第二話 それぞれの想い
「あーーー。いったいどうするんでしょうかねー。オスカーは・・・」
「そうですね。否定はしていたようですけど、何しろ皆さん信用してはいないようですね」
ディアはため息をついた。
「まあ・・・普段が普段ですからねー、彼の場合。どっちにしろ、何か事情がありそうですねーあの子は・・・」
ルヴァが感慨深げに言った。
「そのことはいずれわかる時が来るでしょう。わたくしはあの子が暫くこの聖地にいられるように、時の流れについて女王陛下にご相談してこようと思います」
「あーー、そうですねぇ。いざって言う時に外の世界が何十年もたっていては、取り返しがつかないですからねぇー。さすがはディア。宜しくお願いしますねー」
「はい。・・・・そういえば、あの子は大丈夫かしら? さっきはお腹が空きすぎて倒れたようでしたけれど・・・。立て続けに熱いミルクを二杯飲んで、パンやら果物やらむさぼるように食べたのですけれど・・・」
「あーー、ディア。私が様子を見てきましょう。確か、マルセルやゼフェルたちが側についてくれているはずですから・・・」
「それでは、ルヴァ。宜しくお願いします」
ルヴァはディアの見送りをうけて、ハスラムにあてがわれた部屋へと向かった。
ドアを開けてルヴァは、ソファーに腰掛けているリュミエールの膝を枕に安心したように眠っているハスラムの姿を見て、目頭が熱くなるのを覚えた。
「あっ、ルヴァさま!」
ルヴァの姿に気づいて少年守護聖たちが近寄ってきた。
「腹がいっぱいになったら眠っちまったぜ」
「・・・僕・・・・なんだか可哀想になっちゃいました・・・」
「・・まだ小さいもんな。まったく、オスカーさまときたら・・・」
「まあまあ。・・・とにかく、暫くは聖地にいることになると思いますので、皆さん仲良くしてあげてくださいねーー」
「はい! 僕、弟が出来たみたいで嬉しいな」
マルセルが嬉しそうに言った。
「ヘッ! あのオスカーのガキかもしれねぇんだぜ。・・・・でも、まあ・・・同情するところもあるみてぇだし、遊び相手ぐれぇにはなってやるぜ」
ゼフェルがちょっと照れくさそうに言った。
「俺、あの子が聖地に早く慣れるようにいろいろと教えてやります」
ランディが張り切って言った。
ルヴァは三人に優しく微笑んだ。
そしてリュミエールに向かって言った。
「あーーー、リュミエール。あなたの優しさがこの子にもすぐにわかったんですねー。こんなに安心した顔で・・・」
「わたくしは、この子を見ていると故郷で別れた妹のことを思い出すのですよ。確か・・・ルヴァさまにも弟さまがいらっしゃったとお聞きしましたが・・・?」
「ええ・・・そうですよ」
ルヴァも懐かしそうに頷いた。
そして、安心しきってスヤスヤ眠っているハスラムを、皆、それぞれの想いで見つめていた。
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