第四十八話
水位(すいい)が半分ほどになっていた池の水が干上(ひあ)がるほどの水蒸気爆発が起こり、セイラの身体(からだ)ははるか上空に吹き飛ばされていた。
意識を失いそうになるセイラの背後に、池底から追ってきた男が迫(せま)る。
「これで終わりだ――!」
特大の光球がセイラを飲みこみ、大爆発を起こす寸前(すんぜん)――突如(とつじょ)として巨大な生き物が現れた!
セイラの衣(ころも)をくわえて爆発から逃れようとする生き物に、後ろから凄(すさ)まじい爆風(ばくふう)が押し寄せる。
『―――ッ!!』
声にならない生き物の悲鳴(ひめい)に、セイラの意識が揺(ゆ)り起こされた。
「お…まえ、黒角(くろつの)……」
『セイラさま、ご無事で…なにより……』
「どうして、おまえがここに……?」
『セイラさまが助けてくれなければ、なつかしい故里(ふるさと)の山に……帰ってくることもできませんでした。今度は私が…助ける、番……』
そう言う黒角の身体が、どんどん希薄(きはく)になっていく。
もはや飛ぶ力さえなくして急速に落下していく黒角の周囲に、セイラは防護膜(ぼうごまく)を張った。
「おまえ…消えかけてるじゃないか!離してくれ、黒角。すぐに気をわけてやる!」
『いいえ…セイラさま、もう手遅(ておく)れです。今の爆風で、ほとんど霊力が……私に気をわけるより、今はご自分を守るために……お使いください』
「そんなこと、できるわけないだろ!助けてくれた仲間を見殺しにしてまで、生き延(の)びようとは思わない!必ずおまえを――」
防護膜の内部に七色の光が満ちあふれる。
柔らかなその光は黒角を包(つつ)みこみ、徐々(じょじょ)に全身を染(そ)め上げていった。
「おまえはここでじっとしていろ、黒角。私は決着(けっちゃく)をつけてくる」
『セイラさま……』
濡(ぬ)れそぼった大きな目がたわんで、表情を持たない黒角が微笑(ほほえ)んでいるように見えた。
『仲間と言ってくれたこと……感謝します。どうか、お気をつけて……』
「ただの仲間じゃない。おまえはもう私の大切な友だ」
セイラは笑って、篁(たかむら)が言った言葉を思い出していた。
――セイラにはすごい力がある、まわりの者を助ける力が……。
そうじゃないよ、篁――セイラは心の中でつぶやいていた。
黒角がいなければ、私の命はなかったかもしれない。
助けられてきたのは、いつだって私の方だ。
でもこれ以上、黒角を巻きぞえにするわけにはいかない。そのために……。
知らず知らずのうちに制御(せいぎょ)していた自分の中にある力を、セイラは今解(と)き放(はな)とうとしていた。
防護膜(ぼうごまく)を出たセイラの前に、男が待ち受けていた。
「なんておやさしい皇子(おうじ)さまだ。たかが精霊のために気を削(けず)るとは……そんな弱々しい波動(はどう)で、私が倒せるとでも……?クックック」
セイラに向けられるどす黒い憎悪が、男の波動をさらに膨(ふく)れ上がらせていく。
「あなたは偽善者だ!そうやって一度は助けた精霊も、最後に自分が助かるためなら結局は見殺しにする!あなたを信じているその精霊が、哀(あわ)れでならない」
「退屈(たいくつ)な話は、やめたんじゃなかったのか?」
セイラは地上を歩くように空中を歩いて、男に近づいていった。
「気を使わなくても、戦うことはできる」
その瞬間――なにが起こったのか、男にはわからなかった。
ただわずかに、セイラの残像(ざんぞう)を目の端(はし)にとらえることができたにすぎない。
気づいた時は全身を打ちのめされ、右胸に走る激痛に耐(た)え切れずうずくまっていた。
もはや空中にとどまっていられず、川のほとりに落ちていく男をセイラが追う。
男は地上に背中を打ちつけて大きく弾(はず)み、そのまま動かなくなった。
かすかな衣擦(きぬず)れの音がして、草を踏(ふ)みしめる音が近づいてくると、男は目を開けて、
「うう…。な…なにを、した……」
「ただの体術(たいじゅつ)だよ。速さを増せば威力(いりょく)は倍増(ばいぞう)する。あばら骨が二、三本折(お)れているだろうから、気をつけた方がいい。ああ、それから……その右腕は麻痺(まひ)していて、しばらく使いものにならないよ」
両手をついて起き上がろうとしていた男は、右手の感覚がないことに気づき、身体の均衡(きんこう)を崩(くず)してまたも背中を打った。
「…とどめを、刺さない…のか……?」
「私に聞きたいことがあると言った。私もそれに興味がある。報復(ほうふく)すると言ったのは、そのことと関係あるんじゃないのか?」
「だとしたら、どうすると……?」
男は木の幹(みき)に寄りかかり、今にも飛びかからんばかりの目つきでセイラをねめつけた。
追いつめられた獲物(えもの)が放つ息苦しいほどの憎悪が、セイラを圧迫(あっぱく)する。
「もう少しだけ時間をくれないか、嵯峨宮(さがのみや)。私が記憶を取り戻すまで……」
呆然(ぼうぜん)とした顔の、男の口元が不意(ふい)にゆるんで、遠慮(えんりょ)のない笑声が森にこだました。
「甘すぎるにもほどがある!命を狙(ねら)った者を、再び野に放(はな)つというのか?あっはっは…っ!」
笑声は突然とぎれて、男は胸の痛みに顔をしかめた。
「それとも、それだけ自信があるのか……」
「自信はない。だからと言って、おとなしく殺されるつもりもない。ただ私は……」
セイラは視線(しせん)を落として、苦渋(くじゅう)に満ちた表情をした。
「自分がなぜ恨(うら)まれるのかわからないまま、決着(けっちゃく)をつけたくないだけだ。あなたもそうじゃないのか?」
男の顔に動揺(どうよう)が広がった。
真実を知る――そのために、今まで待ち続けてきた……。
だが――
「……そう長くは、待てませんよ。これ以上あなたが戻らなければ、『王家』が放(ほう)っておくはずがない。今まで迎(むか)えが来なかったのが不思議なくらいだ。待てば待つほど、私にとっては不利になる」
「王家……」
その言葉に、なにか知らない不吉なものを感じて、セイラの胸がざわめいた。
「もっとも、あなたが記憶を取り戻したら私に勝ち目はない。真実がわかるというなら……それもいいでしょう。敵(かな)わずとも、あなたと刺し違えるくらいの覚悟はある」
男は、左腕で右胸をかばうようにして立ち上がった。
「それに、私はあなたがどんな人か知りたくなった。もし私の思い違いだったとしたら……」
男はセイラと目を合わせ、
「いや……」
うつむいて、孤独な翳(かげ)を頬(ほほ)に刻(きざ)んだ。
どうあがいても、過酷(かこく)な運命から逃(のが)れることはできないとあきらめてしまっている者の顔だった。
「待て、嵯峨宮!」
セイラが呼び止めた時、すでに男の姿は消えていた。
見上げる夜空を、流れ星がひとつ遠ざかっていく。
目を下に向ければ、爆音(ばくおん)を聞きつけた邑人(むらびと)が、長い松明(たいまつ)の列を作って山道を上ってくるのが見えた。
堰堤(えんてい)の崩落(ほうらく)を目の当たりにした邑人の落胆(らくたん)は、ひと通りではなかった。
「結界(けっかい)が解(と)け、堰堤も役目を終えたんだろう。これからは神の遺物(いぶつ)に頼らず、時代とともに歩むしかない」
セイラが話しかけても、邑長(むらおさ)は心ここにあらずといったようすで、瓦礫(がれき)と化した堤防(ていぼう)を眺(なが)めるばかりだった。
――疲れた……。
セイラは、珍(めずら)しく弱気になっていた。
身体の疲れもあったが、なにより心に受けた衝撃(しょうげき)が大きかった。
木の根元(ねもと)に座り込んで、邑人の嘆(なげ)き声を聞いているうちに、いつしかまぶたが重くなってくる。
そして――
山歩きに不慣(ふな)れな篁(たかむら)が堰堤跡(えんていあと)にたどり着いた頃には、セイラは深い眠りに落ちていた。
翌朝、公舎(こうしゃ)で目覚めたセイラの枕元(まくらもと)に、篁と綺羅(きら)姫の姿があった。
「あっ、やっと起きたわ!森の中で眠り込んじゃうなんて、よぽど疲れていたのね、セイラ。心配だったから、二人でようすを見にきたのよ」
「ここは……?」
「邑長(むらおさ)の家よ。邑の人はセイラを畏(おそ)れて近づこうとしないから、目を覚ましそうにないセイラを篁がおぶってきたんですって」
「よけいなことは言わなくていいよ、綺羅さん。それより――」
「聞いてちょうだい、セイラ!あたしたちすっごい発見をしたのよ!」
「発見……?」
セイラは起き上がろうとして、額(ひたい)に押し当てられていた布に気づいた。
手に取ると、青くさい緑色の汁が染(し)み出てくる。
「ああ、それ……よもぎの汁を染み込ませてあるのよ。血を止める効果があるらしいわ。セイラ、額を切っていたでしょ?それでね――」
「その話は後だ、綺羅さん。それよりセイラ、あれからなにがあったんだ?」
「ああ……」
セイラは、昨夜のことをかいつまんで話した。
聞いていた篁と綺羅姫の顔が、みるみる青ざめていく。
「黒角(くろつの)がいなければ、私の命はなかっただろう。その黒角も、爆風にやられて霊力をほとんど失い、防護膜(ぼうごまく)の中で回復を待っている」
「どっ、どうしてその男を見逃したりしたんだ、セイラ!?謂れ(いわれ=理由)もなく人を襲(おそ)うようなやつは、捕(つか)まえて役人に引き渡せばよかったじゃないか!」
セイラは苦笑して、憎しみに塗(ぬ)り込められた嵯峨宮(さがのみや)の目を思い出していた。
「謂(いわ)れはあるかもしれない。私が記憶を失くしているだけで……それに、相手は仮(かり)にも宮家だ。役人には手出しできないよ」
「そ…それは、そうかもしれないけど……」
「嵯峨宮は、私の記憶が戻るまで待つと言ってくれた。だからそれまでは、襲ってくることはないだろう。もっとも、そう長くは待てないそうだが……それで?綺羅姫が発見したことって……?」
「これよ!」
綺羅姫は、枕元においてあったセイラの額飾(ひたいかざ)りを取り上げた。
「これ、とってもいい匂(にお)いがするのね。セイラと同じ匂い……額(ひたい)の血止めをする時に、篁(たかむら)が取っておいたらしいんだけど……さっきね、なにげなく見ているうちに、内側に文字が彫(ほ)られているのに気づいたの!すっごいでしょ、あたしって!でね、セイラなら読めるんじゃないかと思って……」
差し出された額飾りを手に取って、セイラはしばらく眺(なが)めていた。
「ねっ!なんて彫(ほ)ってあるか、わかる?」
「ああ。《贈(おく)る レギオンへ 十歳の誕生日に ロシュフォール王》――そう彫ってある」
「レギオン…?変ね。セイラへ――じゃないの?」
「いや……変じゃないよ、綺羅(きら)姫」
セイラは複雑な思いで、彫られている文字を指でさすった。
「嵯峨宮(さがのみや)は、私のことをレギオン皇子(おうじ)と呼んだ。レギオン・セイラ=ロシュフォール――それが私の名まえだと……」
「じゃ、セイラって……皇子さまだったの!?」
「ちょっと待てよ、セイラ!さっきから気になっていたけど、謂(いわ)れはあるとか、記憶が戻るのを待つとか……あの男が、記憶をなくす以前のおまえを知っていたってことは……」
「そう、本物の嵯峨宮じゃない。嵯峨宮になりすましている、どこの誰とも知れない危険な力を持った能力者だ」
篁と綺羅姫は息を飲んだ。
男に対するつかみどころのない恐怖が、二人の胸に暗い影を落としていく。
「本当にいいのか?そんなやつを野放(のばな)しにしておいて……」
「あの男の狙(ねら)いは私だ。他の者に危害(きがい)を加えることはないよ」
「だから心配なんじゃない……」
綺羅姫はつぶやいて、
「ううん、なんでもないわ。それで、なにか思い出せそう?」
セイラは首を振って、はにかんだように笑った。
「それどころか、むしろ思い出したくない気持ちの方が強いんだ。どうしてかな……」
その言葉に、篁と綺羅姫は顔を見合わせた。
「セイラ、その理由をたぶんぼくと綺羅さんは知ってる」
「えっ……」
「それを話す前に、セイラがこれからどうするつもりか聞いておきたいんだ。つまり……まだあの神剣を探すのかどうか……」
セイラは、王の名まえが彫られている箇所(かしょ)を、しばらく見つめていた。
「……神剣を持ち帰ることが与えられた使命(しめい)だとしたら、私にそれを拒(こば)むことはできない」
「そうか……悪いけど、ぼくはその王を好きにはなれないな」
篁はいつになく厳しい表情で、
「ぼくは、このことは言わないでおこうと思っていた。神剣がにせ物だったことも……そっちの方はすぐにバレてしまったけど……セイラに神剣探しをあきらめてほしかったんだ。でもおまえがそう言うなら、これ以上隠していてもしようがない。いや、ちゃんと知っておくべきだと思う」
そう言って、篁は神が現れた時のことを話しはじめた。
「――あの時現れた神は、結界の中に残っていた残留思念(ざんりゅうしねん)にすぎないと言っていた。真に復活するには、邑(むら)にあずけた神剣が必要だと……でも、邑長が持ってきた物を見ると神は、えーと……」
・ ・ ・ ・ ・ ・
「それは、おりはるこんではない――って言って消えたのよ」
「そう…神剣がにせ物でよかった。もし神が復活していれば、おまえの意識は神剣に飲みこまれてしまうところだったんだ」
「自我(じが)の消滅(しょうしつ)……か」
「そうだよ。口伝書(くでんしょ)にあった石は、おまえの記憶を取り戻してくれるような代物(しろもの)じゃなかった。それどころか、神剣が見つかればおまえはいつか……」
青ざめたセイラの頬(ほほ)に、銀色の髪が降りかかる。
篁は、セイラが泣いているような気がした。
――そうさ。こんな不合理(ふごうり)なこと、受け入れられるはずがない――!!
「ありがとう、篁。話してくれて……」
顔を上げたセイラは、わずかに微笑(ほほえ)んでいた。
憤(いきどお)るでもなく涙ぐむでもなく、心のどこかに、運命を諦観(ていかん)しているもうひとりの自分がいるかのように……。
「セイラ!それでもまだ、神剣を探すつもりか!?」
「おまえの気持ちはうれしいよ。綺羅姫も、もう泣かないで……」
「セイラ……」
涙で袖(そで)を濡(ぬ)らす綺羅姫に、セイラはやさしい眼差(まなざ)しを注(そそ)いだ。
「神剣は探し出す。それが与えられた務(つと)めだと思うから……だからと言って、なにもせずに神の前に自分を差し出したりしない。私はそれほど弱くはないつもりだ」
セイラは、額の傷口に手をおいた。
次に手を離した時、傷口はきれいに消えていた。
「方法を見つけるよ。神に勝てる方法を、必ず……」
自分に強く言い聞かせるように言って、セイラは額飾りを戻した。
「そろそろ黒角(くろつの)をむかえにいってやらないと……一緒に来るかい?」
セイラと篁、綺羅姫の三人が公舎(こうしゃ)を出ると、建物のまわりに大勢の邑人が集まっていた。
「セイラさま!おあずかりした石をお返しできなかったことは、幾重(いくえ)にもおわびいたします。それだけでは納得いかないと言われるなら、私の命をお取りください。ですが、びぃーどの火を取り上げることだけは……それだけはお許しください!あの火がなければ、われらはこれからどうしたらいいか――!」
邑長(むらおさ)の必死の嘆願(たんがん)に、セイラは困惑(こんわく)した。
「取り上げたわけじゃない。おそらく結界(けっかい)が破られたことで、堰堤(えんてい)は崩(くず)れるべくして崩れたんだ」
「で…では、セイラさまのお力で、もう一度使えるようにしていただけませんか?」
「私には無理だ。悪いが、力にはなれない」
それは嘘(うそ)だった。
だがそう言わなければ、邑人たちをあきらめさせることはできなかっただろう。
堰堤は、この時代にあってはならない神の遺物(いぶつ)なのだから。
「びぃーどの火が、使えない……そんな日がこようとは……」
がっくりとうなだれる邑長に、セイラはなにか言葉をかけてやりたくなった。
「この邑は、過去の時間にとどまり過ぎた。結界がなくなったのだから、これからは自分たちの足で歩き出さなくてはならない。さまざまな物や人が邑に入ってくるだろう。邑は今よりもずっと大きくなる。神の遺物に囚(とら)われているよりも、この先の邑をどうするかを考える方が、ずっとやりがいがあることじゃないのか?」
邑長は手の下の土を握(にぎ)りしめ、やがて――
「……お言葉に、従いましょう。かわりに…と言ってはなんですが、お願いしたいことがあります」
そう言って、邑長は後ろを振り返り、ひとりの少年を呼び寄せた。
年齢は、鳶丸(とびまる)や乙矢(おとや)より少し上の十四、五歳といったところだろうか。
筒袖(つつそで)の麻の上衣(うわぎ)に、袴(はかま)のひざ下を切り落としたような下衣(したごろも)を身に着けている。
蓬(よもぎ)のようにぼうぼうと伸びた髪は赤茶色で、強い意思を秘めた榛色(はしばみいろ=黄褐色)の目が、じっと虚空(こくう)を睨(にら)んでいた。
「私の息子の子で、ナギと言います。この子に、外のようすを見せてやりたいのです。言葉は私が教えてあります。どうか従者としてお連れくださいませんか?」
「ナギ…か。おまえ、なにを見ている?」
「セイラさまの頭の上にいる、もうひとりのセイラさま……」
その言葉に、篁と綺羅姫はぎょっとしてセイラの頭上(ずじょう)を見上げた。
「なっ、なにもないじゃない!」
「おい、脅(おど)かさないでくれよ!」
だが、セイラの反応は違っていた。
大きく見開かれた目には、驚嘆(きょうたん)の色が浮かんでいる。
「おまえの目には、そんなものまで見えるのか」
「すっ、少しだけだ!」
「ナギ!」
邑長にたしなめられて、少年は顔を赤らめた。
「少しだけ…です」
「じゃ、ほんとに見えているのか?」
真顔で聞き返す篁に、少年はむっつりとしてうなずいた。
「………はい」
「この邑では、稀(まれ)にナギのような子が生まれます。山や風の精霊の声を聞き、姿を見ることができるのです。われらには見えなくとも、セイラさまの内におられる神の存在を、この子なりに感じ取ったのでしょう」
「まるで巫女(みこ)みたいね」
「綺羅さん、それを言うなら覡(かんなぎ=男の巫女)って言うんだよ」
「私たちと一緒に都へ来るか、ナギ?」
少年はまぶしそうにセイラを見上げて、極上の返事をした。
「はい!」
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