第四十話


 左大臣邸の裏門に近い人気(ひとけ)のない小路(こうじ)に、セイラと篁(たかむら)は降り立った。

 かたい地面に足が着くなり、篁は腰が抜(ぬ)けてへたりこんだ。

「ははっ…宙を飛ぶなんて生まれて初めてだよ。こんなことができるんだったら、もっと前に言ってくれよ」

「いや、できなかったよ。尹(いん)の宮の懐剣(かいけん)が教えてくれた……」

「えっ?」

 驚いて見上げた先の表情は、暗くて篁にはよく見えなかった。

「それより、綺羅(きら)姫を呼んできてくれないか?左大臣邸の裏手(うらて)に牛車(ぎっしゃ)がきているはずなんだ」

「あ、ああ……わかった」

 篁が行ってしまうと、セイラは尹の宮の身体を横たえ傷口に手をかざした。

「確か、あの男はこうやって……」

 手のひらから、細胞を賦活(ふかつ)し活性化させる生体(せいたい)エネルギーをそそぎこむ。

 月明かりの下、徐々(じょじょ)に傷がふさがっていくのを見ていると、セイラは奇妙な感覚に襲(おそ)われた。

 ――こんな場面、以前にもどこかであったような……。

 烏帽子(えぼし)をかぶっている尹の宮と、長い黒髪の男の幻影(げんえい)が重(かさ)なり合う。

 ――これは、誰だ……?

 苦痛に顔を歪(ゆが)ませた見知らぬ男の目が開きかけようとした時、牛車が近づいてくる音が聞こえ、幻想は破られた。

 先導(せんどう)してきた篁の掲(かか)げる松明(たいまつ)が近づいてくる。

「セイラ――!」

 牛車(ぎっしゃ)が止まると、綺羅姫は後ろ簾(すだれ)を撥(は)ね上げ、身を乗り出して叫んだ。

「あんまり遅(おそ)いから心配したのよ!火に巻(ま)かれたんじゃないかって……」

「私は大丈夫だ。でも尹の宮が……」

 セイラは直衣(のうし)を脱いで血まみれの尹の宮をくるむと、牛車の中に運び入れた。

「この人が、尹の宮?」

「ああ、左大臣に胸を刺された。傷は塞(ふさ)いだが血を流し過ぎて気を失っている。このまましばらく、素性(すじょう)を隠して九条の邸(やしき)であずかってもらえないか?」

「いいわ。和泉(いずみ)にはあたしから言っとく。でも……」

「そうだよ、どうして素性を隠すのさ?それにここからだったら、九条へ戻るより尹の宮の邸の方が近いよ」

 牛車に同乗(どうじょう)していた真尋(まひろ)が、当然の疑問をぶつけてくる。

「尹の宮は、火事に巻き込まれて死んだ……ここにいるのは、名も知らない誰かだ」

「そりゃ、セイラがいなかったらそうなっていたかもしれないけど、尹の宮はちゃんと生きてるし、別にそこまでしなくたって……」

「真尋、ここは言う通りにしましょう。セイラにはなにか考えがあるのよ」

 不満げにまだなにか言いたそうにしている真尋の横で、綺羅姫はセイラのようすが気になっていた。

 ――ひどく疲(つか)れた顔をしてる……。

 病(や)み上がりで、無理をしすぎたのだろう。

 本当は九条に戻ったりしないで、尹の宮とどんな話をしたのか聞いてみたい。

 でも今は、そんなことを聞けるような雰囲気(ふんいき)ではなかった。

「…………」

「セイラ、尹の宮がなにか言ってる!」

 真尋に言われて、セイラは尹の宮の口もとに耳を近づけた。

 うっすらと目を開けた尹の宮が、弱々しく微笑(ほほえ)んでなにごとかをささやくと、セイラはぎょっとしたように身を引いた。

 後ろ簾(すだれ)が下ろされ、松明(たいまつ)と牛車が遠ざかった後も、物思いに沈んだままのセイラに篁が歩みよる。

「尹の宮は、なんて?」

「うん……私を助けたことを、いつか後悔(こうかい)する日がくるだろう……あなたが私を殺しにくる時まで、この命はお預(あず)かりしておく、と……」 

「どういう意味だろう。尹の宮には、まだなにか隠していることがあるのかな」

「私も、それを考えていた……」

 左大臣邸を焼き尽(つく)くした炎は、まだ夜空を焦(こ)がし続けていた。

 ついさっきまでの恐怖を思い出させるその暗紅色の空を見上げながら、篁は顔をしかめた。

「真尋の肩を持つわけじゃないけど、あのまま尹の宮を行かせてしまってほんとによかったのかな。後悔する日がくるって、またなにか企(たくら)んでいるんじゃ……」

「尹の宮は、左大臣と一緒に炎の中で死のうとしていた。それを止めたのは私だ。もしまだなにかするつもりだったら、簡単に死を選んだりしないよ」

「復讐(ふくしゅう)はすんだってこと?」

 セイラは顔を上げて、篁に向き直(なお)った。

「ぼくにだって、そのくらいわかるさ」

 篁は苦笑いして、数日前のことに思いをめぐらせた。

「おまえの行方(ゆくえ)がわからなくなった時、悪いとは思ったけど残していった文を読ませてもらった。それで十七年前の事件に思いあたったんだ」

「そうか……」

「ぼくは、左大臣捕縛(ほばく)の命を受けている。だから、今夜起きたことを報告しなくちゃならない。左大臣が命を落としたのは、尹の宮の仕業(しわざ)?もしそうなら……」

「尹の宮は邸(やしき)に火を放っただけだ。左大臣が焼死(しょうし)したことを考えれば、尹の宮の仕業と言えなくもないけど……直接手を下してはいない。あの時、斬(き)りかかってきた左大臣を退(しりぞ)けようとする私の意思(いし)に、ある力が感応(かんのう)した。左大臣はその力によって吹き飛ばされたんだ」

「ある力?あの時の突風(とっぷう)か――っ!?」

 篁ははっとしてセイラを見つめ、思いつめた表情で、

「……なら、放火の件(けん)だけでも報告書に……」

「篁――!」

「放火は重罪だ。見すごすわけにはいかない」

「いいかげんにしないか、篁!誰かを捕(つか)まえたいなら、私を捕まえればいい。放火のことだってはっきりした証拠があるわけじゃない。それに尹の宮は死んだ――私はそう言ったはずだ。死んでしまった者を裁(さば)くことは誰にもできないよ!」

「じゃあ!セイラは、尹の宮が今までしてきたことはみんな忘れて、目をつぶれっていうのか!?」

 篁は怒りに駆(か)られて、セイラにつかみかかった。

「ぼくは嫌だ!尹の宮は生きてる!復讐のためなら関係ない者まで平気で巻き込むようなやつを、このままにしておくなんて――」

「……尹の宮はすべてを捨てたんだ。東宮の位(くらい)を追われ一族から引き離されて、わびしい暮らしに甘んじながらやっと手に入れた地位も財産も……もう十分だろう」

 物静かな、それでいて有無を言わさぬ口調に、篁は思わずひるんで手を離した。

「おかしいよ、セイラ。なにがあったか知らないけど……尹の宮が左大臣をそそのかしたせいで、おまえまで命を落とすところだったっていうのに……どうして、尹の宮を助けたりしたんだ!死にたがっていたんなら、そのまま死なせてやればよかったじゃないか!」

「ずっと、待っていたって……」

「えっ?」

「ああ、いや……」

 セイラは、子どもの頃の尹の宮がたどたどしく物語を読み上げる姿と、目を輝かせて聞いている幼い楊(よう)姫の姿を思い浮かべていた。

「それが……亡くなった楊姫のために私がしてやれる、たったひとつのことだから……」

「楊姫?亡(な)き女御(にょうご)さまのため……?」

 ――その時、松明を持った検非違使(けびいし)たちが、暗い小路を照(て)らしながら急ぎ足で近づいてきた。

「そこにいるのは、右近衛(うこんえの)少将殿ではありませんか!?」

 篁の姿を見つけると、検非違使たちは一斉(いっせい)に安堵(あんど)の声を上げて駆けよった。

「ご無事でなにより!邸の門をくぐったきり戻ってこられないので、心配になってこのあたりを捜しておりました。実は、この火事が大変なことになっておりまして……」

 検非違使の尉(じょう=三等官。この場合、篁の副官)の話によると、突風で巻き上げられた左大臣邸の家財(かざい)道具や屋根の檜皮(ひわだ=屋根をふくヒノキの皮)が方々に飛び散り、あちこちで火の手があがっていると言う。

「なんだって――!?」

「我々が確認しただけでも三か所、他にもまだ、飛び火したところがあるかもしれません」

 篁は、驚きを通り越して恐怖した。

 このままでは、都中が炎に包(つつ)まれる――!!

「わかった!おまえは内裏(だいり)に戻って、このことを別当(べっとう)殿に報告してくれ。残りの者は、三か所の家の者の避難(ひなん)を急がせるんだ!ぼくは、他にも飛び火しているところがないか調べる。セイラ!ぼくと一緒に――」

 篁が振り返った時、そこにセイラの姿はなかった。


  

       


 翌朝、都人(みやこびと)は全焼(ぜんしょう)した左大臣邸の北側に二か所、東側に三か所、南側に一か所、およそ夏にはふさわしくない光景を目にすることになる。

 まるで氷柱(つらら)を寄せ集めたような氷塊(ひょうかい)が、一様(いちよう)に黒こげになった門や屋根を覆(おお)っていた。

 人知(じんち)のおよばないその不可思議な現象(げんしょう)に人々は唖然(あぜん)としたが、氷塊(ひょうかい)が火をくい止めてくれなければ、都が大火(たいか)に飲み込まれていたことは明らかだった。

 これは御仏(みほとけ)の加護(かご)によるものか、それとも人のなせる業(わざ)か――

 いずれにしても、都は姿なき守護者によって守られた。

 火災(かさい)を止める術(すべ)を持たない都人は、昨日と同じように今日があることを心から感謝して、氷塊に向かい手を合わせるのだった。

 一方――

 尹の宮と左大臣の焼死(しょうし)は、宮中に深い驚きをもたらした。

 とりわけ左大臣の権勢(けんせい)を頼(たの)みにしていた者にとって、その死は大きな痛手(いたで)だった。

 だがそんな宮廷(きゅうてい)人の悲嘆(ひたん)も、セイラ生還(せいかん)の知らせの前には朝霧(あさぎり)のように消え去った。

 三位(さんみの)中将は、何度もセイラをしめ上げては号泣(ごうきゅう)し、しめ上げては号泣した。

 日頃は冷静な権(ごんの)中将も、この時ばかりは頬(ほほ)を紅潮(こうちょう)させ目を潤(うる)ませた。

「冥府(めいふ)の大王(=閻魔)も、あなたに会えなかったことが心残りでしょうね」

 一連の騒動(そうどう)は、東宮(とうぐう)を陥(おとしい)れようとした左大臣の陰謀(いんぼう)ということで決着(けっちゃく)した。

 勅命(ちょくめい)がくだり、言いのがれできないと悟(さと)った左大臣が、運悪く訪(おとず)れていた尹の宮を道連れに、邸に火を放ち自害(じがい)した――というものである。

 これは、セイラから例の証文を受け取った帝(みかど)が下した決断(けつだん)だった。

「尹の宮が、そなたにそれを……」

「はい。今回の騒動(そうどう)は、尹の宮がこの証文を手に入れるためにおこしたものでした」

 清涼殿(せいりょうでん)で帝と対面したセイラは、おりたたまれた古い料紙(りょうし)を差し出した。

「当時の右大臣が、まだ参議(さんぎ)だった左大臣にあてて書いた文です。よほど急いでいたらしく、かねてよりの計画を今夜実行すること、参議(=左大臣のこと)は秘匿(ひとく)しておいた神璽(しんじ)・宝剣を東宮御所に運び込むこと、弟の右馬頭(うまのかみ=左大将のこと)にはなにも知らせず左大臣…喬周(たかちか)卿を足止めさせておくことなどが、殴(なぐ)り書きのように書かれてあります」

「……驚いたな。そんな大それた物をまだ持っていたとは……」

「左大将はそれを公表しないことを条件に、兄左大臣に大納言(だいなごん)の位(くらい)を要求していたようです。自分はなにも知らされていなかった、だから陰謀には荷担(かたん)していないと言いたかったのでしょう」

「それにしても、そんなものが明るみに出れば左大将もただではすむまい」

「はい。その危険性は左大将も十分承知していたようで、今回の件でも、その証文を使うことを最後まで躊躇(ためら)っていたようです」

「だが、尹の宮はそれを手に入れた……そういうことか……」

「ご明察(めいさつ)のほどを……」

 長い沈黙の後、帝は深々とため息をついた。

「続けざまに火事が起きたことは、私も気になっていた。失火(しっか)ではなく放火だということだったが……そう言えば、尹の宮の遺体(いたい)はまだ見つかっていないそうだな」

「はい。火事の際(さい)、ふいの突風にあおられて火の海に消えたとしか……」

 セイラは眉(まゆ)ひとつ動かさずに、淡々と答えた。

「生きているはずがない、か……私は宮に、臣下(しんか)として仕(つか)えてくれればと願っていた。親王(しんのう)の身分のままでは栄達(えいたつ)もままならぬ。私の片腕として、政(まつりごと)を助けていってほしかったのだが、こんなことになろうとは……」

 帝の声には、落胆(らくたん)と口惜(くちお)しさがにじみ出ていた。

「宮の気持ちを思えば、わからないでもない……だが、こうなったからには、宮が亡くなってくれてよかったのかもしれぬ。生きていれば、いやでもその責任を追求しなくてはならないところだったが、二人とも亡くなったのであれば、私は少なくとも宮の名誉を守ってやることはできる」

「どうなさるおつもりです?」

「今さら十七年前のことを持ちだして濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)を晴らしたところで、当事者はすでにいない。その証文は、私の胸の内だけにとどめておくことにする。だがそれでは、宮の無念は晴れないだろう。かわりに、今回のことは左大臣にすべての罪をかぶってもらう。そのくらい引き受けても、左大臣も文句はないだろう」

 セイラは、わずかに口元をほころばせて、

「文句があったとしても、あの世から申し立てるのはむずかしいでしょうね」

 日が陰(かげ)り、つかの間の日光をのぞかせては、また陰っていく。

 雲は駆け足で過ぎ行き、前庭の竹をざわめかせて風が吹き渡った。

「……できれば生きている間に、宮と登花殿(とうかでん)を一緒にさせてやりたかった……」

 帝がつぶやくと、セイラははっとして御簾(みす)の奥に目をやった。

「これは誰にも話したことはない。はじめて宮を登花殿に連れていった時のことだ。登花殿は一度だけ、宮のことを明理(めいり)さま――と呼んだ。つい口を滑(すべ)らせてしまったのだろうが、その呼び方はいかにも自然で、親しげだった。私はそれで、二人が古くからの馴染(なじみ)だとわかった。その時から、いつか登花殿を実家に戻して、宮と一緒にさせてやろうと思っていた。だから、私はあえて登花殿には近づかないようにしていた……」

「帝に、そのようなお考えが……」

「登花殿にも……悪いことをした。私がもっと女御の気持ちを考えてやっていれば、あのようなことにはならなかったかもしれない……セイラ、どうした?気分がすぐれないのか?」

「いえ……風のせいで、目にほこりが……」

 セイラはうつむいたまま、こぶしで目をこすった。

「ただいまのお話、お二人が聞いておられたら、どんなに喜んだでしょう。できれば……もっと…早く……」

 片手で顔を覆(おお)って肩を震(ふる)わせているセイラを、帝はかけがえのないものに思った。

「……私には、そなたが生きていてくれたことがなによりうれしい」


  

       


 清涼殿(せいりょうでん)を出てすぐ、セイラは篁(たかむら)に呼び止められた。

「ずっと待ってたんだ。昨日会えなかったから……どうしてもお礼が言いたくて、その……左大臣邸の飛び火を消し止めてくれただろ?おかげで、都は大火に見舞(みま)われずにすんだよ。誰も気づかなくても、ぼくには――」

「さあ。なんのことかな」

 浮かない顔で立ち去ろうとするセイラを、篁はなおも呼び止めた。
                            ・ ・ ・
「今朝、綺羅(きら)さんから文が届いたんだ!あの人が……姿を消したって……」

「そうか……」

 セイラは足を止めて、流れゆく雲を見上げた。

「昨日の夜、高倉(たかくら)が人目を忍(しの)ぶようにして九条の邸に現れたそうだ。たぶんあの人とこれからのことを話したんだと思う。だから、もしかしたら……」

 尹の宮が生きて九条にいることは、真尋(まひろ)をふくめ自分たち四人しか知らないはずだった。

 高倉に知らせたのは、おそらくセイラだろうと篁は思った。

「あの人と女御(にょうご)さまのことも書いてあった。二人は幼なじみだったって……ぼくが考えてたような復讐鬼じゃなかった。あの人はずっと、復讐(ふくしゅう)をとるか女御さまの幸せをとるかで悩んだんだろうな。でも結果的には、左大将殿を死なせてしまった……」

「火を放(はな)ったことは認めていたよ。でもあれは、不慮(ふりょ)の事故だったらしい」

「そうだったんだ……」

 篁はなにかが吹っ切れた顔で、沈んだセイラの横顔を見つめた。

「ぼくがあの人を許せなかったのは、自分が許せなかったからだ。濁流(だくりゅう)に飲まれたおまえが戻るのを、一晩中待っていた時の苦しさは忘れられない。あの時、なにがなんでもおまえが出かけるのを止めるべきだった。おまえが熱を出していることに、ぼくがもっと早く気づいてやれていたら……自分のせいだと思うことがつらくて、苦しくて……おまえを失うことが怖くて……全部あの人のせいにしてしまいたかったんだ」

「篁……」

「だから、ごめんセイラ。なにひとつ力になってやれなくて……本当は、もっと早くこう言うべきだったんだ……」

 こぶしを握(にぎ)りしめ、きつく目を閉じてうつむく篁に、セイラが歩み寄る。

「バカだな、篁……」

 肩を抱きしめて、その手に力をこめる。

「おまえが、謝(あやま)らなければならないことなんてない」

 風が吹き渡り、暗雲を押し流していく。

 つかの間の陽光――

 それは、セイラが負(お)った心の痛みをも和(やわ)らげてくれるようだった。

「………あの、セイラ。みんながこっちを見てるんだけど……」

「ああ、かまわないよ」

「かっ、かまわないって!……そうじゃなくて……」

 篁は耳たぶまで真っ赤になって、頭から湯気を出しながら、

「おまえが抱きついてるから……みんな、その…なんか誤解してるようで……」

「誤解じゃないさ。大好きだよ、篁!」

 セイラはくすくす笑って、もう一度篁を抱きしめた。

 とたんに、四方から囃(はや)したてる声が聞こえてくる。

「セ…セイラ!ぼくをからかってるだろ!もうよせったら……あれっ?」



  次回へ続く・・・・・・  第四十一話へ   TOPへ