている。 |
不妊症の治療 |
@排卵障害:排卵誘発剤の使用(不妊症夫婦の内20〜50%) A卵管閉塞:体外授精(配偶者間人工授精(同上夫婦の30〜50%) B乏精子症[男性の精子数が不足するため、元気な精子を取り出して 卵子に人工的に入れる C無精子症:他人の精子を人工的に入れるものが認められている (正常な精子は1cc中に2,000万)] いずれもART(アシスト、リプロダクティブ゙、テクノロジ-)と呼ばれている。 |
多産児出産 |
排卵誘発剤(ホルモン)の加減で卵子が複数排卵した結果発生するが、母体に良くないので一つを残して後は凍結させ後日子供が欲しい時に解凍して使用する事が普及し始めている。 |
不妊治療の問題点 |
例えば顕微授精の場合[(顕微鏡を見ながら精子を卵子(直径0.1mm)に注入する]、卵子を器具で押さえて授精させるが、本来の受精に比べ安全性の点で物理的にリスクがある。 |
不妊治療の将来 |
例えば不完全な卵子または精子を取り出して、ES細胞やiPS細胞を使って自分の体細胞から健全な卵子または精子(配偶子)を作り出して受精させる事が出来れば画期的な治療が出来る。 |
クロ−ンマウス |
体細胞のクロ-ンマウスは正常に育たない(太ってしまう)しかし、胚から作ったES細胞クロ-ンマウスは何故か正常(理由不明) |
男女の産分け |
精子により決まる |
1. |
遺伝子について
「生命(いのち) の設計図
−遺伝子はヒト/ 人間の設計図か- |
人遺伝子(人ゲノム) の解明 |
2003年に人間の遺伝子の全体(22,800の人ゲノム:)が解明されたが、生命と遺伝子との関係(例えば感情や情動といった心の動きと遺伝子との関係)などが謎だらけで新たな難問となり、暗礁に乗り上げている。
ゲノム(genome)とは、遺伝子geneと染色体chromosomeの合成語 |
生命とは (キ−ワ−ド) |
@自己再生能:例えば、傷を元通りの細胞で治す能力 A恒常性維持機能:個人としての統一を維持する能力 Bエネルギ−変換能:外部からエネルギ−を得て生命を維持する能力 |
ES細胞とiPS細胞 |
最近話題のES細胞とiPS細胞があるが、どちらも自身の細胞から胎盤以外のどの様な細胞をも作り出す事が出来る。しかし、その場合に前者は卵子の中の胚を壊して作るが後者は壊さずに作るので、安全性と倫理性の点でiPS細胞が優っている。(教授の意見) |
クロ−ン技術 と倫理性 |
クロ−ン技術を含め、今後遺伝子技術が間違った方向に進まない為に正しい倫理性をどの様に構築(成熟)させて行くかが大きな課題。(研究者として常に頭から離れない命題であるとのこと) |
受精卵の成長 |
@ヒトの受精から着床までは1週間、神経系の開始まで15日、胎児の 体の自発的な活動は13週から A受精から22週までを医学的に人と扱わずに中絶もこの期間内に行う 事が決められている(23週からは未熟児として育つ)また、現在体外 授精児は50人に一人の割合で生まれる(国内初から26年が経つ) |
生命(いのち) の設計図 |
遺伝子は生物種としてのヒトの設計図となるが、社会的存在としての人間の設計図にはなり得ない。教育を受けて初めてヒトは人間になる |
染色体と遺伝子 |
染色体の基本構成要素はDNAとヒストンで、一本の染色体には2重のDNAが含まれていて、DNAは非常に長い分子(約8cmしかし、直径は2nm))であり、細胞核に収納するには折り畳む必要がある。DNAは核酸なので酸性であり、塩基性タンパク質のヒストンとの親和性が高く、全体的には電荷的に中和され安定化している。DNAとヒストンの重量比は、ほぼ1:1
つまり、染色体は、DNAを折り畳んで塩基性蛋白質のヒストンで パッキングしたもの 一方、遺伝子(いでんし)は生物の遺伝情報を担う因子であり、DNAを媒体として、その塩基配列にコードされているものを言う。
DNA( Deoxy ribo nucleic acid:ディオキシ リボ ニュ−クリック
エイシド) |