一哉の回復は目覚ましかった。
日に日に順調に回復していき、三日目には点滴もとれ、一週間後には普通に生活出来るまでになっていた。
早速仕事も開始した一哉であったが、無理をしないように部屋で出来る仕事のみに限定されていた。
無論、むぎの指示に他ならなかった・・・。

デヴィッドも暇を見つけては一哉の見舞いに訪れていた。
しかし、一哉とむぎの仲むつまじい姿を見ながら段々と消沈した表情になっていった。
一哉もむぎもその変化に気づいて内心は心配をしていたが・・・。
それぞれの心にある複雑な思いだけが空回りしていった・・・。

いつまでも室内にいるのも身体には良くないということで、今日は一哉とむぎは外に散歩に来ていた。
一哉の提案で、例の迷子になった日のむぎの行動を検証してみようということになった。
それになんの意味があるのかとむぎは一哉に食って掛かってはいたが・・・。

例の公園は、ホテルからさほど離れていなかった。

あのときは一人でとぼとぼと歩いた道を今は二人で歩いている。
途中から、一哉が自然とむぎの手を取り歩いていた。
ボールを拾った場所、そのときに思い出した家族との思い出・・・。
すべてを一哉に聞かせていく、むぎ。
そしてそれを黙って聞きながらも、時々突っ込みを入れる一哉。
二人の休息の時間は過ぎていく・・・。

そこでむぎはあの青い蝶のピンバッジを一哉に返す。
一哉はそれをどこで無くしたのか覚えておらず、むぎに頬をふくらまされることになった。

そして、あの時通った道を思い出しながら回帰してみる。
なんてことはない、途中から真っ直ぐ進めばホテルの前を通る大通りに出たものを、大きく迂回して通り過ぎ反対側の街並みに出たのだった。

そして、今度はむぎの提案で、ある店へと一哉は案内された。
それは、あの時助けてくれたウッド夫妻のアンティークショップだった。
店内に入ると、あの時のように主人が優しい微笑みで二人を出迎えてくれた。
残念ながら主人一人だけであったが、そこは一哉が会話を引き受けてくれたので、至極なごやかに時間が過ぎて行った。

そして、ホテルへと帰ってきた二人。
そのまま外食をという話も出たが、やはり本格的な外食はまだ病み上がりの一哉にはきついだろうということで、結局むぎの手作りの夕食となった。無論、それで二人とも文句はなかった。

いつものように就寝前の一時、一哉がむぎに言う。

「明日から仕事に復帰するぞ・・・」

「・・・・うん。もう平気・・・・・そうだよね」

「ああ。このままいつまでも俺が休んでいるわけにはいかない。・・・というより、俺には向かないな・・」

「・・・うん。なんとなくあたしもそう思っていたよ」

「・・・そうか？」

「・・・やっぱ、一哉くんは仕事している時が一番生き生きとしているなぁ・・・って思ってたとこだった。身体がもう平気なら、あたしはいいよ。十分に二人で遊んだし・・・・」

「・・・大したことはしてないけどな・・・」

「そんなこともないよ。今までの中で一番恋人同士らしかったかも・・・」

「・・・・俺はまだ不満なんだがな・・・」

「・・・え？」

そこで一哉は神妙な面持ちになる。

「・・・今夜は俺の部屋に来いよ」

むぎは一瞬、その大きな瞳を見開いた。
一哉の言う意味・・・それは。
以前に松本で・・・そしてここに来た最初の夜には一哉と一緒の部屋で、ベッドで眠ったことはある。
しかし、今一哉の言う意味は違う意味だろう。
むぎにもその言葉のいうことはわかった。

「・・・う、うん。いいよ」

むぎは緊張した面持ちの中にも頬を赤く染めて答えた。

「それじゃ、俺は先に部屋に行っている・・・」

一哉も何気にむぎの顔を見ないまま席を立った。

「・・・わ、わかった」

むぎはいつものように、食器の後片付け、照明のチェックなどをしていく。
しながらも胸の鼓動はどきどきしまくりであった・・・。
最後にリビングの照明を消し、窓から入る月の蒼い光を暫し見つめた。

むぎが寝室に入ると、一哉はむぎが今見てきたのと同じ蒼い月の光を、照明を消した寝室の窓から受けていた。

「・・・・こっちに来い」

いつものように命令口調で言う一哉。しかし、その言葉は優しい。

黙ってむぎが一哉に近づく。
一人で受けていた蒼い月の光が二人を照らし出す。

むぎの手を取り、腰に手を回して一哉は黙ってむぎを見つめる。
そのまま唇を近づけていく。
むぎも自然と瞳を閉じて、その唇を受け止める。

二人の蒼い夜がそこから始まる・・・・・。

ふわりと包み込むようないつものキス。
しかし、そこから序々に深く、いつもと違う感情を押さえきれないといった激しいものへと移行していく。
一哉の舌が口内を弄り、むぎの舌を探し求めていく。
むぎはその激しさに戸惑いながらも懸命についていこうとする。
唇の位置を変え、何度も繰り返す。
やがてゆっくりと唇を離すと、一哉はむぎの耳元に囁く。

「ベッドへ・・・」

「・・・・・・」

むぎは黙って頷く。

そのまま手を引かれてむぎはベッドへと移動した。
広いキングサイズのベッドに寝転ぶと、一哉はそっとむぎに覆いかぶさり、また優しくキスを繰り返す。

唇を離すと一哉はまた囁く。

「・・・こわいか？」

一哉の下でむぎは首を振る。

「・・・心配するな。優しくする」

「・・・うん」

むぎの右手に自分の左手を絡めながら一哉はむぎの耳に唇を寄せる。
耳たぶを軽く咬む。
むぎの身体の奧で何かが目覚め始めた。

「・・・・あん・・」

思わず声がでる。

その声に反応するように、一哉の唇は耳から首筋に・・・何度も往復を繰り返しながら移動していく。

キスを繰り返しながら一哉の右手はむぎのパジャマのボタンを起用にばずしていく。
そして、ブラジャーの上からむぎの胸に手を置き、やがてゆっくりと揉みだす。

「・・・ハァ」

むぎの唇から吐息が漏れる。

恥ずかしい気持ちと、嬉しい気持ちと、もっとして欲しい気持ちと、複雑な感情の沸き懲りにむぎは戸惑う。
やがて背中へと回された手がブラジャーのホックを外す。
思わず腕を曲げて胸を隠そうとしてしまう。

フッと一哉は微笑むと、その手を掴む。

「・・・隠すなよ」

「・・・だって」

「お前のすべてを俺に見せろよ。俺もお前に全部見せるから・・・」

その言葉にむぎの腕の力は抜けた。
一哉はむぎの上半身を裸へとしていく。
続けて自らも上半身を裸にする。

そして改めてむぎを抱きしめる。
肌と肌が直接に密着する。

裸で抱き合うというのはなんて気持ちがいいんだろう・・・と、むぎは思った。
肌を通して感じる一哉の熱い想いに、むぎ自身の想いも熱を帯びてくるのがわかった。

今度は直接一哉の大きな手がむぎの胸に触れ、揉んでいく。
先程とは違う直接の刺激にむぎの息は荒くなっていく。
蕾の先端を優しく摘み、更に揉まれる。
そして、一哉の唇は胸へと降りていき、そのピンクの蕾を含んだ。

「きゃっ」

今までにない感覚がむぎを襲い、思わず悲鳴に似た声がでた。
一哉は動ずることもなく、舌先で軽く蕾を転がし、そして、吸い、愛撫を続けていく。
甘い痺れが連続の快感をむぎに与える。

「・・・・背中を向けて」

一哉のその言葉に、むぎはうつ伏せへとなる。
髪を掻き上げられ、露わになったうなじにまたキスを繰り返される。
ゾクっとする。鳥肌がたった。
決して気持ちの悪い感覚ではない。むしろ官能的な感覚だ。

少し乱暴に髪を掻きあげながら一哉の唇は背中の中心へと移動し、そこで強く吸われた。

「・・・ハァっ」

くすぐったいような、なんとも言えない刺激がむぎを襲う。
そして、身体の芯の奧から沸いてくる波が本格的に意識できるまでになった。

一哉の指先がむぎの下半身のパジャマへと触れる。
ビクっとむぎの身体が反応するが、後ろ向きということで少し安心するのかむぎはジッとしている。
ゆっくりとズボンを脱がしていく。
そして、ショーツも脱がされていく。

一哉は白く浮き出されたむぎの一指まとわぬ姿を、ほんの一時眺めるとその臀部にチュッと軽くキスをして、自らの下半身も裸にした。

むぎの身体を再び表に向けさせ、抱きしめながらキスをする。
そして、一哉の足は起用にむぎの足をからめて下半身を開かせる。
思わず驚くむぎ。
しかし、深くキスを繰り返し逆らわせない一哉。
ゆっくりと足から腰へと一哉の指先は、まるで魔法の指先のようになめらかに肌の上を滑っていく。
そして、最も敏感な部分へとその魔法の指は触れた。
そこはすでに十分なほどに蜜を溢れさせていた。
自分でもその状態を自覚していたむぎではあったが、一哉の指に触れられて改めて実感して、恥ずかしさのあまり思わず膝を閉じようとするが、一哉のからめた足がそれを許さない。

「・・・恥ずかしがることなんてないぞ。俺はむしろ嬉しい・・・」

「・・・やだ」

むぎは両手で自分の顔を隠す。
そんな可愛い仕草のむぎに、一哉は薄明かりの中微笑む。

「・・なら、俺のも触ってみろ」

「・・・え」

そう言ってむぎの手を自分の下半身へと誘導する。
そこには、熱い鉄柱のようなものがあった。
むぎは驚いて手を引っ込める。
一哉はもう一度ゆっくりとむぎの手を誘導し、そして今度は自分の手を添えてそれを握らせた。

「・・・わかったろ？　男はこうなるんだよ」

「・・・・・・・・」

「・・・・これが男の朝の事情だ」

「・・・・・あ」

むぎはここで初めて迎えたあの朝に、一哉に言われた意味がようやくとわかった気がした。

「・・・わかっただろ？　だから俺もお前も同じだ・・・」

そう言って再びキスを繰り返しながら、またむぎの敏感な部分へと侵入していく。
優しく全体を弄り、最も敏感な部分を優しく擦り、更に潤させる。
むぎの身体はその初めての快感にビクビクと曲線を描いている。

「は・・・はぁん・・」

時折漏れるむぎの甘い声・・。

そこで一哉の指は蜜の出口へと侵入を開始した。

「・・・つぅ」

先程までの甘い声と違い、苦痛の声がむぎの口から出る。

「・・痛いか？」

「・・う、うん。」

「・・・・ゆっくりとする」

そう言って一哉の指が一本。ゆっくりと進入してくる。
それでも異物感から痛みが鈍く走る。

「・・・ん・・・」

半分まで指が入ったとき、ゆっくりとその指を回された。
痛みは勿論あったが、それでもまた別な感覚も現れ始めてもいた。
段々とその痛みも薄れてきたころ、スッとその指が抜かれ異物感が消える。
思わず、ホーッと息が出る。
そこで一哉が身体を起こし、むぎの後方へと移動する。
足を持ち上げられ、開かれる。

「・・・・・！？」

「・・・我慢してくれよ」

そう言って一哉はその自身の鉄柱を入口に当て、ゆっくりと腰を進めてきた。

「・・・ひゃぁ・・・」

むぎの悲鳴にも似た声が、寝室に響いた。
その苦痛を自分も分かち合おうとでもするかのように、彼女の手に自分の手をからめ、握り締めてくるその手を握り返してやる。

「・・・力・・を抜け」

「・・・はあはあ・・・む・・・り・・」

「・・・大きく息を吐いて・・・吸うんだ・・・」

言われたとおり、息を大きく吸って吐く。
何回か繰り返すといくらか痛みが和らいだような気がして、力が抜けてきた。
そこを突然と一哉が一気に腰を進めてきた。

「・・きゃあ！！」

急激な激痛にむぎは思わず叫ぶ。
一気にむぎを貫いた一哉はそのまま静かにむぎに覆いかぶさる。
そして、痛みから涙ぐむ彼女の頭を優しく撫でて、頬にキスをする。

「・・・悪いな。一気にやったほうが痛みは少なくてすむ。穴を開けるのと同じ原理だ」

「・・・・馬鹿」

そうむぎが抗議をすると、一哉はさもすまなそうに手の甲でむぎの頬を下から上へと撫でた。

「・・・すまなかった。だが、俺はお前が苦しむ姿は見たくないんだよ・・」

「・・・一哉くん」

一哉のそんな一言に、奧に潜む優しさを感じずにはいられないむぎ。

「ううん。平気」

そう返事をして一哉の首に手を回す。
一哉はそのままむぎに再びキスをしながら、ゆっくりと腰を動かし始めた。

「ん・・・・んんんんん」

キスを受けながらむぎから声が漏れる。
自分の身体の中心から、熱い何かがどんどんと溢れる感覚が襲ってくる。
一哉は身体を起こすと、むぎの足を持ち上げ更に大きくゆっくりと律動を繰り返す。

「・・・・くっ」

一哉の口からも吐息が漏れ始める。

初めて聞く一哉の官能的な吐息に、むぎの身体の中心がきゅーんと締め付けられる。
蜜がどんどんと溢れ、律動をなめらかに進めていく。
一哉の腰の動きが激しくなっていく。
それに合わせてむぎの身体も激しく揺すられていく。
もう痛みはほとんどない。
変わりに擦られていく部分から、全身へとしびれるような快感が次から次へと襲ってくる。

「あ・・・あっあっぁぅ・・・・・・・・は・・・・・・はぁん」

むぎの声も段々と大きく、甘く、絶えず吐き出されていく。

「・・・む・・・ぎ」

「ハ・・ハァ・・・ハア」

「・・・すごく・・・いいぜ」

その言葉にむぎの中心がまたきゅーーーんと締め付けられ、たまらなくなりむぎは一哉のキスを欲した。
差し出されたむぎの両手を取り、そのまま背中に手を回し抱き起こす。
繋がったままむぎと一哉はお互いを正面に向いて抱き合う形になった。
一哉自身が更にむぎの体内の奧へと挿入され、痛みが起こる。

「・・・つらいか？」

「う・・・・少し・・・」

「・・・なら、このままでいる」

そう言って一哉は動かずに静かにむぎにキスを繰り返す。
すでに一哉の身体は汗に濡れていた。
自然と一哉を少し見下ろす形になっているむぎは一哉の髪の毛の中に手をいれ、軽く掻きあげてみる。
ふわりと一哉の髪の香りがむぎの鼻腔をくすぐった。
むぎに髪をいじられながら一哉は再びむぎの乳房の蕾をついばむ。

「・・・あん」

むぎは快感に背をよじる。
繋がっている部分が更に締め付けられ、もう我慢が出来ないといったように一哉は再びむぎを寝かせ、動き始めた。

「あん・・・アッアッあ・・・・・ああ・・あぅ・・・」

むぎの甘い吐息も再びメロディを奏ではじめる。
律動は激しくなっていき、流れる汗が一哉の頬を伝って落ちる。
むぎの首元には汗が玉となって光り始めていた。

やがて、一哉の吐息も苦しいものへと変わっていき・・・・。

「あ・・・・う・・・・むぎ・・・」

「・・・・・イク・・・ぞ」

一哉のその言葉にきゅーーーんと最高の締め付けを身体の中心に感じ、頭の中が真っ白になるむぎは返事が出来ない。

「・・・・・・クッ・・・・・・ああっ」

数度激しく突き上げて、一哉の動きは止まる。

繋がった部分そのままに一哉はむぎをまたきつく抱きしめた。
むぎも一哉を抱きしめ返す。
お互いの息の荒さを笑いながら、二人はまたキスを繰り返していた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　フルキス創作へ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 HOME

　　　　　　　　　　　　